『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

どうしてドラッグストアは、体に悪いタバコを売るのだろう?

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体に悪いタバコを売らないという動き

日本のドラッグストアでは、タバコを売っている店がある。なぜタバコを売るのか。体に悪い嗜好品なのに。

喫煙が健康を損なうという論文はたくさんある。今日も、喫煙者の多くがタバコが原因で亡くなっているという海外の研究を紹介した記事を見つけた(論文はちゃんと読んでませんが、前向き研究prospective study)。これ↓

繰り返すけどタバコは体に悪い。精神衛生上はいい、という人もいるかもしれないけど、体の細胞にとっては絶対悪い、ということはほぼ医学的に間違いない。

タバコを吸うのは個人の自由。でも、人々の健康管理をウリにしているはずのドラッグストアが売るのはどうなんだろうか。

ロイター通信のニュースでは、しょっちゅう、タバコの話題がでる。本やニュースによると、アメリカのタバコ産業界はものすごい資本力を持っているらしい。いっぽうで、医学界からは喫煙が肺がんなどの病気のリスクを高めるとして、批判を受けている。営利VS健康という対立構造を回避するために、アメリカのタバコ各社は近年、電子タバコに注力している。

そんななか、昨年、アメリカで第二位の大手ドラッグストア「CVSケアマーク」が全店でタバコの販売を止めるという出来事があった。日本語で紹介した記事がコチラ。かなり話題になった。

薬と一緒にタバコや酒を売るって変

薬とタバコを一緒に売るのはヘンじゃないの?という意見は、あまり日本じゃ聞かないけれど、海外ではわりかしよくある意見かもしれない。英国ニュース「BBC」が以前、「アメリカの”ドラッグストア”とイギリスの”ケミスト”の6つの違い」という記事を出していた。イギリスではドラッグストアは”ケミスト”と呼ぶらしい。

6つの違いのうちの一つは、アメリカのドラッグストアには、酒やたばこなど、健康によろしくないものが売っていることだ。イギリスでは販売していないという(日本でいう薬局に近いのだと思う)。薬と一緒に酒やたばこを売るって変じゃないですか?と記者は思っている。興味ある人は以下の記事(英語)をどうぞ。


6 Differences Between American 'Drugstores' and British 'Chemists' | Mind The Gap | BBC America

こうした記事を見ていると、ドラッグストア(ケミスト)でタバコを売ることは、決して当たり前じゃないような気がしてこないですかね?

 

アメリカのドラッグストアがタバコを売る理由

そもそも、どうしてドラッグストアはタバコを販売しているのか?去年、ニューズウィーク日本版にある「ドラッグストア進化の歴史」という記事が、アメリカのドラッグストア事情を説明していた。これ、かなり面白かった。同紙によると、アメリカのドラッグストアは次の歴史を辿った。

  • 初の薬局は植民地時代に登場
  • 1700年代には東海岸に広く普及。当時は家庭薬を売っていた
  • 西部開拓では店が少ないので、薬局が雑貨店を代行。
  • 1950年代になると、くせになる「ソーダ」で薬局に客が急増
  • 当時はたばこはぜんそくの治療薬として薬局で販売(←ほんとかよ!?)
  • たばこもソーダも酒もクセになるので、薬局は集客力がアップ
  • 近年は店内にクリニックを併設したり、利用サービスを提供。地域の人々の健康維持・増進という本来の姿に回帰しつつある

俯瞰すると、地域の人々の健康を管理する店→資本主義なので売れるモノはなんでも売る店→健康・医療サービスを提供する店というふうに変化しているといえる。

興味ある人は、こちら以下の元記事をどうぞ。英語を読むのがめんどくさい人は、ニューズウィーク日本版の2014年3月11日号を買ってください。

http://www.newsweek.com/2014/02/14/prescriptions-side-curly-fries-245512.html

 

ドラッグストアがタバコを売るのはビジネスとしてダサいかもね

ニューズウィークの記事によると、今のドラッグストアは、たばこやソーダ(清涼飲料水)に頼らなくても十分な利益を確保できるとしている。日本のドラッグストアも同じだ。冒頭で紹介した、タバコ販売の中止を決めた「CVS」の経営最高責任者は、

CVSが単なるドラッグストアからヘルスケア会社へ変貌を遂げようとしている中で、これは時宜にかなった正しい決断だ」

と語っている。タバコの販売中止に伴う損失は2000億円に上るとされているが、ヘルスケアという業態をアピールすることが、より企業ブランドを高めるという経営判断だ。

ドラッグストアがタバコを売るのは、どうしておかしいのか。健康産業のくせにタバコを売るのは自己矛盾である、というモラルの問題じゃなくて、単純に次世代のビジネスに取り組んでいるかどうかという、その企業の先進性を表すものだといえそうだ。

「え?あそこのドラッグストア、まだタバコ売ってるの?ダサー」

というムードに、いずれなるかもしれない。