『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

「セルフメディケーション税制」は「カウンセリングメディケーション税制」に変更したら?

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セルフメディケーション=自力で治す?

2017年1月から「セルフメディケーション税制」という新制度がスタートした。ドラッグストアで買った薬のレシートで新しい税控除が受けられる。

「セルフメディケーション」という言葉を初めて知る人も多いだろう。

「セルフ(自分)」で「メディケーション(治療)」、直訳すると、自分で治す。

ぼくはいままでこんな感じで考えていたけど、これはおかしいのではないかという気が最近している。だって、「セルフ」とか言ってるけど、市販薬にはロキソニンなど薬剤師に相談しないと買えない薬があって、自分で商品を好き勝手選んで買えない。そもそも、レジの後ろに薬が置いてあって、自分で手に取ることさえできない店も多い。

購入者にとってこんだけ不自由なのに「セルフ」?どこが?

 

「セルフ」はおかしい

そもそも、セルフとはどんな意味か。

「セルフ販売」という言葉がある。商品を棚に置いて、お客が自由に手に取って見れる商品のことだ。セルフ(自分)で選んで購入する商品を指す。

「セルフサービス」「セルフスタンド(ガソリンスタンド)」「セルフレジ」・・・セルフと名の付く言葉は、自分で、自力でなんとかする、という意味を持つ。これを「セルフメディケーション」に当てはめると、自力で治す、ということになる。

ドラッグストアで、自分で市販薬を選んで、自分で治す・・・。

 

自分で勝手に選んで買えない

ところが、実際の市販薬販売は、そんなに自由自在じゃない。まず、医薬品は、お店に資格者(薬剤師もしくは登録販売者)がいないと販売できない。資格者は、お客から薬の相談を受けた時は乗らなくてはいけない。これは法律で定められていて、すべてのドラッグストアが守らなくてはいけない絶対のルールだ。

一部の医薬品(ロキソニンなど)は、薬剤師による確認がなくては購入できない。薬剤師が不適切と判断した場合は、薬を売ってもらうこともできない。

だから、市販薬を購入=セルフメディケーションと呼ぶことが当を得ているのか、疑問に思える。

 

セルフサービスを始めたウォルグリーン

そもそも、「セルフサービス」は何を目的に作られたのか。その歴史は、あまり古くない。セルフサービスを”発明”したのは、一説によると、1916年にアメリカで「Piggly Wiggly」というスーパーを開いたクレアランス・サンダースという人物だ。彼は「高い値段の権化を殺せ」と言った。セルフサービスで人件費がかからないので、商品の値段を下げられると考えた。

彼が始めたPiggly Wigglyは、大手チェーンとは言い難く600店舗ほどしかない(2015年時点)。でも、そのアイデアはいまでは世界中に広まっていると讃えられている。

www.economist.com

書籍「世界No.1ドラッグストア『ウォルグリーン』」によると、小売業の先進国アメリカでは、1950年代にウォルグリーンがドラッグストアで初めてセルフサービスを取り入れたという。ウォルグリーンの公式サイトによれば、1953年までにアメリカ国内で最大のセルフサービスの 店になったという(ドラッグストアにおいて、という意味だろう)。

www.walgreens.com

改訂版 世界No.1のドラッグストア ウォルグリーン

改訂版 世界No.1のドラッグストア ウォルグリーン

 

 

セルフじゃなくて、カウンセリングでしょ?

セルフサービスとは、もともと消費者に低価格といった利益を与えるために作られた。だとしたら、「セルフサービス」と「セルフメディケーション」は、そもそもの出発点が異なる。セルフ販売の良し悪しは難しい議論だ。もし、すべての客がいちいち資格者に相談して薬を買っていたら、人件費がかさみ、それは商品価格に跳ね返るかもしれない。

それはいったん置いた上で、ささやかな提案をしたい。化粧品に「カウンセリング化粧品」という言葉がある。セルフメディケーションは、これをパクって「カウンセリングメディケーション」に改名したほうがいいんじゃないか。相談した上で購入する、というイメージが湧く。だって、そういう商品でしょ、薬って。

当然、「カウンセリングメディケーション税制」となる。かっこ仮。