「くすりの福太郎」を悪太郎にさせたのは誰?

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くすりの福太郎の「処方箋獲得コンクール」

昨日から騒がれているドラッグストア兼調剤薬局チェーンの「くすりの福太郎」。本来行うべき薬の記録作業を怠り、国(と患者)を欺いていたことが発覚した。

大手各紙が報じる中、朝日新聞にちょっと気になることが書かれていた。

なんでも、福太郎本社は「処方箋獲得コンクール」なるものを不定期に企画していたという。処方箋(=お客)を引っ張ってきて、会社の売上を伸ばす目的で、従業員に家族や友人の処方箋を集めることを求めるケースもあったらしい。処方箋を多く集めた店は社長から表彰されたようだ。

ネット上にはこんなツイートがあった。 

同感。すでに同社に内定して、今年4月から入社予定の学生と親御さんは、いまごろ真っ青だろう。

 コンクール、ノルマ制、自爆営業はよくあるハナシ

「処方箋獲得コンクール」は、なかなかショッキングな名前だけれど(社内的な名前がこうだったのかは現時点では不明。朝日新聞がつけた可能性もあり)、世の中には社員に目標やノルマを課して、社員が親族・友人に協力を求める話はけっこうある。

有名どころは「楽天カード」。新入社員にノルマを課して、親兄弟にクレジットカードを作ってもらうことになるらしい。真偽のほどは不明だが、ネット上には元社員の告発記事がいくつかある。


僕が楽天を辞める前に、これから入社を検討している人たちに伝えておきたいこと:MyNewsJapan

 

それから、数年前から話題になっている「自爆営業」。日本郵便が社員に課す「年賀状ノルマ」は有名だけど、他の業種でもよくあるという。


全文表示 | 「自爆営業」の告発に「よくある話」「何をいまさら」の声 : J-CAST会社ウォッチ

 

ドラッグストアでも自腹切りが・・・

さて、ドラッグストアに自爆営業があるのかどうか。複数のドラッグストアでバイトをした経験からいうと、たぶんあると僕は思う。

ある時期になると化粧品担当の社員が、売上目標に到達させるために自腹で大量の化粧品を購入したり、店長も市販薬を購入している光景を何度か見たことがある。 ある時、店長が何本も栄養ドリンクを買っているので、「お疲れですか?」と聞いたら、

「それもあるけど、少しでも数字を作っておかないと・・・」

と苦笑いした。 もっとも、仮に売上目標に達したら報奨金がでて、自腹分以上のリターンがあるとしたら自爆営業とはいえないから、僕が見た全てが自爆営業であるとはいいきれない。

でも、僕も一回だけ、ある店の店長が、

「あと一個売れれば目標達成なんだよなあ」

といって300円ほどの市販薬の購入を社員に提案しているのを見たことがある(強制ではないけど、部下は断りづらいだろう)。だから、ドラッグストア業界では、大なり小なり身銭を切って売上の数字を作っている店があることは、ほぼまちがいないと思う。

会社が社員をダメにする。社員が社員をダメにする

僕がひとりの消費者として心配なのは、身を犠牲にしてお店に尽くしている人は、多少お客を欺いたとしても、罪の意識が薄くなるんじゃないだろうか?ということだ。

このブログでは、かつてある店長が僕に「なるべく高い薬を売って下さい」と言ったことがあると書いた。はじめは腹が立った。この店長の性格に問題があるのだと思っていた。でも、だんだんそうじゃない気がしてきた。

店長は朝早く起きて、夜遅く帰って、販売ノルマを課せられて、時には自腹で売上を補てんしている。一生懸命仕事をしている。会社のために働いている。そういう生活を送っていると、お客のことよりも数字を作ることが最優先になるのは、人として当然じゃないだろうか。多少、よろしくないことをしても、

「俺はこんなに自分を犠牲にして頑張っているんだから!」

と、自分の行動を正当化したくならないだろうか。僕ならなってしまいそうだ。

負の気持ちは他の社員にも伝播するだろう。就職活動時期は「地域の健康に貢献する会社」とか「お客様の健康を守る会社」とか言っていた会社を選んだ新入社員が、入社後に店長の姿を見て、

「ああ、こんなんでいいのか」

「こういうものなのか」

と、悟ってしまっても不思議ではない。

僕は20代のころ、自分の仕事の営利性と社会的意義のギャップに、つねに違和感を感じていた。だから、ドラッグストアの現状や社員が置かれている状況を、他人事として捉える気にはなれない。

今回の「くすりの福太郎」騒動で、本来行うべき記録を怠った人たちは、どんな気持ちで仕事をしていたのだろう。患者情報の記録は、薬局業務の基本のキだ。いつから基本を見失ったのか。なにが彼らをそうさせたのか。

これは薬局という業態に限った問題ではないのだと、自戒を込めて思わずにはいられない。