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「同じ成分なのに名前を変えて発売」のナゼ

睡眠や精神系 口内炎薬 ドラッグストア情報

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ソトミ違って、ナカミ同じ

同じ製薬会社から発売されていて、同じ成分なのに、名前とパッケージがちがう。外見が違って、中身が同じ。そんな薬がある。にわかには信じがたいだろう。他の業種で例えるなら、同じ内容の書籍が、題名とカバーだけ変えて売られているようなものだ。

なぜ、そんな商品があるのか?医薬品ならではの理由がある。

 

3つの顔を持つ「奥田脳神経薬」

まず一つ薬を紹介する。めまいや頭痛の薬「奥田脳神経薬」。 痛みを抑えたり、精神を穏やかにさせる生薬などが入った薬だ。奥田製薬という会社から発売している。多くの人にとっては馴染みの薄い薬だろうけど、けっこうフツーにドラッグストアに置いてある。

【指定第2類医薬品】奥田脳神経薬I 50錠

【指定第2類医薬品】奥田脳神経薬I 50錠

 

さて、これとは別に、同じく奥田製薬から発売している「奥田脳神経薬M」という薬がある。一転してかっこいいデザインだ。

【指定第2類医薬品】奥田脳神経薬M 340錠

【指定第2類医薬品】奥田脳神経薬M 340錠

 

商品名に「M」がついたことで何が変わったのか。

じつは、成分はまったく一緒である。

奥田製薬のウェブサイトによると、奥田脳神経薬は昭和31年から発売している歴史のある薬だが、さいきんは「耳鳴り、めまい」の症状を抱える人が多いので、パッケージに「耳鳴り、めまい」と大きく書いたデザインを作ったという。

» Blog Archive » 奥田脳神経薬と奥田脳神経薬Mは違うお薬ですか?

おどろくなかれ、奥田製薬には「奥田脳神経薬W」という商品もあり、こちらも成分は奥田脳神経薬とまったく同じ。女性特有の「のぼせ、めまい」などを全面に出したパッケージだ。

「奥田脳神経薬」には、同じ成分で、名前の異なる3つの製品があることになる。

【指定第2類医薬品】奥田脳神経薬W 70錠

【指定第2類医薬品】奥田脳神経薬W 70錠

 

 

口内炎薬?歯槽膿漏薬?「デンタルクリーム」

もう一つ事例を紹介する。森下仁丹という会社から発売している口内炎の薬「デンタルクリーム」だ。パッケージには「口内炎口角炎」と書かれている

【第2類医薬品】デンタルクリーム 5g

【第2類医薬品】デンタルクリーム 5g

 

同社では「デンタルクリームT」という商品も販売している。成分は「デンタルクリーム」とまったく同じであるのだけど、パッケージには「歯痛、歯槽膿漏」と大きく書かれている。奥田脳神経薬の同様、外見だけがちがうわけだ。

【第2類医薬品】メディケア デンタルクリーム T 4g

【第2類医薬品】メディケア デンタルクリーム T 4g

 

ちなみに、「デンタルクリーム」には別のデザインパターンあるのだけど、これは発売元が「ノーエチ」という別会社で、名前も同じなので今回は詳しく触れない。気になる人はコチラをどうぞ↓

デンタルクリーム(ノーエチ薬品㈱)|スキンケア製品のアウトソーシング[万協製薬株式会社]

 

 消費者にとっては実は便利

奥田脳神経薬やデンタルクリームのように「同じ会社が、同じ成分の薬を、名前とパッケージを変えて同時販売する」という手法に問題はないのだろうか。

一見、かなり奇妙で、ちょっとおかしいんじゃないかという気がするが、実は消費者にとっての利便性は大きい。

「デンタルクリーム」の例で言えば、口内炎のパッケージだけでは、お客はこれが歯槽膿漏にも使える塗り薬であるとはわからない。会社側が歯槽膿漏向けのパッケージを作ってくれたことで、利用者は「あ、歯槽膿漏に使える薬があるんだ」と気づくことができる。これはいいことである。

ドラッグストアの売り場では、口内炎薬と歯槽膿漏薬は場所が離れているので、2つの製品が並んで陳列することはまずない。だから、ヘンに消費者が混乱することはない。

製薬会社にとっても、自社商品をPRする機会が増えるのだから嬉しい。

 

パッケージデザインを工夫して回避する方法もある

なぜこのようなマーケティングが起きるかというと、医薬品の効能は多岐にわたるためだ。「デンタルクリーム」のように一つの薬で、口内炎口角炎から、一見ジャンルの異なる歯肉炎や歯槽膿漏に使える。書籍とはちがって、薬は使い方に多様性があるのだ。

納得でしょうか?

実はぼくはあまり納得できてない。商品名まで変えるべきではないと思っている。実際、デンタルクリームTの製品に入っている説明書(添付文書)には、「販売名 デンタルクリーム」と書かれている。「奥田脳神経薬」も、添付文書は「M」も「W」もすべて同じものだ(※)。ようするに、外見の箱だけが名前を変えている。

じゃ、名前変えなくてもいいんじゃないの。商品点数が一見増えてブランド力を強化させる効果はあるだろうけれど、名前が違って成分が同じだなんて、フツーに考えて消費者は混乱しないかしら。

異なる効能をアピールするためには、製品の名前を変えるしかないのか。そんなことは全然ない。たとえば、クラシエから発売している「独活葛根湯」のパッケージは、正面は「四十肩・五十肩」、側面は「肩こり・五十肩」と書かれている。店頭の配置方法によって消費者にアピールする効能を変えられる工夫だ。これならわざわざ違う名前の商品を2つ用意する必要はない。

【薬品】 痛くて腕が上がらない「四十肩・五十肩」を改善する漢方薬「独活葛根湯(どっかつかっこんとう)」|ニュースリリース|クラシエ

「デンタルクリームTみたいに箱が小さい製品は、そんなことができない」という声が聞こえてきそうだけど、ぼくが言いたいのは、名前を変えなくても工夫次第でなんとかかるんじゃないですかってことね。

それに、もし他の製薬会社も「奥田脳神経薬」や「デンタルクリーム」のような手法を一斉に始めたら、えらい混乱が起きるだろう。一部の会社だけがやっているからこそ、いまのところ許容されている手法である。そんな気がするのは、果たしてぼくだけだろうか?

 

※PMDAの登録情報調べ