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「広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい」と僕らは薬についても言うべきである

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有名薬を「なんとなく」で買うことは、そろそろダサい

僕もドラッグストアでバイトする前は、そうだったから大きな声ではいえないのだけど、市販薬をTVCMとかパッケージで選ぶのは、もうそろそろダサいからやめたほうがいいと思う。「よくわかんないから、とりあえず有名な薬を買っとこ」と思っている人は、自分が製薬メーカーのいいようにされていることを、もっと自覚したほうがいい。

 

人を動かすルールが変わった

今年、メディア関係者の間で、「広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい」という本が話題になった。



LINE役員の田端信太郎さんと、著名なPRプランナーの本田哲也さんという、広告業界のダブルビックネームの共著ということで、発売2か月で5万部も売れた。基本的には広告業界関係者向けの書籍なのだけど、僕ら(消費者)が読んでもわかりやすい内容になっている。

本書の内容を一言でいうと、

「人を動かすルールが変わった。もう従来の戦略は消費者に通じない」

ということだ。広告業界の人たちには、

「従来どおりの広告やメディアでは消費者を動かすことが難しくなってきている」

という認識があるらしい。

それを示す理由として、本書ではいくつかのデータが挙げられている。近年、消費者がメディアに接触している時間は、約6時間で一定のままであり、そのなかでネットやTVが食い合っている状態であること。また、2001年~2009年の8年間で、流通情報量は2倍近く急増したのに、生身の生活者が受け取り認識した生活情報量は9%しか増えていないことなど。つまり、情報過多の時代になっている。しかも、HDDレコーダーの様に、誰でも情報を簡単に編集できる技術が普及したから、消費者は興味のないもの(例えばテレビCM)は見なくてすむ。だから田端さんは、

「はっきり言おう。コミュニケーションやメディアに関わるビジネスの世界では、政権交代が起きている。今や、「主権」は消費者サイドへ移ってしまったのだ。」

と述べている。

 

広告業界のトレンド「戦略PR」

一方、もう一人の著者である本田さんも、田端さんと同じ現状認識だ。本田さんは本書の中で「戦略PR」という概念に触れている。戦略PRとは、広告以外のメディアなどを活用して商品の魅力を伝えるマーケティングの方法だ。2009年以降の広告業界でトレンドになっているらしい。

戦略PRは従来のマーケティングとは異なり、メーカーはメディアの広告枠を買わなくてもいいので(買うことの必要性が相対的に低い)、広告コストを下げることができる。ただしデメリットとして、自分たちの伝えたい情報をコントロールしにくい。テレビCMであれば、放送する内容も、それを視聴する人も年齢層も決められる。けれども戦略PRでは、情報の掲載・放送権はメディア側にあるから、企業は自社の製品がどのように扱われるかわからない。またSNSでの口コミも、誰がどのように発信していくかは予想がつかない(ここらは本田さんの著書「新版 戦略PR」に詳しい)。

ようするに、メーカーの思うようになりにくい、ということ。これは田端さんの「主権は消費者サイドに移った」という言葉に通底する。いまの時代は、インターネット上のコミュニケーションが発達したことで、本・車・食品・レストランなど様々なものが、僕ら消費者の値踏みの対象となり、評判の悪い商品は淘汰されている。田端・本田さんの語る“広告業界の新しいルール”は、日々の生活から得ている実感と一致する。

 

市販薬選びの時代遅れ感がハンパない

ところが、ところが。

市販薬に限って言えば、どうも様子が違うような気がしてならない。CMで見たからとか店員に勧められたからとか、パッケージがよさげだからとか、受動的な理由で商品を選んでいる人が結構いる、というのが僕の印象だ。トキはカネなりでさっさと選んでいるのか、製薬メーカーの広告やドラッグストアの店員のセールストークを性善説で信頼しているのか、理由はよくわからないけれど、いずれにしても“自分で考えて(調べて)薬を選ぶ”という作業をしないお客がいる。

時間の使い方は個人の自由だし、考えることがめんどくさいなら、テレビCMで薬を選んでもいい。ただ、これは家電や書籍など他の商品を買う際の一般的な消費行動と比べて、かなり時代遅れであることは認識しておいたほうがいい。

「薬についてわざわざ調べるなんて、一部の特殊な人だ」とも思わない方がいい。僕は先日バイト中に、ネットなどで自分なりに薬の情報を得たと思われる2人のお客にあった。1人は、仕事の会議が続き緊張で頭痛がするという40代女性、もう一人は風邪気味だという20代サラリーマン。どちらも働く普通の会社員だ。2人とも、一定の知識を持ったうえで、より自分にとってベストの薬を選ぶために僕に相談をしてきた。これこそが、現代において一番合理的な消費行動だと思う。