ドラッグストアとジャーナリズム

自分に合った市販薬を選びませんか?

後続なしで唯一の存在になりそうな風邪薬「PL顆粒」

「パイロンPL顆粒」という風邪薬が今年8月に発売した。この名前にピンと来た人もいるだろう。そう、風邪で病院にかかった時によく処方される薬といえば「PL配合顆粒」。その市販薬版の登場だ。

医療用の「PL配合顆粒」との違いは薬効成分の量だ。医療用薬も市販薬も使われている成分は同じだけれども、市販薬の1回分は医療用の成分の80%になっている。成分が量が少ない。

市販薬のPL顆粒の、他の風邪薬にはない特徴を紹介していく。

 

パイロンPL顆粒の特徴①プロメタジンが入ってる

パイロンPL顆粒には、従来の風邪薬にはない成分「プロメタジンメチレンジサリチル酸塩」(以下プロメタジン)が使われている。プロメタジンを使った市販薬は、探せばあるかもしれないけど、ぼくは見たことがない。かなり珍しい。鼻水・鼻づまりを抑える抗ヒスタミンと呼ばれる成分で、その中でも古くからある「第一世代」と呼ばれる抗ヒスタミン成分に当たる(※1)。

プロメタジンの特長を書くことは、なかなか悩ましい。Pubmedという論文検索を使っても、これといったデータを見つけることができなかった。しいて個人的な印象でいえば、鼻症状を抑えるだけでなく、吐き気を和らげる効果があるかもしれないことと、寝る前に飲めば他の風邪薬よりも多少眠りやすいかもしれないことだろうか。プロメタジンは別の領域では鎮静薬として使われている。

参考情報として、60年も前に行った動物実験では、同じ第一世代抗ヒスタミン薬の「ジフェンヒドラミン」よりも抗ヒスタミン作用と制吐作用が強いとしている(※2)。ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン成分の中では比較的眠気が強い方とされている。他の多くの風邪薬は「クロルフェニラミン」という抗ヒスタミン薬を使っているわけだが、こうしたことを総合的に見ると、PL顆粒はを他の多くの風邪薬よりも眠気がでやすいかもしれない。眠気が出てほしくない人は避けた方がいい。

 

パイロンPL顆粒の特徴②咳止め成分が入ってない

もう一つの特長は咳止め成分が入っていないこと。パイロンPL顆粒は、多くの市販の風邪薬で使われているメチルエフェドリンやジヒドロコデインなどの咳止め成分が入っていない。そこでPL顆粒とは別の咳止め専用薬を併せて飲みたいところだが、残念ながらそれができない。ほとんどの咳止め専用薬には抗ヒスタミン成分が入っており、PL顆粒に含まれるプロメタジンと薬効が重複するので一緒に飲むことができないのだ。

咳止め成分を取りたくない人には、使い勝手のいい薬といえるかもしれない。

 

鎮痛成分はACEの組み合わせ

PL顆粒に含まれる鎮痛成分は「アセトアミノフェン」と、サリチル酸系の「サリチルアミド」。これにカフェインを加えると、市販薬メーカーが「ACE処方」と呼んでいる組み合わせに近くなるのだが(ACE処方はサリチルアミドではなく同じサリチル酸系のエテンザミド)、これが他の鎮痛薬と比べて鎮痛効果が高いという論文はぼくはみたことがないのでなんともいえない(論文検索Pubmedでも見当たらなかった)。ACEが効く(気がする)!という人もいるので、モノは試しにと思う方はどうぞ。

プロメタジンが鎮痛効果を増強させるともされているが、メーカーが根拠としているのは1970年代のネズミを使った実験(※3)なので、根拠としてはかなり弱い。

あと15歳未満は使えないのでご注意を。

 

どうして評判が思わしくないのか?

SNS上でツイートを見ていると、PL顆粒に対する薬剤師の評判はよくない。PL顆粒をよくないと考える人は、そもそも風邪にこうした総合感冒薬がよくないという立場の人が多いと思う。そういう意味では、風邪薬のなかでPL顆粒だけが薬剤師からの評判が悪いわけではないともいえる。

一方、どうして医者はPL顆粒を処方するのか?医師が処方するのだから、それなりの根拠があるんじゃないか?と思うかもしれない。

参考までに、ネット上で医師が解説している記事を紹介する。理由として挙げているのは、熱や頭痛や鼻水などに効く成分がひとつにまとめられているからとしている。

druginformation-clinic.com

他に考えられる理由としては、この薬はとても古いので、昔から先輩医師たちが使っていて、なんとなく無難だからという面もあるのではないかと想像する。ただ、最近では風邪に総合感冒薬は不適切であると考えてPL顆粒を処方しない医師が増えているように感じる。気のせいだろうか。

 

ドラッグストアの薬剤師にご相談を

市販薬のPL顆粒は、他の市販の風邪薬と比べて悪い薬でもないが、良いともいえない。

新発売の薬だからといって、優れているわけではないのだ。ようは、自分に合っているかどうか。試しに一度使ってみようかなという方は、是非、ドラッグストアの薬剤師に相談した上で購入を検討してほしい。

プロメタジン入りで、咳止め成分なしの風邪薬。PL顆粒のような市販薬は、今後登場しないだろう。後続品なしで、唯一無二の存在になりそうだ。

 

 参考情報

※1多くの海外の文献でfirst generationと紹介されている

※2ヒベルナ添付文書より

※3PL配合顆粒のインタビューフォームより