日本人ばかり大量消費する市販薬③痛み止め「ロキソニン」ことロキソプロフェン(後篇)

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「ロキソニン」を市販している国は?

日本でお馴染みのロキソニン(成分名「ロキソプロフェン」)は、海外では全然お馴染みじゃない。という話の続き。

drugstore.hatenablog.com

 

海外でメジャーな市販の鎮痛薬は、ロキソニンじゃなくて、イブプロフェンやアセトアミノフェンなどだ。イブプロフェンのほうは、日本では「イブ」で有名だ。

【指定第2類医薬品】イブ 36錠

【指定第2類医薬品】イブ 36錠

 

どうして日本人だけがロキソニンを使い、海外の人々はロキソニンを使わないのか、その理由をご存じだろうか?

実は、これは海外の製薬企業が、政治力と外交力を巧みに使い、世界の医薬品市場をコントロールしているせいなのだ!!

・・・といえたら面白いのだけど、残念ながら、そういう話は裏付けがないのでおいとく。

さて、前回の記事をアップした後で、小嶋慎二さんという薬剤師さんが、ロキソニンを製造している第一三共という会社が作成した資料のリンクを貼ってツイートしてくれた。ロキソニン(ロキソプロフェン)が海外で販売されていない理由が、その資料に書かれている(資料作成は2008年※1)。一部を引く。

「一般用医薬品として承認・発売されている国はない<略>海外展開をはかっている各国のライセンス先が、一般用医薬品の販売網をほとんど保有していないことなどから、一般用医薬品とする必要性やノウハウがないことによるものと考える」

これ、どうでしょう?

販売網がないから市販薬にできないというのはわかりますよ。でも、一般用医薬品とする”必要性”がないって・・・なんで?ロキソニンのウリって、鎮痛効果が高くて、効き目が速くて、副作用が少ない、いいことづくめの薬じゃなかったっけ?

 

「胃への負担が少ない」はずだったのに・・・

日本でイブプロフェン「イブ」 が発売されたのが1985年。その翌年に、ロキソニンは病院で出される処方薬として国の認可を受けることになる。

ロキソニンを開発したのは、三共(現第一三共)という国内の製薬メーカーだった。当時としては、なるべく副作用が少ない薬を作ることが目的だったようだ(※2)。

前回紹介したとおり、ロキソニンが発売した当時の医療記事でも、副作用が比較的少ないことが、この薬の特徴として挙げられている。いまもロキソニンが「胃への負担が比較的少ない」といわれるのは、そういう開発の経緯があるためだろう。

もっとも、ロキソニンが胃への負担が少ないというのは、相対的なものでしかなく、何と比較するかによる。胃への負担が少ない薬として開発されたにもかかわらず、今日の状況ではどういうわけか、ロキソニンは胃への負担があるとして病院では「ムコスタ」などの胃粘膜保護薬とセットで処方されたり、市販薬のロキソニンにも胃への負担を減らすというような商品がでている。これいかに。

 

鎮痛効果はロキソニンの方が強そう

ロキソニンは、イブプロフェンよりも新しい薬だ。新しいというだけで優れた薬のように聞こえるが、実際はどうなのだろうか。

前回触れた、第一三共が作った資料(※3)に、ロキソニンとイブプロフェンを比較したデータが幾つか紹介されている。そこには、

①解熱・鎮痛作用が強い、安全性が高いことを示すデータ

②効き目が速いことを示すデータ

③鎮痛効果が高いことを示すデータ

④消化管への副作用が少ないことを示すデータ

が示されている。ただ、①~④をひとつひとつを見ると、

①→人間ではなくねずみを使った実験なので、ほとんど参考にならない(医療従事者は通常そう考えます)

②→血中濃度から推測しているデータなので、実際に効き目の早さにどれだけ違いがあるのかは不明(個人的経験ではあまり差はないと思います)

③→多施設二重盲検比較試験という方法をとっているので、一応参考になる

④→消化管の副作用はロキソニンのほうが少ないけど、浮腫(むくみ)の副作用はイブプロフェンのほうが少ない。副作用全体の発現率でみると、両者はほとんど変わらない。

となっている。解釈は個人によって変わるが、ぼくの印象ではロキソニンとイブプロフェンは、好意的に捉えると「鎮痛効果はロキソニンのほうが高そう」とも言えるけど、ちょっと斜に構えて言うと「鎮痛効果も副作用も大きな違いはない」といったところだ(上記の③のデータはイブプロフェンは900ミリグラム/日だが、市販薬は通常450~600/日なので、そこは結果から差引く必要がある。ドラッグストアで買うならばロキソニンの方がおそらく強い。二重盲検の詳細は「臨床と研究」に掲載)。

 

とびきり優秀だから売れている、わけではなさそう

海外には、日本で市販されていない鎮痛薬がいろいろあり、ロキソニンよりも鎮痛効果が高そうな成分もある(例えばジクロフェナクの経口薬※3)。そのような国では、ロキソニンは市販薬にする必要はないのかもしれない。

安全性(副作用)については、ロキソニンとイブプロフェンで大きな差はなさそうだ(※4)。にもかかわらず、イブプロフェンはいつでもドラッグストアで購入できるのに、ロキソニンになると、薬剤師の説明・確認がなくては購入できない。これには、「薬剤師がいないとロキソニンが買えないのはおかしい」という意見と、「そもそも、イブプロフェンが薬剤師の説明なしで買えるのがおかしい」という意見がある。この議論は決着していない。

ロキソニンは特別優秀な薬といえるか、これも議論がありそうだ。

「ロキソニンはすごく効く鎮痛薬」というのは多大評価かもしれない。

「ロキソニンは危険で、他のイブなどの鎮痛薬は安全」というのは過小評価かもしれない。

どうだろう?

 

 

※1申請資料。資料には作成日の記載がないが、審査報告書に申請日が平成20年(2008年)とあるため 、資料はこの年のものと思われる

http://www.pmda.go.jp/otc/2009/O200900004/index.html

※2http://igakukai.marianna-u.ac.jp/idaishi/www/296/01kawai.pdf

※3ロキソニンSの申請資料http://www.pmda.go.jp/otc/2009/O200900004/430549000_22200APX00095000_S100_1.pdf#page=15

※4ロキソニンSの申請資料参照。イブは1回150mgだが、200mgも販売されているので、ブルフェンと同様に評価できると考えられる。ましてや現在、200mg×3が第一類から変更になる予定である。