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誰か教えて!ビジネスジャーナルの健康記事にある「データ」の真偽

メディア

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ビジネスジャーナルの記事って信じていいの?

ちょっと困ったことがあった。

どうしていいものか、わからないので、知恵がある方は教えてほしい。

「ビジネスジャーナル」というニュースサイトがある。企業ネタから健康ネタまで幅広い分野をカバーしている、ビジネスマン向けの新興サイトだ。



電車内に広告も載せている割と知名度のあるメディアで、僕も時々読んでいたのだけど、このサイトにある薬の記事を読んで以来、僕は、

「ビジネスジャーナルは基本的に信用できないから、記事を読むのは時間のムダではないか?」

と考えるようになった。

ビジネスジャーナルの記事って、どこまで信じていいんでしょうか?

 

葛根湯ドリンクは1日2回のほうが効く? 

僕が不信感を抱いたのは、市販薬の葛根湯に関する記事だった。

そもそもの発端は昨秋にさかのぼる。僕がドラッグストアでお客から、次の質問をされたことだった。

「ドリンクの葛根湯ってさあ、1日2回飲むのと、1日3回飲むのでは、どっちが効くの?」

ドリンクの葛根湯には、1日2回飲む商品と、1日3回飲む商品がある。値段はあまり変わらない。普通に考えれば、1日2回の方が、飲む手間が省けていい。でも、3回タイプがわざわざあるのだから、こっち方が効果が優れているのではないか・・・。

おそらくお客はそう考えたのだろう。もっともな疑問だ。

しかし、これに答えるのは簡単ではない。両者に含まれる成分(生薬)の量は、どちらも1日あたりの合計量は同じなのだ。だから、同一量を2回に分けるか3回に分けるか、という差しかない。

1回量が多い方が効きそうな気もするが、薬によってはなるべく複数回に分けたほうが方が好ましいといわれるものもある。漢方に詳しい薬剤師なら知っているのかもしれないけど、僕はわからなかったので、お客に正直に、わかりません申し訳ありません、と伝えた(※1)。

翌日、気になって家にある資料をめくってみたが、2回と3回で効果に差があるという記載は見つけることはできなかった。

そこで「葛根湯 1日2回」でググってみた。すると、検索の2番目に以下のビジネスジャーナルのサイトがひっかかった。

 


正しく飲めてる? 医師もすすめる“葛根湯”本当の処方箋 | ビジネスジャーナル

 

記事によると、ある放送作家さんが、先のお客と同じ疑問を、葛根湯のドリンク「カコナール」の製造元のである会社(第一三共ヘルスケア)にぶつけてみた。すると、担当者が、次のように話し、1日2回のほうが効くと答えたという。

「以前カコナールのデータを調べたんですが、1回の服用を多くしたほうがそういったデータがいいというのは出ています。」

なんと!そんなデータがあるのか!これ、「葛根湯」という一般処方ではなくて、カコナールで調べたというのがポイント。情報の信頼性が高い。

いやはや、ググってすぐでてくる情報を知らなかったなんて、ほんと恥ずかしいかぎりだ(※2)。

 

「そのようなデータはありません」と記事を否定

僕は早速この元データが読みたくなって、メーカーに問い合わせた。

「ウェブの記事で見たのですが、実際のデータを拝見することは可能ですか?」

担当者は「データを探してみます」と言った。数時間後、折り返しの電話が来た。ところが、返ってきたのは全く予想外の答えだった。

「そのようなデータはありませんでした」

え?だって、記事に書いてありますよね・・・。

社内を探したが、そんなデータはない。記事にある当時の担当者もおらず確認ができない。そもそも、このような情報がウェブ上にあることも知らなかった。暗い口調で話す担当者は「申し訳ありません」と謝った。

いや、あなたのせいではないですが・・・。メーカーのお客様相談室は、けっこうアドリブで個人の考えを答えることがあるから、前の担当者が思い込みで口にしてしまったのかもしれない。もしくは、データの存在を今になって会社ぐるみで隠しているか・・・。

いずれにしろ、メーカー側が事実を否定している以上、ウェブの記事はなにかしら修正される必要がありそうだ。

「ビジネスジャーナルさんに連絡しますが、よろしいですか?」

と聞くと、「はい」と言った。

 

