こむら返りに芍薬甘草湯「コムレケア」。漢方薬らしからぬ注意点

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こむら返りに有効なのは漢方薬

スポーツ中、山登り中、はたまた就寝中に、突然足がつって悶えたらどうする?そんなときには「コムレケア」という薬がある。カタカナ名の商品だけど、中身は漢方薬「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」。

こむら返りは、筋肉が急激に縮まることで痛みを感じる症状だ。ストレッチや水分補給で治すことが基本で、薬を使う場合もある。治療薬はいくつかあって(※1)、そのうち有効とされているものの一つが芍薬甘草湯。この漢方薬を使う場合の注意点を、ぼくの失敗談と共に紹介したい。

 

明け方にこむら返り。痛くて起きてしまう

以前、「最近、明け方にこむら返りが起きるんだよね」とお客から相談を受けた。それなら芍薬甘草湯が効くと考えて、店にあったコムレケアを紹介した。で、

「これは痛い時に飲む薬です(いわゆる「頓服」)」

と伝えようとして念のためパッケージにある「用量用法」を確認すると、ありゃりゃ?こんなふうに書いてある。

「次の量を食前または食間に水またはお湯で服用してください 大人(15歳以上)1回量4錠 1日服用回数3回」

芍薬甘草湯って、基本的に痛い時に使う薬(頓服薬)だよね? 1日3回も飲まないとダメなの?いやいやそんなハズは・・・。

言葉に詰まってしまった。

 

芍薬甘草湯の4つのポイント

芍薬甘草湯は「芍薬」と「甘草」を混合させた漢方薬だ。シンプルな内容だけど、通常の世間の「漢方薬」のイメージとはちがった特徴もある。使用する際のポイントを、ぼくなりに挙げると次の4点。

①即効性がある

②予防的に使える

③基本は頓服(連用はむしろ控える)

④隠れた病気に注意

以下、順番に見ていく。

 

速効性がある

まず「①速効性がある」から。

一般的に、漢方薬は「長く飲み続けることで効果が出てくるもの」という印象があるけど、芍薬甘草湯は速効性があり、飲んで5分ほどで効くとされている(※2)。その仕組みは、芍薬に含まれる「ペオニフロリン」と、甘草に含まれる「グリチルリチン酸」が筋肉を弛緩させるからだとする研究がある(※3)。

 

予防的に使える

次に「②予防的に使える」。

芍薬甘草湯は5分で効くから「速効」なのではあるけど、足がつったときの5分は結構長く感じるものだ。そもそも5分もたてば、安静にしているだけでもある程度症状は緩和する。だから5分て短くないし、いまいちありがたみがない(スポーツしているときは重宝するかもしれないけど)。

ただ、この薬は予防的に使える。

先述のお客さん、話を聞くと「明け方に足がつって、痛みで起きてしまう」という訴えだった。こんな人に、「つったら急いで飲んでください」といっても、しょうがない。予防的に飲むのが良い。漢方初心者向けの医療専門書を書いている医師の新見正則さんの処方例本には、ちょうど似たような症例が紹介されている(※4)。

63歳の男性、毎朝明け方にこむら返りが起きる。そこで新見さんは芍薬甘草湯を予防的に就寝前に飲むように指示。症状が改善したという(なお、保険処方薬とコムレケアの成分量は同じ)。

 

基本は「痛みが出た時だけ」。自己判断で長く飲まない

続いて「③基本は頓服」について。

甘草は多く服用すると(目安は1日7.5g)、「偽アルドステロン症」という副作用を起こすことがよく知られている(詳しくは※5)。血液中のカリウムが減ることで、血圧上昇や脱力感などの症状として表れる。コムレケアに含まれる甘草は1日量は6g。基準量よりは少ないが、長く飲み続ける薬ではないことは、ぼくが知る限り医療者の間で一致した意見だ。だから、基本は頓服。もしくは、明け方のこむら返りなど、痛みが出てからでは困る場合においてのみ予防的に1回飲む。

