一般紙が報じない、市販薬の成分「リゾチーム」が静かに滅びる件

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実は効き目がなかった!?市販薬成分

世の中、不思議なことがある。

いままでフツーに飲んできた薬が、国から「こんな成分、イラネ、認メネ」と言われて、使用・販売中止となる。うそのようなまことの話。

市販の風邪薬などに使われてきた「リゾチーム」という消炎成分をご存じだろうか。鼻と咳の症状に効く言われてきた成分で、病院でも風邪の患者に「ノイチーム」の製品名で昔からよく処方されてきた。

ところが、昨年末から、厚労省から使用中止の発表が連続して出た。

 

風邪、鼻炎、咳止めに広く使われていたのに・・・

昨年12月に、市販の鼻炎薬でリゾチームを使っている商品は速やかにリゾチームを成分から削除すること、そして今後はリゾチームを使わないことを国が決めた(※1)。今月には、市販の風邪薬と咳止め薬も、同じく、リゾチームを使えないし今後も使えないことが決まった(※2)。

医療用のリゾチームも、鼻(慢性副鼻腔炎)と咳(喘息など)に使えなくなった。

製薬メーカーは発売中止し、自主回収に走った。

医療従事者以外で、自主回収・発売中止の事実を知っている人は少ないだろう。今月、大手紙はなぜかほとんど報道していない。先日、朝日・読売・毎日の3紙のウェブサイトで「リゾチーム」の記事を検索すると、毎日新聞の小さな自主回収の記事しかヒットしなかった。なんでだろう?市販薬にもバンバン使われていたし、病院でもガンガン処方されていた薬(保険医療なので公金です)だ。不思議に思わない方がおかしいわ。

 

十分な科学的根拠がないので、フェードアウト!

リゾチームとは「消炎酵素剤」と呼ばれる薬だ。鼻と咳の症状に効くとされてきた。医療用としては50年以上も前に登場した歴史のある成分だ(※3)。

ところが、近年、この薬がに「実は効かないんじゃない?」 という疑問の声があり、国が製薬メーカーに「本当に効くことを示す科学データを示しなさい」と要求。メーカーは国が納得するような科学的な証明を示すことができなかった。

なんとまあ。 医療関係者一同、いままで散々、病院で処方されてきたのはなんだったの?とずっこける結果となった。まあ、リゾチームって効かないだろ!と考えていた医者と薬剤師はたくさんいたと思うけど。

ちなみに、リゾチームは目薬にも使われていて、こちらは検討対象外になっているので続行されている。

 

リゾチームを含む市販薬は・・・

リゾチームが含まれる市販薬にはこんなのがある。

鼻炎薬

【指定第2類医薬品】コンタック600プラス 40カプセル

【指定第2類医薬品】コンタック600プラス 40カプセル

 

  咳止め薬

【指定第2類医薬品】アネトンせき止めZ錠 48錠

【指定第2類医薬品】アネトンせき止めZ錠 48錠

 

かつては、風邪薬のルルやパブロンにもリゾチームは使われていたが、昨年の7月ころに、商品がリニューアルしてリゾチームの名前は成分表から消えた。リゾチームが鼻や咳に使えなくなることは、医療業界では数年前から噂されてたことなので、それを見越してリニューアルと思われる(※4)。ぼくはメーカーじゃないので本当のところはわからないけど。

あ、リゾチーム入り目薬は販売続行です。

【第2類医薬品】スマイル40メディクリア 15mL

【第2類医薬品】スマイル40メディクリア 15mL

 

 

なぜこういうことが起きるの?

というわけで、リゾチームという医薬品業界の恐竜は、一部の例外を除き滅びることになった。

科学的に効くとされてきた薬が、実は(ほとんど)効かなかった。医療従事者以外には理解しにくいことだと思う。

一度は国が「効果あり」とした薬の成分が、何十年後かに「やっぱり(あまり)効かないね」となることは、医療の世界にはままある。今回のリゾチームがそうだし、かつては脳循環代謝改善薬「アバン」「カラン」という処方薬もあった。こちらはバカ売れした末に、「効果なし」となり、医療業界からフェードアウトしたらしい。ぼくはリアルタイムではないのであまり知らないけど、 なにそれってかんじだ。

なんでこういうことが起きるのだろうか?

「一つは、医学が進歩したことがあります。薬ができた当時は有用だったものも、現代では代替の治療ができて、有用性が相対的に低くなることがある。ただ・・・もう一つの理由としては、やっぱり、(国が承認する)データが甘かったというものあるんですね」

とは、かつて厚労省で薬の審査に携わった臨床統計家の意見だ(※5)。

 

 

 

※1http://www.pref.tokushima.jp/docs/2015100500167/files/T151214I0030.pdf

※2http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T160328I0080.pdf

※3「ノイチーム」のIFには開発の経緯として「リゾチームは、1922年にペニシリンの発見者A. フレミングにより発見された溶菌作用を有する酵素である。1959 年より3回にわたるリゾチームの国際シンポジウムがイタリアのSPA社によって開催され、リゾ チームはあらゆる分野における治療薬の可能性を持つことが、数多くの報告から示唆され、消化酵素、 蛋白分解酵素に次ぐ「第3の酵素」として開発に着手した。リゾチームはその名の示す如く、溶菌(lyso‒)、酵素(‒zyme)であり、蛋白分解酵素にない、溶菌作用、白血球の食菌能増強作用を有している。また、リゾチームはヒトや動物の鼻汁、涙液、白血球などにもともと含まれているもので、その生体内における分布から考えて最も関連が深いと思われる粘 膜の炎症に的を絞り、耳鼻咽喉科の慢性副鼻腔炎から開発を着手し、1964年10月にノイチーム錠10mgが承認され、販売を開始した。」とある。

※4ルルはコレ。

【新製品】「新ルルAゴールドs」発売‐既存品の処方をリニューアル 第一三共ヘルスケア : 薬事日報ウェブサイト パブロンについてはリリースがないが、ウェブ検索すると、7月ごろにリニューアルした記事がいくつかでてくる。パブロンSゴールドWのこととか。

http://vdijmeu.blog61.fc2.com/blog-entry-1145.html

※5数年前に、ある医薬品商品審査の勉強会で、ぼくが質問した際に、その方がそう答えられた