「ノイ・ホスロールってどんな薬?」と聞かれて動悸息切れした話

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 動悸を抑えるらしい「ノイ・ホスロール」の正体は?

【第2類医薬品】ノイ・ホスロール 12包

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「ノイ・ホスロール」という、動悸を抑える薬について、

「これって、効くんですか?」

とお客から質問されて困ったことがある。この薬が効くかどうかのデータを持ち合わせていなかったからじゃない。単に、どんな薬か勉強してなかった。ううう、すいません。

箱に描かれたかわいいイルカ、イルカよ、お前は何者ですか?私の動悸がとまらない。

何者 (新潮文庫)

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4つの成分で気の高ぶりを抑えてくれる

どんな薬か。使っている生薬と、一般的な効果の説明は以下の通り。

ブクリョウ・・・鎮静作用、利尿作用

タイソウ・・・強壮作用、鎮静作用

ケイヒ・・・発汗、健胃作用

カンゾウ・・・発汗、鎮痛作用

ケイヒとカンゾウは、漢方薬でよくセットで使われる組み合わせで、のぼせを抑えるといわれている(※1)。全体として、気分の高ぶりを抑えてくれる成分で作られていることがわかる。

 

 イルカの正体は「苓桂甘棗湯」

「ノイ・ホスロール」というおしゃれネーミングの薬だが、実はこれには「苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう)」という名がある。社会保険がきかないため、病院ではあまり処方されない漢方薬だ。

その効果は「発作的に下腹部から胸につき上げてくる激しい動悸(あるいは腹痛)」などを伴う不安神経症などに用いられる。下腹部から胸につき上げる動悸って、どんな感じなのかな?

参考までに、漢方薬に詳しい柴原直利医師(富山大学和漢医薬学総合研究所)の雑誌記事(メディカル朝日)によると(※)、普段はなんともないけれど、いったん症状が起きる始めると強い発作状態になる病態に適しているという。”気”が上に逆流する”気逆”と呼ばれる状態だ。

「ブクリョウもケイヒも昇ってしまった気を引き下げる作用があり、どちらかというとこの二つが主になって働きます。タイソウとカンゾウはそれを補佐するよう働くと考えられます」

と柴原さんの解説。動悸などに悩むパニック障害の患者に対して、通常の抗不安薬と一緒に飲んでもらうこともあるという(パニック障害がこの薬で治るという意味では決してありません。ご注意を)。

興味がある人は、自己判断せず、まずは漢方に詳しい薬局やドラッグストアの薬剤師、あるいは医師に質問してほしい。

 

似た薬に「苓桂朮甘湯」+「甘麦大棗」

ところで、ノイ・ホスロール(苓桂甘棗湯)に似た薬として、病院で処方される(社会保険がきく)のは、「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅっかんとう)」という薬だ。これは、ドラッグストアでも購入できる。

【第2類医薬品】苓桂朮甘湯エキス錠N 135錠

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【第2類医薬品】「クラシエ」漢方苓桂朮甘湯エキス顆粒 45包

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苓桂朮甘湯はめまいの薬として有名だが、神経を落ち着かせる効果がある。

苓桂甘棗湯と苓桂朮甘湯は、とてもよく似ている。どちらも、ブクリョウ、ケイヒ、カンゾウが含まれていて、唯一成分で違うのは、苓桂甘棗湯は「タイソウ」を使い、苓桂朮甘湯は「ビャクジュツ」を使っていることだ。ビャクジュツには、利尿作用、強壮作用、止瀉作用があるといわれる(※1)。

前述の柴原さんによれば、病院では保険がきかない「苓桂甘棗湯」の代わりに、成分が似ている「苓桂朮甘湯」と「甘麦大棗(カンバクタイソウ)」を併せて処方する場合があるらしい。

老舗漢方薬メーカーとして有名な、小太郎漢方製薬のウェブサイトに解説があるので、興味がある人は見てほしい。

漢方薬は特殊な分野なので、薬剤師だからといって詳しいとは限らない。僕自身がそうだ。お客の質問に答えれなかった。勉強不足ですいません。

なるべく詳しい店、たとえば漢方薬局と呼ばれる店で相談するのが無難だろう。

www.kotaro.co.jp

 

※1

小太郎漢方製薬|漢方情報|漢方処方解説 > 。「漢方診療ハンドブック」p278では苓桂朮甘湯で、ケイシ(ケイヒではない)とカンゾウが使われていることについて、ケイシののぼせをとるために説明されており、書籍によりやや表現は異なる印象。

※メディカル朝日 2016年3月号「漢方 私のこだわり処方」