薬の広告も過ぎれば毒となる。タケダの広告がスゴいんです

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アリナミンVは医薬部外品だから効く・・・

先日、栄養ドリンク「アリナミンV」のテレビCMがおかしいと書いた。

「エナジードリンクと何が違うの?医薬部外品だから効くんだ~」と耳を疑うような、業界震撼の斬新すぎるフレーズが胸に突き刺さる。正直、この発想はなかった。いや、ふつう、考え付いてもテレビで流さないと思うけど。商品の発売元は「タケダコンシューマーヘルスケア(武田薬品工業の市販薬部門)」である。

drugstore.hatenablog.com

翌日、薬剤師の高橋秀和さんがおもしろいツイートをくれた。

高橋さんは画像も送ってくれた。週刊新潮の8月31日号の広告である。

「アリナミンAは、サプリメントじゃなくて医薬品。だから効くんですね。」

と書かれている。

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アリナミンAは医薬品である→医薬品はサプリメントよりも効く→アリナミンAは効く。という似非三段論法。最後の「だから効く」という、ふわっとした曖昧表現は秀逸というほかない。よくわかんないけど、効くんだなと後味を残してくれる。

 

サプリはだめなの?ユーグレナは効かないの?

しかし、誰もがツッコまずにはいられないだろう。

じゃあ、あなた(タケダ)のとこで売っているサプリは効かないの?と。

自身もサプリを販売しているタケダが、「サプリメントじゃなくて医薬品。だから効く」と、サプリを否定するような広告を放出することに、すがすがしいほどのご都合主義を感じる。

はっきりいって、タケダという会社への不信感がものすごい。

たとえば、タケダが販売しているミドリムシのサプリ「ユーグレナ」は、サプリメントだから効かないってことでいいのでしょうか?

shop.takeda.co.jp

ユーグレナを作った出雲充さん、タケダと組んでよかったのですか?

僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。――東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦

僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。――東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦

 

この広告に疑問に感じたのはぼくだけではない。元薬事監視員のらぶらぶさんは、「効能効果の保証」にあたるのではないかとの見方をツイートで示した。

 

アリナミンはマッサージより効く?

よそをクサして自社を持ち上げる。無邪気すぎる広告を展開するタケダの攻めの姿勢はこれだけでは終わらない。

さらに翌週、週刊新潮を見ると再びタケダの驚くべき広告が掲載されていた。「腰痛には、マッサージ?アリナミンは、神経から効く。」という文言の広告。こちらである。

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これは悪質である。はっきりいって、他の2つの広告よりも悪質だと思った。

この広告から受ける印象は、

「腰痛にはマッサージよりもアリナミンが効く」

というものだが、これにはなんの根拠もない。腰痛にアリナミンが効いた経験がある人がいることは否定しない。しかし、腰痛持ちの人で、マッサージで自覚症状がラクになったと実感している人もまた多い。

 

問題ないのか、東京都に問い合わせてみた

これらの広告に、法律的な問題はないのか。タケダコンシューマーヘルスケア(本社東京)を監視役である東京都福祉保険局薬務課に電話で問い合わせた。

まず、最初の質問。週刊新潮に掲載された市販薬アリナミンの広告は、「効能効果の保証」にあたらないのか。これについては、広告全体を見て判断することになりますとの回答。まあ、そうでしょうね。

二つ目の質問。そもそも、広告による比較行為は禁止されていないのか。役所によれば、他社製品との比較は禁止されているため、自社製品と比較するにとどめるのが通例。また、禁止と言ってもこれは「医薬品等適正広告基準」というルールで定められているもので、違反したからといって指導されるだけで罰則はないという。

「医薬品等適正広告基準」

http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/koukokukisei/dl/index_c.pdf

 

不適切かどうかはヒ・ミ・ツ

せっかくなので、対応してくれた役所の担当者に、当該の広告の写真をメールを送ることにした。

ただ、残念なことに、仮に役所が広告を不適切と判断し、タケダを指導したとしても、その結果はぼくには教えてくれない。指導するか(したか)どうかは秘密である。広告が不適切か適切かの結果も秘密である。いずれも企業の不利益情報にあたるからだ。役所は不利益情報を第三者に伝えることができない。

企業はこっそり叱られるわけだ。これもおかしいといえばおかしい。最近は厚労省でも「ブラック企業リスト」的な資料を出して、企業名を実名公表しているのだから、いまさらなにを遠慮しているの。

 

炎上しないのが不思議な案件

タケダは大企業である。おそらく先述の広告表現にはいずれも法的問題はないと社内で判断して出稿したのだろう。グレーだから大丈夫だと。

ぼくは、企業の性格というのは、グレーを攻める時の姿勢でわかると思っている。

自らサプリメントを販売しながら、「サプリメントじゃなくて医薬品だから効く」と堂々と主張する会社である。このご時世、炎上しないのが不思議である。世間は市販薬に甘い。薬も過ぎれば毒になるという諺があるじゃないですか。広告もしかりと言いたい。

 

参考情報

過去の不適切な広告例を紹介する。

医薬品医療機器等法に関わる不適表示・広告事例集 東京都福祉保健局