『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

市販薬のアマゾンレビューが自由なアメリカと、禁じられている日本

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僕らの生活の一部になっているアマゾンの「カスタマーレビュー」は、商品の良し悪しを判断できる、とても便利な機能だ。書籍、家電、電子機器・・・購入する前に僕はとりあえずアマゾンのレビューを見る。

あらゆる口コミが揃っているように感じるアマゾンだけど、実は例外的にレビューが禁止されているものがある。市販薬のレビューだ。

アマゾンのカスタマーサイト(※1)には、こうはっきり書かれている。

一般用医薬品については、カスタマーレビューを投稿することができません。」

これはアマゾンの自主的な規制ではない。大学で薬事法規の講義を受け持つ知人によれば、厚労省によって市販薬のレビューが禁止されているという(※2)。

昨年、インターネットによる市販薬の販売がほぼ全面的に解禁された。これに伴い、薬事法と呼ばれる法律もまた、大幅に変わった。新法が施行される前に厚生労働省がつくった資料には、市販薬のネット販売のルールがこう明記されている(※3)。

「購入者によるレビューや口コミ、レコメンドの禁止」

ちなみに、これは業者に対する規制なので、僕のようにブログでレビューをするのは問題ない。もうちょっと詳しく知りたい人には、下記の記事がわかりやすくまとめられている。


改正薬事法施行、どうなる医薬品ネット販売? : 新おとな総研 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 3/3

 

市販薬の口コミ評価の是非は、難しい問題だ。他者のクチコミも知りたいと思う人もいれば、誤った情報が拡大する恐れがあると心配する人もいるだろう。

海外はどのような対応をとっているのか。日本よりもセルフメディケーション(病院になるべく行かず、自分で健康管理をしたり市販薬などで病気を治すこと)が盛んなアメリカのサイトを見てみる

 

米国アマゾンのサイトは、薬の情報交換が自由 

アメリカでは、市販薬のレビューは禁止されていない。ユーザーが、自由に薬を評価できる。

実際にアマゾンのページを見てみる。

下記のページでは、代表的な花粉症治療薬「アレグラ」を紹介している。アレグラは、日本では病院で処方されているが、ドラッグストアでも消費者が購入できる、代表的な花粉症治療薬だ。


Amazon.com: Allegra Adult 24 Hour Allergy Tablets, 180Mg, 70 Count: Health & Personal Care

 

で、これがアレグラのレビューの一部。レビューのフォーマットは日本と同じだ。

 

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日本のアマゾンのブックレビューなどと異なるのは、以下の様にユーザー同士が書き込めるQ&Aの欄を設置していることだ。

 

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一番上の質問は、あるユーザーが、

「この薬はどこで作られていますか?」

と質問を投稿していて、それに対して他のユーザーの一人が、

「容器にはチャテム社と書いている。でも、これはチャテム社が製造しているというわけではありません。私はこれ以上はわからないけど、私がかかっているロサンゼルスのアレルギー専門医が処方してくれているアレグラと同じものだと思いますよ」

と答えている。

なんてことのないQ&Aだが、消費者同士に自由に情報交換を促すのが米国アマゾンのスタンスなのだという印象を僕は受けた。

 

レビューの方法を工夫する「drugstore.com」

市販薬のクチコミを掲載しているのはアマゾンだけではない。

アメリカの大手通販サイト「drugstore.com」のレビューシステムは、アマゾンよりも洗練されている。


Online Pharmacy: Vitamins, Skin Care, Beauty & Health | drugstore.com

 

 前出の「アレグラ」のページを見てみる。

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さて、どのようなレビューになっているか。

 

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drugstore.comのサイトでは、いくつかの項目を作ることで、口コミ情報を整理している。

たとえば、薬への総合評価は☆マークで表すだけでなく、「PROS(良いところ)」「CONS(悪いところ)」「BEST USES(適した症状)」の項目を用意している。いずれも、ユーザーが書き込むのではなく、用意された選択肢の中から選ぶので、表記が統一されていて読みやすい。

個々のユーザーの評価とは別に、全体のコメントをとりまとめたスペースもある。

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上半分は、ユーザーの評価をとりまとめたものだ。

下半分は、他のユーザーから最も気に入られたポジティブなレビューと、ネガティブなレビューを紹介している。ポジティブなレビューは、☆マークが5つ付けられて「Worth every penny!(価値あり!)」と褒めている。逆にネガティブなレビューは「This Isn't Prescription Allegra(病院処方されるアレグラとは別物)」と失望感を表している。

これは消費者の利益を考えたサービスだろうか?

誤った情報を拡散するだけの商業主義だろうか?

アメリカには、他にもおもしろいウェブサービスがある。明日、紹介する。

 

 

 

※1 アマゾンの右記ページを参照

https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html/ref=hp_left_v4_sib?ie=UTF8&nodeId=201446450

※2 厚労省の施行通知 http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/140314-1.pdf

※2 「一般用医薬品のインターネット販売について」

http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/140214-1-3.pdf