『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

葛根湯+普通の風邪薬の合わせ技「コフト顆粒」。中途半端だが、それがいい!?

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サラリーマンからの質問「これって効くの?」

エリート風外国人が登場する個性満点のCMを以前紹介した。 

この薬をつくっている「日本臓器製薬」という会社が、同じ外人さんを起用して新たなCMを始めた。7月から全国発売している風邪薬「コフト顆粒」だ。

 

CM効果が出ているのか、先日、ドラッグストアの店頭でサラリーマンの男性客から、

「これって効くの?」

と質問された。正直にいうと「あの変わったCMの会社の新製品か」くらいにしか考えてなくて、薬の中身を確認してなかったので、突然の質問に慌ててしまった。日本臓器製薬さん、お客さん、ごめんなさい。

 

「コフト顆粒」は、醤油と味噌を半分ずつ入れたラーメン

コフト顆粒は、漢方薬の「葛根湯」と、一般的な風邪薬に含まれる成分をミックスさせた薬だ。市販薬の中では”変わり種”といっていい。

成分は次の通り(1日量)。

風邪の漢方薬「葛根湯エキス」2200mg

解熱鎮痛成分「アセトアミノフェン」450mg

鼻症状の成分「クロルフェニラミンマレイン酸」7.5mg

咳症状の成分「ジヒドロコデインリン酸塩」24mg

咳(痰)症状の成分「グアイフェネシン」250mg

頭痛症状の成分「無水カフェイン」90mg

ビタミンC500mg

ビタミンB2 4mg

 

この薬の特徴は、解熱鎮痛成分アセトアミノフェンと葛根湯の量にある。

一般的な風邪薬に含まれるアセトアミノフェンは900mg。それがコフト顆粒では半分の450mgになっている。また、葛根湯(エキス)の2200mgは、クラシエなどが発売している満量処方の葛根湯の半分程度の量になっている(※1)。

一方、咳や鼻に効く成分は、一般的な風邪薬と変わらない量だ。

つまり、コフト顆粒とは、葛根湯と一般的な風邪薬の成分を、量を減らして一緒にした風邪薬といえる。

例えるなら、そうですね、自宅でラーメンを作っていて、醤油味にするか味噌味にするか迷った末、醤油と味噌を半分の量ずつ入れてみましたって感じかな?え、わかりにくい?わかりにくい薬なんですよ。

 

葛根湯の弱点を補う成分たち

コフト顆粒に含まれる成分をもう少し詳しく見てみる。

まず葛根湯だけど、これは7つの生薬からなる漢方薬で、体温を上げて発汗させて熱を冷ます成分や、筋肉のこわばりを緩める鎮痛成分などで構成されている。つまり、一種の解熱鎮痛薬であり、アセトアミノフェンと似ている(だから類似成分のアセトアミノフェンの量が少ないんだろう)。

葛根湯には、鼻水や咳を止める効果はない(鼻づまりには効くらしい※2)。そんな葛根湯の弱点を補うかのように、コフト顆粒には通常の風邪薬で使われている鼻水・咳止め成分が含まれている。

そういう意味では、コフト顆粒は風邪症状に効く成分が一通り入った風邪薬であるといえる。

 

薬学的には矛盾しているかも・・・

となると気になるが、

「コフト顆粒は、普通の風邪薬や、葛根湯単体と比べてよく効くのか」

ということ。残念ながら、ぼくは比較したデータを知らない。コフト顆粒を試した人の声もまだ聞いたことがない。

薬学的にいえば、アセトアミノフェンと葛根湯の同時併用は、多少矛盾していると考えられる。

アセトアミノフェンは、熱を下げる効果がある。他方、葛根湯は体温を一旦上げて発汗させることで熱を下げる。あるいは、体温を上げることで免疫力を高める、といった説明がしばしば用いられる(※3)。ならば、葛根湯の体温上昇作用を、アセトアミノフェンの解熱作用が消してしまうことになる。

ぼくは漢方に特別精通していないので、この見方はやや浅はかなのかもしれないけれど、どうなのだろうか。

科学論文検索サイト「Cinii」で検索すると、「アセトアミノフェンと葛根湯の相互作用について」に関する研究がでてくる。それによると、併用するとアセトアミノフェンの血中濃度が高まるかもしれないという。ただし、これは動物を対象とした実験なので、ヒトにあてはめるのは難しい。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscpt1970/27/1/27_1_251/_pdf

ググってみると、別の実験もあった。こちらは人を対象にしたもので、アセトアミノフェンと葛根湯を併用しても(2つとも減量されている)安全性の問題は発生しないというものだった。

http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/pdf/970016.pdf

これらの試験だけではなにか結論をつけることはできない。いまのところ、アセトアミノフェンと葛根湯を一緒に併用するとどうなるかは、よくわかってないようだ。

葛根湯とアセトアミノフェンを同時服用すると、プラスの相乗効果が起きて薬の効き目が倍増する・・・といった話は、少なくともぼくは聞いたことがない。

 

「葛根湯で治したいけど、鼻水・咳もなんとかしたい」人向けかもね

じゃあ、どんな人向けの薬といえるのか。

前述のとおり、コフト顆粒は「葛根湯+風邪薬成分」の合わせ技だ。葛根湯では効果が期待できない、鼻水や咳止めの成分が入っている。だから、

「葛根湯で風邪を治したいけど、鼻水とか咳もすぐになんとかしたい」

という人にはいいと思う。

もちろん、その反面として葛根湯の量が少なくて、成分だけ見るとコフト顆粒は中途半端な薬ともいえるのだけど。

 

他の「葛根湯+風邪薬成分」の製品と比べると・・・

コフト顆粒のように「葛根湯+風邪薬成分」を使っているのは他にもある。救心製薬の「救心のかぜ薬赤箱」、第一三共ヘルスケアの「プレコールエース顆粒」などだ(他にもありますが省略)。

 

これらの製品と成分を比較すると、コフト顆粒は比較的、葛根湯エキスの量が多い。逆に言えば、その分、アセトアミノフェンの量は相対的に少ない。葛根湯の力になるべく頼りたいなら、コフト顆粒がよさそう。

 

「笑止千万」とする医療者もいる。店員に聞いてみよう

このように、コフト顆粒は市販薬の中ではちょっと珍しい風邪薬だ。痒いところに手が届くような処方ともいえるし、前述のとおり、アセトアミノフェンと葛根湯の組み合わせは矛盾しているという見方もできる。「笑止千万」とする医療従事者もいる(※4)。

だから、「さいきんCMでやってるから、ちょっと買ってみようかな」と購入する前に、店頭で薬剤師か登録販売者の意見も是非聞いてみてほしい。このぼくの煮え切らない記事よりもタメになる答えが返ってくるんじゃないでしょうか。

 

 

※1たとえばクラシエの葛根湯と阪本漢方の葛根湯はともに満量処方(カッコン8g含有)だが、エキス量は異なる。その意味では、エキス量だけで単純比較はできないが、コフト顆粒に使われている生薬の量が、満量処方の約半分であることは間違いないといえる。

※2「漢方診療ハンドブック」

※3クラシエなどメーカーのウェブサイトには、「発熱を助けることで免疫力を高め」などと書いてある。しかし、発熱後には放熱があるわけで、ここらへんぼくにはよくわからない

※4ツイッター上のカリスマ医師、EARL氏が先月そのようにツイートしている。この見方に同意する医療従事者は少なくないだろう。