「医薬部外品だから効く」!?
ここ数か月、世間では牛乳石鹸やアルコール飲料のコマーシャルが炎上している。その陰で、とある栄養ドリンクのかなり珍妙なコマーシャルがしれっと存在していることをご存じだろうか。
武田コンシューマーヘルスケア(武田薬品工業の市販薬会社)が発売する「アリナミンV」だ。サラリーマン役の俳優の桐谷健太さんが、
「(アリナミンVを手に取りながら)これってエナジードリンクとなにがちがうの?医薬部外品だから効くんだ~~」
とカメラ目線で訴えるこのCM。ドラッグストアに勤める9割の薬剤師が、
「え?いまなんつった?」
と己の耳を疑い、残り1割が、
「その発想はなかったわ~」
と苦笑しているにちがいない。
ドラッグストアで扱う商品の中で、近年まれに見る突拍子もないCMである。
死亡例もでている「エナジードリンク」と比べて?
桐谷さんがいう「エナジードリンク」とは、レッドブルやモンスターエナジーなどの清涼飲料水だ。カフェインが多く入っていて、飲むとスカッとする。しかし、そのカフェインの量が原因でカフェイン中毒を引き起こすことが心配されていて、海外では死亡事例もちょこちょこ出ている。
メーカーの説明は「効果穏やか」
そんなエナジードリンクとなにがちがうの?というのがCMの桐谷さんにセリフ。アリナミンVは「医薬部外品だから効くんだ~」という。
医薬部外品とは、どのようなものなのか。
ここはアリナミンの発売元の武田薬品さん自らの口で説明していただく。
まず医薬品については・・・
予防や治療を目的とした薬で、有効成分の効果が認められています。病院で医師が処方してくれる医療用医薬品や、薬局・ドラッグストアで市販されているOTC医薬品(風邪薬、胃腸薬、鎮痛剤、点眼薬、滋養強壮剤など)をいいます。
はい、そうですね。では、医薬部外品とはなにか。どうぞ。
効果・効能の認められた有効成分が含まれていますが、人の体に対する作用が穏やかなもので、日常的な不快感の緩和を目的とする育毛剤、入浴剤などが該当します。
以上は、武田薬品のウェブページ「薬のやさしい基礎知識」から引いた。医薬部外品のどこに「効く」というイメージがあるのか・・・。
医薬部外品だから効かない
ドラッグストアで日常的に「医薬品(一般用医薬品)」に接している身としては、医薬品>医薬部外品である。むしろ「医薬部外品だから効かない」と言った方が、まだ多少しっくりくる。
たぶん、このCMはコンビニ客に向けたものなのだろう。一般的なコンビニでは、法律上の縛りで医薬品は置けない。コンビニにあるのは、エナジードリンクと医薬部外品の栄養ドリンクだ。
それでも、コンビニもドラッグストアも両方利用することが多いであろう視聴者たちに対して「医薬部外品だから効く」と語ることに、圧倒的な違和感がある。
このCMが炎上すべきだとは思わない。ただ、なんの反応も起きない社会の寛容さには少し驚く。ぼくがドラッグストアの常識にとらわれてるせいなのか、それとも・・・?