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妊婦さん驚愕の「パブロン、ベンザ、ノーシンは環境ホルモン入り」という記事に怯える前に

風邪薬 解熱鎮痛薬

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風邪薬が胎児に悪影響・・・

『「パブロン」「ベンザブロック」「ノーシン」は環境ホルモン成分入りで子どものADHD増加、精巣がん10倍のリスクも』

というタイトルの記事が、いっときネットで拡散された。配信元は「マイニュースジャパン」という新興ウェブメディア。記事は途中まで無料で読めるのだけど、有料会員にならないと全文は読めない(※1)。


「パブロン」「ベンザブロック」「ノーシン」は環境ホルモン成分入りで子どものADHD増加、精巣がん10倍のリスクも:MyNewsJapan

おぉぉ、この刺激的なタイトル・・・僕が妊婦だったらガクブル必至だ。

タイトルの根拠として挙げられているのは昨年、学術誌「JAMA Pediatrics」(※2)に発表されたデータ。外国の妊婦さん約6万4000人を対象に調べたら、妊娠中に「アセトアミノフェン」という解熱鎮痛成分を使った人は、子供に発達障害のリスクが高くなるという結果が出た。

アセトアミノフェンは、他の解熱鎮痛成分と比べて比較的安全とされていて、市販薬や処方薬で広く使われている。妊婦に使われることもある。そんな安全なはずの薬が、じつは発達障害を起こすかも、というのがこの記事のミソ。

 

 

結局、飲んでいいのかどうか、わからない

ただ、マイニュースジャパンを購読して記事の全文を読んだ僕の印象だと、衝撃的なタイトルとは裏腹の、曖昧な内容の記事だった。恐怖を煽るようなタイトルなのに、記事では「アセトアミノフェンは危険だから、絶対飲んじゃダメ」とは一言も書いていない。

それどころか、記事の締めくくりには 「消費者は、積極的な情報収集と自己防衛が不可欠だ。めんどうくさがらず医者に相談することをお勧めする」 と書かれていて、場合によってはアセトアミノフェンを飲んでもいいような印象。

アセトアミノフェンと発達障害の関係についても、まだ科学的データが十分に蓄積されていない模様。

この記事を読んでも、アセトアミノフェンが危険な薬なのかどうなのか、正直よくわからない。

記事のタイトルだけみて、「市販薬には環境ホルモンが入っているから、飲まない方がいい」と自己判断しないほうがいい。

 

記事を読んで心配になっちゃったら?

どんな薬でも飲まないにこしたことはないのだけど、でもつらい症状を抑えたいから薬を飲むわけで、実際はみんな個々の薬のリスクとベネフィットを天秤にかけて使っている。

アセトアミノフェンに関してはベネフィットのほうが大きい、というのが医療界全般の意見になっている。国内外の副作用データをたくさん集めて評価した「妊娠と薬」(第二版 2010年刊)という医療者の間ではとても有名な書籍は、アセトアミノフェンは比較的安全である(100%安全という意味ではない)と評価している。

でも、今回のマイニュースジャパンの記事を読んで心配になっちゃった妊婦さんもいるかもしれない。そういう人は、記事を購入してプリントアウトして、自分の不安を医師に伝えてはどうだろうか。医学論文をどう評価するかは、医療者でも一筋縄ではいかないし、医学論文を読むには料金(数千円)を払って、その論文を購入しなければいけない。だから、ちゃんと調べようとしたら医療者側にとってはそれなりに手間になるのだけど、自分で勉強して疑問点を専門家に聞くことは、遠慮のいらない、ごくフツーの行為だと思う。 

 

妊婦本によって安全性の表現はさまざま

このエントリを書くにあたって、本屋で妊婦さん向けの本を12冊ほど目を通してみたら、どの本も微妙に書きぶりが違っていることを知った。すべて産科医が監修している本なのだけど。基本的には、市販薬は自己判断で飲まずに医師に相談しましょうと書いているものの、安全性の表現が本によって異なる。右ページに「市販薬は危険」と書いていて、左ページに「アセトアミノフェンは安全」と書かれていて、読者をなめんとんのか!と言いたくなるような本もあった。

それはそれで、勉強になった。

 

 

※1 記事の主な引用論文は「JAMA Pediatrics」「Epidemiology」だった。

※2 すでにウェブ上ではこの論文を扱った記事がでているので、営業妨害にならないと判断して紹介する。