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保湿薬「尿素」と「ヘパリン類似物質」。当たり前だけど、ネット上の一般論がすべてじゃない

皮膚疾患・肌ケアの薬

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尿素を勧めるなんて・・・

尿素は代表的な保湿薬なのだけど、ネット上では評判があまりよくない・・・というのは以前ブログでも紹介した。

尿素クリームを愛する人のための、くだらなすぎて誰も書かない意外な事実 - ドラッグストアとジャーナリズム

 

ネット情報を見ていると、もはや、尿素に存在理由はないのかとさえ思えてくる。ドラッグストアでお客に尿素を提案しようものなら、

「この薬剤師さん、勉強不足ね、尿素を勧めるなんて」

と白い目で見られそうだ。でもちょっと待って。勉強不足なのはあたっているかもしれないけれど、尿素ってそこまで悪くないと僕は思う。

 

尿素20%の不都合な真実

そもそも、尿素の何が問題視されているのか。

尿素は、体内の水分を皮膚の表面に集めたり、皮膚を柔らかくすることで、肌のカサカサと痒みを治す薬だ。市販薬の尿素には、濃度が10%のものと20%のものがある。

尿素の濃度が高いほど、保湿薬として優れているように思いきや、そうでもない。OTC薬関連の書籍によると、その性質ゆえ皮膚の水分を引き出してしまい、むしろ乾燥させてしまうというのだ(※1)。だから、乾燥がひどい場合は、20%は使うべきではないとされる(※2)。また、尿素は刺激性があるために(これは化学的な話であって、健康な肌に塗ってヒリヒリするということではない)、顔や肌の弱い部分には10%を使うべきであるともされている(※3)。

さらにいうと、10%だろうが20%だろうが、尿素は肌に良くないという意見もある。「炭水化物が人類を滅ぼす」(光文社新書)などの著書を持つ形成外科医の夏井睦さんは、自身を実験台に尿素を使った実験結果をウェブサイト上で公開し、「尿素は有害」と結論付けている(※4)。

 

高級保湿剤「ヘパリン類似物質」

じゃあ、どんな保湿薬がいいのか。大抵のドラッグストアにある市販薬の中で、一番高級なのは「ヘパリン類似物質」だ。

ヘパリン類似物質とは、コンドロイチン(ヘパリンの一種)を精製した物質のこと。保湿効果だけの尿素と違って、ヘパリン類似物質には保湿+血行促進+抗炎症作用がある。血行促進・抗炎症作用があるので軽い打身などにも使えて汎用性が高い。また、尿素よりも低刺激であることもウリの一つだ(※5)。

そのうえ、ヘパリン類似物質を含む「HPクリーム」という商品は、医療用として処方される保湿薬「ヒルドイド」と同じ成分・同じ濃度だ。(尿素も医療用であるのだけど、僕の印象だとヒルドイドのほうがメジャー)。

ちなみに先述の夏井医師は、ヘパリンの保湿作用に関しても懐疑的である。それでも、効果を総合的に見ると、尿素よりもヘパリン類似物質の方が優れているといえそうだ。

 

でも、実際使ってみたら、尿素を見直した

こうして2つの薬を比較すると、もはや尿素を買う理由は0%のように思われる。本やネットの情報を眺めながら、以前の僕はそう思っていた。ところが実際に尿素を使ってみると、あらフシギ、尿素って悪くないぞと思えてきた。

尿素を見直した理由は、第一に、価格がとても安いこと。僕の近所のドラッグストアでは、以下の値段で販売されている。

ケラチナミンコーワ(尿素20%) 753円/60g

●HPクリーム(ヘパリン類似物質) 1315円/25g

●ヘパソフト(ヘパリン類似物質+ジフェンヒドラミン) 1077円/50g

尿素安っ!てか、ヘパリン類似物質が高い!量も少ないし。

 

尿素の保湿効果も悪くないと思いますよ

そして尿素を見直した第2の理由は、これは僕の経験になってしまうのだけど、尿素でも満足できる保湿効果が得られること。

僕はここ数年、冬になると膝が乾燥して、粉をふいて痒くてつらいことが結構あった。かきむしって血が出ることもあった。そこで去年、初めて尿素20%の製品を買って風呂上りに使ったところ、すっかり痒みはおさまってビックリした。なんてこった!こんなことなら、もっと早く買えばよかった!

いま、4か月間ほど、痒い時に時々使っているけれど、とくに不便は感じない。塗って10分後くらいには、気がつくと痒みがなくなっている。尿素は刺激性があるのだけど、ひっかいて赤くなったところに塗っても一瞬だけヒリっとするくらいで、大した刺激ではない。

僕はヘパリン類似物質を使ったことがないし、しょせんは一個人的な体験に過ぎないから、あまり胸は張ってはいえないけれど、少なくとも僕は高額なヘパリン類似物質を買わなくてよかったと今のところ思っている。

巷に尿素20%の評価が芳しくないという情報があるからといって、最初から選択肢から外す必要はないと思う。ネットにある尿素の評は、あくまで一般論であって、自分にあてはまるとはかぎらない。保湿薬には昔からある「ユースキンA」や女性に人気の「白色ワセリン」などいろいろあるけれど、尿素が自分にとってベストな薬である可能性だってあるかもしれない。

少し時間に余裕のある人は、薬剤師・登録販売者に相談してみてほしい。ここに書いた内容の3倍の情報は持っているはずなので、色々親身になってくれるはずだ。

 

※1 「OTC薬ガイドブック 第3版」(2013年)の尿素の解説欄より。なお、同じ編者が2009年に上梓した「OTC薬販売の実践問題集2」では、この記載に加え、尿素は角質の溶解剥離作用は濃度が高いほうが効果が期待できること、保湿作用に関しては濃度間で大きな差はないことが解説されている(つまり、保湿目的なら尿素濃度10%も20%も変わらないということ)。これは興味深いが、根拠となる文件が記載されていないうえに、2013年発行のガイドブックでこれらの記載がなくなったところをみると、すでに古い知見に属するのかもしれない。

※2「OTC販売薬の実践問題集2」(2009年)

※3「OTC医薬品販売のエッセンス 第2版」(2013年)

※4 夏井睦さんのホームページ 新しい創傷治療:尿素クリーム

※5 メーカーのホームページ参照。ヘパリン類似物質とは:ノバルティス ファーマ株式会社