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日本人ばかり大量消費する市販薬②せき止めに使う「リン酸ジヒドロコデイン」

風邪薬 海外情報

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風邪薬でよく使われる咳止め成分が実は・・・

日本でばかり使われている市販薬の成分を紹介するコーナーの第二弾ですよ。

第一弾はこちらでした↓

で、今回は「リン酸ジヒドロコデイン」(ジヒドロコデインリン酸とも書く)という成分について。ほとんどの風邪薬に、咳止めに使われている。ところが海外では、市販薬にはほとんど使われていない。

 

ニューヨークのドラッグストアで気付いたこと

1年ほど前、個人的な理由でニューヨーク市に行った。個人的な理由といっても、大した理由じゃないんだけど。

所用を済ませ、空き時間があったので、マンハッタン地区のドラッグストアをめぐることに。そこで、海外ではどんな市販薬があるのかな、と風邪薬コーナーを見ていた時のことだ。商品を手に取り成分を確認しているうちに、日本ではとても有名な、ある成分の入った薬がないことに気づいた。

ほとんどの風邪薬に使われている咳止め成分「リン酸ジヒドロコデイン」である。

代わりに、ニューヨークの店頭には「デキストロメトルファン」という咳止め成分を使った薬がたくさんあった。デキストロメトルファンは日本でも一部の風邪薬で使われているが、リン酸ジヒドロコデインのほうが圧倒的に多い。

 

 同室になったメキシコ人循環器医に話すと・・・

その夜、宿泊先のドミトリーで、たまたま同室で親しくなったメキシコ人に、このことを話した。ビッタという名の、二十代後半のマッチョな循環器医師だった。

お互いベッドに寝ころびながら(もちろん、別々のベッドだよ)、

「あのさー、ドラッグストアに行ったんだけど、市販の風邪薬にリン酸コデインがなくてさー、びっくりしたよー。日本の市販薬では、フツーに含まれているのに」

と僕が報告すると、彼はこう言った。

「リン酸コデインは麻薬性の成分だからね。僕の国(メキシコ)でも、咳止めには安全性の高いデキストロメトルファンを使うよ」

そうなのだ。ジヒドロコデインリン酸は、「麻薬性鎮咳成分」と呼ばれていて、理論的には副作用に便秘や依存性、痰が出にくくなり喘息発作を悪化させることなどがある(通常使う分には心配しなくていいだろう)。いっぽうのデキストロメトルファンは、非麻薬性の咳止め成分で、便秘や依存性の副作用がないので、比較的安全な成分である。というのが一般的な市販薬の解説書に書いてあることだ(※1)。

ビッタの正論に頷きながら、ぼくは心の中で、

「そもそもなんで日本ではデキストロメトルファンじゃなくて、リン酸コデインを使っているんだろう?」

と思った。

 

イギリス、アメリカの市販薬サイトにはナシ

海外の市販薬では、リン酸ジヒドロコデインを使わないのだろうか?

アメリカのネットサイト「ドラッグストア・ドットコム」でジヒドロコデインを検索したが、商品はでてこなかった。処方薬としてはもちろんあるのだが、市販薬にはないようだ。

イギリスとはどうか。ドラッグストア大手「ブーツ」のサイトで検索すると、風邪薬が1件表示された。一方、「デキストロメトルファン」では3件の薬が表示された。

どうやらアメリカ・イギリスでは、リン酸ジヒドロコデインは市販の咳止めとしては馴染み薄のようだ。

 

そもそも病院では「デキストロメトルファン」がバンバン処方されてますよね?

このアメリカでの一件以来、日本で色々な人に、

「なんで日本の市販薬って、リン酸ジヒドロコデインを使っているんでしょう?」

と聞いているのだけど、ほとんどの人が「さあ~~?」でおわり。

白人とアジア人では民族がちがうから、体内の薬の作用の仕方がちがうのだろうか?

たとえば、デキストロメトルファンを体内で無毒化(代謝)してくれる酵素酵素名は「CYP2D6」といいます)の遺伝子が欠損している人がまれにいて、そういう人は副作用がでやすいとされている。そのような体質(poor metabolizerといいます)は、日本人よりも白人のほうが多いことわかっている。ただ、全体的に見ると、酵素は白人よりも日本人の方が少ない(※2)から、日本人の方が白人より副作用のリスクがある・・・のかもしれない。

でも、よくよく考えると、日本では風邪で病院にかかったとき、咳止めに「メジコン」という薬が処方されるわけで、このメジコンの成分名はデキストロメトルファンなのだ。つまり、病院ではデキストロメトルファンがバンバン処方されている。

病院で処方されるのはデキストロメトルファン

市販薬で多いのはリン酸ジヒドロコデイン

一般に安全性が高いとされているのは、デキストロメトルファン

どうして日本の市販薬では、リン酸ジヒドロコデインが使われているのか、いまだにわからない。

 

見直してみてはどうでしょう?

「製薬会社の陰謀ですよ」と証拠を突きつけることができるならジャーナリストっぽいけど、実際は陰謀なんてものではなくて、大した理由はないんだろうな、と今のところ勝手に思っている。大昔になんとなくで決めたことが、今もなんとなく続いている、みたいな。

世間はセルフメディケーションだとかスイッチOTCだとか色々言っているけど、こういう基本的なところを優先して見直してもいいんじゃないかな。

よろしければみなさん、ドラッグストアの店頭で薬剤師に質問してみてください。「どうして、市販薬はリン酸コデイン使ってるんですか」って。そして教えてください。ぼく知りたいです。

 

 

※1「OTC医薬品販売のエッセンス」など

※2詳しく解説↓

http://www.jpma.or.jp/information/evaluation/publishing_center/pdf/007.pdf