ビジネスジャーナルにメールを送るも、返事ナシ

僕はビジネスジャーナルの編集部にメールを送った。

メーカー側が記事の内容を否定している。だから、改めてメーカーに確認していただき、必要に応じて記事の修正・削除などの措置をとっていただきたい、とメールに書いた。

なんで僕がこんなわざわざメールを送ったのか、いぶかしく思う人もいるかもしれない。

でも、これって現場の人間としては切実なのだ。

このサイトを見たほとんどの人は「カコナールは1日2回の方が効く」と信じるだろう。そして、このようなネットに載っている情報すら知らない薬剤師や登録販売者のことを「不勉強なやつら」と見ると思う。僕がお客ならそう考える。記事の内容が本当なら、そのとおりなのだけど、もし記事が誤りならば、薬剤師や登録販売者は不当にお客の信頼を損なうことになる。おまけに、この記事の通りに薬剤師がお客に説明したら、「メーカーの調べによると、カコナールは1日3回より2回が効く」という、誤った事実が広がることにもなる。

現場の事情を説明しつつ、僕はビジネスジャーナルの編集部にメールを送った。

すぐに対応してくれると思った。記事の内容はビジネスジャーナル側の落ち度ではないし、記事を一つ消したところで、編集部内でそう大きな問題になるはずもない。

ところが・・・。

2週間しても返事がない。あれ?なんでだろ?

もう一度メールを送ってみた。今度はすぐに「担当者よりご連絡します」と自動配信メールのような短い返信が来た。これですぐ連絡がくると思った。

僕も編集者だったからわかるけど、記事の事実確認、執筆関係者への連絡はすぐできる簡単な作業だ。それに、これはクレームでもなんでもなくて、「なんか先方(メーカー)さんが、否定しているから、修正した方がよくないでしょうか?」という提案含みの簡単な要望である。

ところが、その後、連絡はこなかった。最初のメールから1か月経ち、これは埒があかないなと思って「3日以内にお返事をください」と催促メールを再びしたけれど、やっぱり3日たっても、ビジネスジャーナルの編集部からはなんの返事もこなかった。

無視を決め込んでいるのか。最初のメールから2カ月。記事はいまもウェブ上で公開されている。

 

そりゃないよ、ビジネスジャーナルさん

この一連のビジネスジャーナル編集部の対応に、僕はすっかり不信感を覚えた。

僕も雑誌を作っていた時、読者からのメールを対応することがあった。クレームに対しては理論武装して反論したこともあれば、謝罪して訂正記事を出したこともある。いずれにしろ、無視することはなかったし、そんなことをしたら、上司から大目玉をくらうことは目に見えていた。それだけに、ビジネスジャーナルの対応には戸惑ってしまった。

一説によると、ビジネスジャーナルの編集部は2名体制らしい(※3)。人手不足でメールの返信をする暇もないのか、あるいは前任者に伝えてその前任者で止まっているのか。ひょっとしたら、「以前カコナールのデータを調べたのですが~」は、執筆者か編集者が文意をわかりやすくするために後付した文言であり、メーカー側の実際の発言ではないため、編集部にとっては都合が悪い事態という可能性もある。・・・と色々想像できるのだけど、ビジネスジャーナルと喧嘩するつもりはないので、これ以上は触れない。

いずれにしろ、僕のメールを見た人は、

「へんな薬剤師からメールがきたけど、めんどくさいから、ムシしていいや」

とでも思っているのかもしれない。薬剤師一人のクレームくらい、全然こわくないし。でも、こういう対応が、「マスゴミ」と呼ばれる所以なんだろうなと思った。自戒をこめて。

最後にこの件の問題点を整理すると以下の通り。

  • ビジネスジャーナルの記事の内容を、取材を受けた側(メーカー)が否定している
  • ビジネスジャーナルは、事実を改めてメーカーに確認すべきである
  • 確認でわかった新たな事実は、ウェブ上の記事に反映させるべきである
  • 反映させない場合は、その理由を記すべきである(たとえば、メーカー側が実はデータを持っていて、それを隠しているなど)
  • 指摘した読者である僕には、「担当者よりご連絡します」と約束しているのだから、すみやかに連絡をすべきである

 一応、返事まだ待っています、ビジネスジャーナルさん。僕はずっとサイゾーのファンでしたから(※4)。

 

 

※1 この時は、両者を直接比較したデータを見たことがないこと、あくまで個人的な印象であることを断ったうえで、3回のほうが良いかもしれないと伝えた。

※2 ちなみに顆粒タイプのカコナールにも1日2回と3回がある。メーカーホームページには「お客様のニーズに合わせてお選びください」と、なんともいえない表現で案内されている(カコナール葛根湯顆粒<満量処方>シリーズ|第一三共ヘルスケア)。

※3 「ジャーナリズムと企業広報」(2014年/財界展望新社刊)より。

※4 ビジネスジャーナルの運営はサイゾー