「防風通聖散」って痩せるの?とか言う前に知っておくべきこと

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新商品が2つ同時期に発売!

”お腹周りが気になる人の漢方薬”として知られる「防風通聖散」に、今年9月、新商品が2つ同時に登場した。いずれも従来よりも生薬の成分量が多く、病院で処方されるものと遜色がない(市販の漢方薬の多くは、病院で処方されるものよりも成分量が少なく設定されています)。他の市販薬よりも、効き目が高いような印象のパッケージにになっている。職場のドラッグストアでも話題にのぼる。

「そんなに(成分量を)高くして大丈夫なのかねー?」

数人の同僚(登録販売者)が口にしていた。副作用の問題はないのか、という疑問だ。

 

「ナイシトールZ」と「ロート防風通聖散錠満量」

最近発売した防風通聖散の新商品は、小林製薬ロート製薬から発売している以下の2つだ。

【第2類医薬品】ナイシトールZ 315錠

【第2類医薬品】ナイシトールZ 315錠

 

 

【第2類医薬品】新・ロート防風通聖散錠満量 264錠

【第2類医薬品】新・ロート防風通聖散錠満量 264錠

 

ざっくり説明しておくと、どちらも市販薬としては最大量の生薬成分が使われている。一日の成分摂取量は変わらないけど、前者は1回5錠、後者は1回4錠で飲む錠数が異なる。両社の抽出技術や値段も異なる。製品間の違いをもっと知りたい人は、ドラッグストアで薬剤師・登録販売者に聞いてね。

 

トレイが近くなりますよ

今回書いておきたいのが、防風通聖散の副作用について。冒頭で紹介したとおり、この防風通聖散には結構、厳しい見方がある。専門誌や医療業界内で言われている評を、ぼくなりに以下の通りあげる。

・やせ薬ではない

・少なくとも運動をしなければ痩せない

・お腹がゆるくなる

防風通聖散には、便秘を解消する効果もあり、お通じがよくなる。効きすぎると、お腹がゆるくなる。ぼくの知人もダイエット目的で飲み始めたところ、「トイレが近くなった」と言っていた(ダイエットに効いたかは不明)。だから、この漢方薬はお腹が弱い人には向かない。

ま、お腹がゆるくなるくらいいいんじゃね?と思う人もいそうだけど、当然、お腹以外の副作用もある。

 

肺や肝臓に副作用が・・・

医療現場から、防風通聖散による副作用の事例がいくつか報告されている。

たとえば、49歳の男性の場合。ダイエット目的で市販の防風通聖散を飲み始めたところ、1週間後に発熱と呼吸困難を感じるようになった。医師は、薬の副作用による肺障害(薬剤性肺障害)と診断した。決め手となったのは、男性の過去の副作用歴だった。男性は8か月前に病院でダイエット目的に防風通聖散を処方されており、その時も服用後1か月で発熱・倦怠感が出たため自己判断でやめていたのだ。

なんでそんな薬を2度も飲んだのか?今回男性が購入した防風通聖散は製品名が「ナイシトール」というカタカナ名だったので、それが過去に副作用が出た漢方薬であることに気づかずにウッカリ購入してしまった可能性がある。みなさんもご注意を。

くわしくはコチラ(日本語で読めます)↓

あるいは30代女性。防風通聖散を購入して飲み始めたところ、2か月後に皮膚が黄色くなった。薬の副作用による肝炎だろうと診断された(※1)。40代の別の女性は、医療用の防風通聖散を飲み始めた後、目や顔が黄色くなり薬剤性肝障害と診断された(※2)。

防風通聖散による副作用の事例は、ネット上で論文を検索するといくつかでてくる。学術論文をたくさん読んでる薬剤師さん(青島周一さん)が運営している「地域医療の見え方」というサイトにサクッとまとめられているので、ドラッグストア関係者でご興味ある方はどうぞ。

Blogger版 地域医療の見え方: 肥満症に効く漢方薬があるって本当ですか?

 

防風通聖散の効果を、カタカナで表現すると危険な感じになる

漢方薬は副作用が少ないといわれる。それはそれで正しいのかもしれないけど、だからって安全なわけじゃない。服用した時に体の中で起きていることは、普通の医薬品を飲んだ時とたぶんそんなに変わらない。

「医学のあゆみ」という専門誌で数年前に紹介されていた、防風通聖散の作用機序を紹介する(※3)。

防風通聖散に含まれる麻黄(マオウ)、甘草(カンゾウ)、連翹(レンギョウ)といった成分が、体内でどんな働きをすると考えられているのか。カタカナで表現すると、あらフシギ、なんか危険な感じに聞こえません?天然成分であろうと合成成分であろうと、薬は薬なわけです。

麻黄:l-エフェドリンを含んでおり、交感神経終末でのノルアドレナリン放出を促進することで、タンパク合成促進作用を持つ

甘草:licoricidineというキサンチン類似物質を含み、ホスホジエステラーゼ阻害作用を持つ

連翹:d-pinoresinolというキサンチン類似物質を含み、ホスホジエステラーゼ阻害作用を持つ

これらエフェドリンとキサンチン類似物質の併用投与は、神経細胞でのアデノシン作用を減弱させることなどによって、熱産生をより強力に促進する(と、マウスによる実験などから考えられている)。

 

「買う価値ありますか?」と率直に聞いてみてね

けっこう脅かすこと書いてしまった。そんなんめったに起きないでしょ。たしかに、深刻な副作用なんてそうそう起きない。たとえば防風通聖散による肝障害の報告は、1966年から2001年までに主なメディアに記録に残っているものは3件ほどのようだ(※)。かなり稀だといっていい。

でも、「テレビCMでやってるからとりあえず買ってみよう。漢方薬だし長く飲んでもよさそう~」と手を伸ばす前に、ドラッグストアの店員に相談することをお勧めしたい。だって、嫌じゃないですか、副作用が出た後で「あの薬って、そういうことあるらしいよ」って知るの。知っておけば、多少は納得できませんか。自己判断でダラダラと長く飲み続ける気持ちがなくなりませんか(病院で処方されている場合は別ですけど)。

値段もそこそこするしね。率直に、

防風通聖散って、買う価値がありますか?」

と質問するといいと思う。

 

 

 ※1 https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/105/8/105_8_1234/_pdf

 ※2 https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi1964/98/4/98_4_416/_pdf

 ※3「医学のあゆみ」vol.243 No.3 249- 「メタボリック症状群の漢方薬:最新のエビデンス」坂根直樹