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週刊新潮「『漢方』の大嘘」を誤読してはいけない

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漢方は副作用だらけで危険!?

「『漢方』の大嘘」という特集が、週刊新潮9月14日号と21日号で組まれたわけだが、これが大変刺激的な内容になっている。漢方薬の副作用で入院、転倒、肝障害、死亡など、恐ろしいパワーワードが続々と登場する。ツムラの漢方薬が写真入りで紹介されてて、あらやだ私もこの漢方薬飲んだことあるわ!と息を飲むこと間違いなし。

記事の監修者は、学会や論文で発表された漢方の副作用例1300編を分析した「漢方薬副作用百科」の著者の内藤裕史さん。中毒学が専門の医師だ。

漢方薬副作用百科―事例・解説・対策・提言

漢方薬副作用百科―事例・解説・対策・提言

 

ぼく自身、読んでちょっと恐くなった。「漢方薬が危ないって記事を読んだんですけど、…」と医師か薬剤師に質問して「副作用のない薬なんてないですよ。ほとんどの人は大丈夫です(以上、ニッコリ)」などとお茶を濁された日には、こいつは知識もなければ調べる気もないんだなと心の中で思わずにはいられない。そんな医療従事者がいないことを祈りたい(すごく忙しい時には、思わず言ってしまうかもしれませんけどね)。

 

黄芩・山梔子・黄連・黄柏・甘草がヤバイ?

まずは記事のさわりを紹介する。記事中で取り上げられた主な生薬成分と、それを含む漢方薬は次の通り(※1)。

・黄芩(オウゴン:シソ科のコガネバナの黄色い根を乾燥させたもの)は、間質性肺炎や肝機能障害の副作用がある。黄芩を含む漢方薬は、小柴胡湯、大柴胡湯、乙字湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、荊芥連翹湯、防風通聖散。

・山梔子(サンシシ)は中毒症状として腸間膜静脈硬化症という大腸の病気を招く。山梔子を含む漢方薬は黄連解毒湯。

・黄連解毒湯に含まれる黄連(オウレン)と黄柏(オウバク)は、2010年に米国立環境衛生科学研究所が黄連・黄柏の主成分であるベルベリンとパルマチンに発がん性があると指摘。3年後には米食品医薬品局(FDA)付属の国立毒性研究センターがベルベリンががんを発生させると発表。2015年にはWHOの外郭団体、国際がん研究機関がベルベリンを含むヒドラスチス根を「発がん物質グループ2B」に分類すると発表(※2)。6年前にはベルベリンが哺乳動物の受精卵整腸を抑制するという研究結果も出ている。黄連・黄柏を含む漢方薬は荊芥連翹湯、黄連解毒湯、温清飲。

・加味逍遥散の成分の牡丹皮(ボタンピ)には流早産を促す危険性がある。

・甘草(カンゾウ)は偽アルドステロン症の副作用がある。含まれる漢方薬は抑肝散、芍薬甘草湯。

・当帰芍薬散に含まれる当帰(トウキ)には、子宮組織の増殖促進作用がある。

・半夏(ハンゲ)や人参(ニンジン)にも注意。

・葛根湯に含まれる麻黄(マオウ)の成分エフェドリンには覚醒作用がある。

 

「漢方薬は飲むな」とは書いてない

ショッキングな内容。でも、待って。この記事を読んで漢方薬を飲まなくなる人は、おっちょこちょいか、思い込みが強すぎて健康を害するタイプかもしれない。

記事は漢方薬をケチョンケチョンにしているが、その実、漢方薬を否定しているわけではない。文章中のどこを探しても「漢方薬を飲むな」とは書いてない。

代わりに、漢方薬の知識のない医師が漢方薬を漫然と患者に与えることが問題だとしている。これが記事の主眼であり、その主張は概ね正論だとぼくは思う。

 

漢方の副作用にも対処法あり

ようは大事なのは、「飲むか」「飲まないか」という二者択一ではなく、「どのように飲むか」なのだ。

漢方薬を飲み始めて、なにか体調に思わしくない変化があればすぐに医師か薬剤師に伝えることが原則だ。

複数の副作用報告から、漢方薬の副作用の傾向がわかっている。対処法もある。たとえば、記事で紹介された山梔子による副作用「腸間膜静脈硬化症」は、副作用が起きた患者の服用期間を調べると、服用期間が5年以上という長期にわたる患者が90%以上だったというデータがある。初期症状は原因不明の腹痛(特に右側)、下痢、腹部膨満、便潜血陽性(無症状)などが初期症状であり、その場合には即受診し、すぐに服用を中止すれば、多くのケースで自覚症状は回復するとされる。

http://www.nikkankyo.org/qa/take_kampo/160201/m_phlebosclerosis.pdf

 

雑誌のお薬特集で疑問に思ったことは薬剤師に聞いてね

こうした副作用の傾向は、全ての医師・薬剤師が質問されて即答できるわけではないけれど、聞けばちゃんと調べてくれる。ググれば素人でもわかる、というものではない。ネットや書籍の情報を集めて、専門家の目で情報を妥当性を判断した上で伝えてくれる。そのための専門家だ。

記事の漢方薬は、ドラッグストアやネットでも購入できる。気になった人はぜひ、店頭の薬剤師に訊ねたり、メールで質問を送るといい。たぶん、快く応じてくれるはずだ。薬剤師はこういう(副作用)ネタが好きな人種だから。 

ちなみに、週刊新潮の記事を監修した内藤さんの主張をもう少し詳しく知りたい人はこちらをどうぞ↓

http://www.japic.or.jp/service/whats_new/japicnews/pdf/JAPICNEWS16-02.pdf

 

補足。冒頭の4コマ漫画は、薬剤師のるるーしゅさんから昨夜5万円で購入した情報商材を使って描いた。というのは嘘で、作り方を教えてもらった(※3)。るるさん、ありがとう。

pharmacymanga.blog.fc2.com

 

参考情報

※1各生薬成分を含む漢方薬は他にもあるが、ここでは記事で紹介された漢方薬のみ記す

※2 クラス2Bは、動物実験で発がん性が認められており人でも可能性があるというもの。国際がん研究機関(IARC)の発がん性リストでは「Goldenseal root powder」で検索するとヒットする。

http://monographs.iarc.fr/ENG/Classification/

※3 http://www.comipo.com/