読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「薬局新聞」創刊70周年企画で、「業界メディア」をテーマに鼎談

f:id:kuriedits:20160402115906p:plain

業界メディアがおもしろい

みなさん、業界紙とか専門誌といった、いゆゆる”業界メディア”って読んだことありますか?

むかし、みのもんたさんが「朝ズバッ!」という番組で、「私は業界紙が大好き」といいながら業界紙の記事を紹介するコーナーがありました。業界紙(業界雑誌)にはマニアックなネタがたくさんあって、その業界の雰囲気もよく伝わってくるので、一般の人が読んでもおもしろいのです。

 

「月刊住職」「月刊狩猟界」のマニアック

ぼくが過去に最も驚いたマニアック雑誌は、お坊さんのための実務情報誌「月刊住職」と、獣の狩り方などが書かれた狩猟情報誌「月刊狩猟界」です。

月刊住職は時々全国紙の一面に広告を出しているのでご存じの方もいると思います。以前、ライターの鷺ノ宮やよいさんが、うまーく紹介した記事を書かれていました。笑いすぎて腹筋が壊れないようにご注意ください。鷺ノ宮さん、こういうのうまいっ。

youpouch.com

「月刊狩猟界」は、ぼくが和歌山で知り合った狩猟が趣味のおじさんの家に、夫婦で泊まらせていただいたときに、たまたま見つけた雑誌です。ケモノの捕まえ方とか、猟銃の情報が書かれてた記憶があります。あとにもさきにも、この雑誌の現物を見たのはこの時だけ。その後、休刊しちゃったみたいです。

huntingfactory.blog112.fc2.com

一時期だけ「けもの道」という名前で復活していたみたいですが、今年の3月で再び休刊してました。

www.kemonomichi.com

 

薬局新聞で薬剤師の鼎談

前置きが長くなりましたが、このたびぼくは「薬局新聞」という業界紙の70周年企画に、お声掛けいただき参加しました。

70年!すごいですね。近年続々と新興メディアが登場していますけど、70年後も生き残っているが果たしていくつあるのか。すごいことです。

熊谷信さん、高橋秀和さんというお二人の薬剤師さんと、ツイッター上で鼎談し、その内容を主催者の熊谷さんにまとめていただきました。

熊谷さんは複数の薬剤師向けメディアで連載を持っている方、高橋さんはBLOGOSという一般向けメディアに寄稿されている方です。

で、できた記事がこちら。思ったよりもずっと紙面をとっていただき、ありがたかったです。

blog.kumagaip.jp

 

鼎談は、薬局新聞のような業界メディアに何を期待するかというテーマで語り合いました。鼎談といっても、熊谷さんはコーディネータ的な立場なので、紙面ではあまり発言はされていませんけど、実際は3倍くらいのコメントが飛び交いました。

そもそもの話ですが、休刊した狩猟界のように、昔からの紙のメディアはいま経営的に厳しい状況にあります。そこで、「業界メディアに期待すること」というテーマが出てくるわけです。

これについて、紙幅の都合で紙面に載らなかった、ぼくの意見を書きたいと思います。

 

旧来の紙メディア受難の時代だが、新興メディアも苦戦している。この状況について。

国内のメディアはマネタイズ(収益化)の方法は手探り状態にあります。これは日本に限らず海外も同じ状況です。たとえば、Michael Wolffさんという著名なジャーナリストが、先日、U.S.A.today に「紙は死んだ。だが、デジタルもだ」というコラムを書いていました。メディア関係者はネット広告が成長し、紙媒体の広告に取って代わると信じているが、1PVあたりの広告単価は落ちており、広告収入はグーグルとフェイスブックに集中している。そのうえ、広告アドブロッカー(利用者が広告を読まないですむシステム)まで登場してきた。もう誰も広告は見ない、と。

デジタル時代にメディアはどう生き抜くのか、何を糧にするのか。誰もまだ”解”を持っていないと思います。

www.usatoday.com

 

紙メディアとデジタルメディアの生存競争について

これは「紙VSデジタル(新聞VSネット)」という、メディア業界で何年も語られ続けてきた議論にリンクすると思うのですが、この議論についてはもう決着がついているという印象です。結論は「『紙VSデジタル』という二項対立自体がナンセンス」です。

すでに新聞社はその多くがニュースをネット配信しており、また利用者もそれが普通であると認識しています。利用者にとっては、ニュースの配信元が新聞社であろうと、新興メディアであろうと関係なく、おもしろければいいわけです。紙VSデジタルというのは、メディア業界関係者だけが関心を寄せる内輪の議論にすぎなかった。そして、もうその段階は終わっている。これがメディア業界全体の認識だと思います。

「新聞がどう生き残っていくか」ということでいえば、おもしろい情報を発信していくしかないと思います。メディアの価値には大きく分けて2種類あると私は考えていて、ひとつは「情報そのもののおもしろさ」、もう一つは「情報の使いやすさ」です。伝統的な新聞社でいえば、前者は豊富な人材による取材網、後者は全国どこにでも定時に配達する配送網でした。ネットの出現でどこにいてもニュースを読めるようになったため、後者の比較優位性は完全に失われました。

もし、伝統的なメディアが「紙だけでやっていく」とこだわるのなら、前者の「情報そのもののおもしろさ」で他社と戦うしかありません。歴史あるメディアは、あまりネットに注力していないように思いますが、厳しい言い方をすると、それは「利用者(読者)を向いていない」ということです。利用者を大切にしない企業は生き残れません。

 

業界紙記者と取材対象者の距離感について

両者の距離感が近すぎることがあるのではないか、と感じます。取材対象との信頼関係は大切です。信頼関係があるからこそ、取れる情報もあるでしょう。でも、医療界に精通している業界紙から、歴史的なスクープがでたことがあるでしょうか?

ぐたぐたの信頼関係から取れる情報って、じつはそんなにニュースバリューがないのではないか、と私は思っています。新聞協会賞を受賞した記事や、それを書いた記者のインタビューを読んでいると、おそらく特ダネのリーク元は「組織内部にいながら『これは許せない』という義憤を感じた人」によるものだと感じます。ジャーナリズムの書籍を読んでいると、実際そうなのだと思います。そういう義憤を感じる人が、政治家や業界団体のナアナアな人に、大切な情報を打ち明けますか?

取材先に密着しているほどその業界に精通する良い記者である、というのは既存メディアにとって都合のいい”神話”だと思います。日本はとくに海外と比べて癒着がひどいといいますね。記者クラブが典型例です。

数年前に、アメリカの政治報道で衝撃的なことがありました。どこの政党が勝つかという選挙予測は、従来は政治記者・評論家がやっていました。彼らは政治家と親交が深く、見識も情報もあると世間から見られていました。ところが、ネイト・シルバーという、政治評論家でもなんでもない人が、色々なデータをもとに選挙予測をしたら、それがものすごく的中したのです。政治記者たちの予測なんてメじゃないくらい。こういうのを見ていると、「業界通でなければ優れた情報は伝えられない」なんて半分ウソじゃないか。そんな気がしませんか?

取材対象との関係構築は、手段であって目的ではありません。「そんなことは分かっている」と記者さんから怒られそうですが、でも外から見てると、そんな風に思えてしまうのです。

jp.techcrunch.com

 

こんな感じです。他にも色々話しましたが割愛。楽しかったです。対談に誘ってくださった高橋さん、それを快くOKしてくださった熊谷さん、ありがとうございました。