芍薬甘草湯をこむら返りに使う患者は、ついついダラダラと長期間飲み続けてしまう傾向を懸念している医師もいる(※6)。とにかく、自己判断で飲み続けるのは控えること。使うほうとしては、よくよく頭に入れておきたい。「漢方薬は副作用がない」という巷の声を時々聞くけど、これは100%神話だから。

さて、コムレケアの説明書には「1日3回」とある。これは、コムレケアが腰痛などにも使えるために(腰痛は1日中痛いので1日3回もあり)、このように記載されているのではないかとぼくは思う(腰痛にコムレケアをお勧めする気はないけど)。とにかく、こむらがえりには、1日3回飲む必要はないし、むしろ飲まない方がいい。まして、後述するように、高血圧などで受診している人はなおさら。

 

こむら返りは病気のせいかも?

最後に「④病気に注意」。

こむらがえりは、筋肉の急激な収縮が原因で、これは筋肉への神経伝達に不具合が起きている。その原因は、運動による水分不足、エネルギー不足(ようするに疲れ)、体の冷えによる筋肉の緊張など、健康な人々にもあてはまるものがいくつかある(※7)。その一方で、糖尿病患者、透析患者など、特定の病気を抱えている人は健康な人に比べて多くこむら返りが見られることが知られている。そのため、こむら返りが頻繁に起きる場合は、体に恒常的な異常が起きている可能性があるので、なにか病気を疑った方がいいという医師もいる(※8)。

また、その人が飲んでいる他の薬の副作用でこむら返りが起きる場合もある(高血圧の薬など)。そういうときは医師か薬局薬剤師に相談を。

 

結局売れず・・・

さて、冒頭のお客さん、ぼくが一通りコムレケアの説明を終えた後で、

「いま何か飲まれているお薬はありますか?」

と安全性の確認のために聞いたら、「心臓の薬を飲んている」と返ってきた。ガーン!この薬、心臓病の人は使えないんですよ。すいません、最初に確認しておくべきでしたね・・・。しょぼぼん(血圧を高める方向に働くし、いま飲んでいる薬の副作用の可能性もなきにしもあらず)。

こむら返りのお客には、最初に色々確認すべき点が多々あるよね・・・。

 

高齢者は薬剤師・登録販売者に相談

コムレケアの説明書には、高齢者や高血圧や腎臓病等の人も薬剤師または登録販売者に相談するよう明記されている。詳しい統計は知らないけれど、ぼくは、こむら返りは高齢者に多い印象がある。高齢者は持病があったり、色々薬を飲んでいたりすることが多い。高齢者は購入する前に、薬剤師か登録販売者に相談することを強くお勧めしたい。

 

 

※1 西洋薬はあまり効かないという医師の意見もある。たとえばhttp://www.kampo-s.jp/m_square/today/kfs/011.htmや、書籍「西洋医が教える、本当は速効で治す漢方薬」にて。

 ※2 

西洋医が教える、本当は速効で治る漢方 (SB新書)

西洋医が教える、本当は速効で治る漢方 (SB新書)

 

 ※3神経筋シナプスのイオン流入の調整による。ただし研究自体は古い(1992年)ので、最近の事情はぼくはわからないhttp://www.kampo-s.jp/m_square/today/kfs/011.htm

※4コチラ。とてもわかりやすい。 

フローチャート漢方薬治療2 典型例で生薬からカンポウを理解する

フローチャート漢方薬治療2 典型例で生薬からカンポウを理解する

 

※5日薬資料http://www.jshp.or.jp/banner/oldpdf/p43-9.pdf

※6芍薬甘草湯による「横紋筋融解症」のメカニズム:石原藤樹のブログ(元六号通り診療所所長のブログ):So-netブログ

※7足がつる原因は?|コムレケア|小林製薬

※8http://www.kampo-s.jp/m_square/today/kfs/011.htm