大半の人が使い方を間違ってる
発毛薬「リアップ」は、ドラッグストアの人気薬の一つだ。僕はいままで20人くらいのお客に、レジでこのリアップを売ってきた。そのささやかな経験からいわせてもらえば、このリアップを正しく使っている人は、おそらく全体の50%くらいだと思う。
先日も男性客がリアップを買いに来た。レジでバーコードをスキャンしながら、
「効果は実感できていますか?」
と聞くと、
「んー。効いてるんだか、いないんだか・・・」
この「効いてるんだか、いないんだか」という言葉、何度聞いただろう。リアップの使用者には、こういう人がとても多い。効果がよくわからないと思いながら、1年間以上使っている人がザラにいる。
使用直後のマッサージはNG
よくある”間違った使い方”は、使用後にマッサージをすることだ。薬液を頭皮につけたあとに指で揉む。揉むと頭皮にしみこんでいくと考えるのかもしれない。でも残念ながら、これは全く逆効果。せっかく頭皮に付いた薬液が、マッサージするときに指についてしまうからだ。リアップの1回量は1mL。このなかに入っている薬効成分はわずか0.01g。貴重な成分が指についてしまっては、発毛効果は望むべくもない。
この”間違った使い方”は、メーカーが販売店向けに開いた講習会の資料に載っている。メーカーとしても、誤った使い方をされて「リアップって効かないじゃん」という悪評が立つのは避けたいのだろう。
冒頭のお客は、話を聞いたところ、使用後に指でマッサージをしていた。
「そうなのか。壮大なムダ遣いをしていたわけだ」
とそのお客は笑ってたけど、ちょっと哀愁を帯びてかわいそうだった。
指で延ばすのはもっとダメ
さて、先日来店した別のお客は、使用後にマッサージはしていなかったが、指で延ばしていた。それは間違った使い方ではないかと思ったが、
「だって、指で延ばさないと全体に塗れないじゃねえか」
と言うので、
「そうですね・・・」
と沈黙してしまった。僕は使ったことがないので、その感覚はわからない。ひょっとして本当に薬液が足りないのかもしれない。
でも気になったのでメーカーに問い合わせてみた。すると、リアップは「1回量の1mLではがき一枚分ほど塗れるようになっている」という回答を得た。というか説明文書を読み直したら、「1mLは塗り広げれば、頭皮全体に十分に行きわたる量として設計されています」と明記されていた。
お客の頭髪面積を思い返しながら、塗り方が間違っていた可能性が高いなと思った。僕の対応は間違っていたわけだ。
効果が得られないなら相談を
薬液は毛根につけなければ意味がない。指で伸ばしてしまっては、薬液は指や髪について何の効果も得られない。正しい使い方をして、それでも効果が出なければ、薬を買うのを止めてもいいと思う。1年以上ダラダラ使うお客が結構いる。僕の店ではリアップは2か月分で約7200円、濃度が高いリアップX5は1か月7600円だから、ユーザーは年間で4~9万円は出費していることになる。
長期間使っていて効果が実感できない人は、メーカーのお客様相談室やドラッグストアの薬剤師に相談したほうがいいと思う。
先日「効果が実感できなかったらいつでもご相談ください」と男性客に言ったら「え?そんな相談ものってくれるの?」と驚いていて、ドラッグストアは”相談できる場所”として認知されていない。
そして、メーカーのサイトの「効果的な使い方」という解説ページには、こうした”よくある間違った使い方”は紹介されていない(※)。発売から何年も経っているのだから、さすがにもっと充実させたほうがいいんじゃないかと思う。こんだけ間違った使い方してる人が多いのだから。