効くの?効かないの?「機能性表示食品」のちょっとうすら寒い展開

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食品メーカーに「裏切られた」

ナリモノ入りの「機能性表示食品」が、今週12日から、いよいよ発売される。

すでに多くのメディアで機能性表示食品へのギモンが呈されているが、一番印象的なのは、食の品質を科学的に検証している独立系メディア「FOOCOM.NET」の松永和紀編集長(元毎日新聞記者/京都大学大学院農学研究科修士課程出身)が、有料メルマガで、

「裏切られた」

と怒りを爆発されておられたこと。おお、”裏切り”なんて、穏やかならぬ響きですね。

 

時間とお金を節約!たいへん画期的な制度

さいきん大手メディアで取り上げられている機能性表示食品は、ほんとうにちゃんと表示された効果があるのだろうか?というのは、多くの人の関心があるところだと思う。

前段を確認しておくと、機能性表示食品制度とは、今年から始まった食品表示の新しい制度。 食品メーカーが、その食品が持つ効能の科学的なデータを消費者庁に届け出ることで、「脂肪の吸収をおだやかにします」「おなかの調子を整えます」といった文言をパッケージに表示することが許可される(※1)。メーカーにとっては、絶好のプロモーションの機会を得られる。

似たような制度に「トクホ(特定保健用食品)」があるが、機能性表示食品制度はトクホのように国が細かく審査しないので、トクホと比較するとかなりサクッと認定してもらえる。かかる費用も時間も抑えられて(※2)、「脂肪の吸収をおだやかにする」といった効果の表記が許される、画期的な制度なのだ。メーカーにとって。

もちろん消費者も、いままでより、その商品の魅力をわかりやすく知ることができるので、メーカーだけに利する制度ではないのだが。

 

ダメ論文を根拠にしてどーすんの、と

で、前出のFOOCOM.NETの編集長の松永さん。5月28日発行の有料メルマガで、

「裏切られた」

と怒り心頭だ。消費者庁に届け出された機能性表示食品の科学的データは、消費者庁が公開しており、誰でも見ることができる。それを松永さんが読んだところ、提出されていた科学論文のデータがあまりにもズサンだったそうだ。松永さんはメルマガの中で、こう書いている。

「食品企業に過大な期待をかけたつもりはありません。しかし、それなりに倫理を持って、良い製品を出す努力をしてくれるのでは、と思っていました。甘かった。」

メルマガではいくつかの商品を挙げて、その根拠となる論文の問題点を指摘している。無料公開している部分もあるので、こちらを紹介↓

松永さんの問題意識をぼくなりに一言で表すと、

「科学論文のテイをなしていないダメ論文を提出するメーカーには失望したし、それを受理して終了の消費者庁ってどーなの?」

といったところだろう。

上の記事で挙げている「えんきん」は一例であって、松永さんのメルマガのレポートを読むと、他にも問題な論文がゾロゾロという状態だ(個人的には統計学有意差が出てない効果をはっきり謳っちゃってる部分がアウトだと思う)。

 

「おなかの調子を整えるかもしれません」でいいんじゃないの?

もちろん、科学的なエビデンスがないからといって、その食品の価値は否定されるものではない。でも、今回は、松永さんの怒りはごもっともだと思う。

なぜなら、機能性表示食品制度は、科学的な裏付けがありますよ、という制度なのだ。なのに、その科学的な裏付けが甚だ心もとないとなれば、これはかなりやっちゃった感がある。ぼくはけっこう松永さんの意見には賛同できないことが多いのだけど、この件に関しては松永さんに分があるように思う。

だいたい、機能性表示はメーカーの責任だと消費者庁は言っているけど、許可している時点で消費者庁にも責任あるでしょ。ちゃんと評価できないなら、表示方法は「脂肪の吸収をおだやかにするかもしれません」「おなかの調子を整えるかもしれません」くらいにしておけば?それでも買う人は買いますよ。

 

すぐに新商品に飛びつく前に・・・

さて、この機能性表示食品は、12日から発売開始の予定。

もし興味があって購入してみたいなと考えている人は、事前にネットで新聞報道を読むか、店頭で薬剤師か登録販売者に、どの商品を買うべきか相談してみてはどうだろう。

この時注意したいのが、ドラッグストア業界では、この機能性食品は売上アップのテコ入れになると期待されているから、やたら勧めてくる店員がいるかもしれないということ。勧めてくる店員が悪いわけではない。でも、専門家の間でも、疑問視されているこの新制度の商品を、やたら自信満々で売ろうとする店員がいたら、

「専門家からは評判が悪いですけど、どうしてあたなはなぜ効くと思われるのですか?」

と一言訊ねてみてはどうだろう。モヤモヤした答えが返ってきたら、購入するのは立ち止まって考え直してみては?

 

買ってはいけない!?機能性表示食品

前出の松永編集長、心底この新制度が許しがたいらしく、明日10日に都内で「買ってはいけない!?機能性表示食品~そのトリックを考える」という、いつも冷静な彼女らしからぬ刺激的なタイトルのセミナーを開催する。セミナーの様子は、後日このブログでも紹介したい。

 

※1http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1442.pdf

※2 日経トレンディ2015年3月号の特集では、日本チェーンドラッグストア協会の資料を元にトクホとの違いを表にしている。それによると、特保の場合は開発費用として数億円の臨床試験と2~3年の申請&許可がかかるが、機能性表示食品の場合は数百万から1億円程度、販売日の60日前までに届けるだけでいい。