薬は見た目が1割よ。保湿薬「ピアソンHPクリーム」と「HPクリーム」を比較すればわかること

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ネットで知名度高い保湿の薬を比較する

先月書いた「『ヘパリン類似物質』の市販薬と上手く付き合う4つのポイント」という記事がそこそこ読まれたようなので、続きを書こうと思う。

drugstore.hatenablog.com

保湿成分のヘパリン類似物質を含む市販薬はたくさんある。「saiki」「HPクリーム」「ヘパソフト」・・・どれでも効果は同じ?ええ、そうかもしれない。でも、塗り薬って商品ごとに使用感が結構ちがいません?「HPクリーム」と「ピアソンHPクリーム」は、どちらもうちの近所の大手ドラッグではほとんど見かけないのだけど、ネット上では比較的知名度がある。実際に使用している医療従事者もいる。どっちが薬として優れているのだろうか。パッケージの見た目がカッコイイのは「HPクリーム」。もっさりダサいのは「ピアソンHPクリーム」。外見に惹かれてHPクリームを選んでよいものかしら?

値段→ピアソンが安い!

というわけで、両製品を比較していく。まず、お値段。これは前回も書いたのだけどピアソンHPクリームの方が安い。2018年1月12日現在、ケンコーコムのサイトでは、ピアソンHPクリーム(50g)が1321円、HPクリーム(60g)が1742円となっている。アマゾンではピアソンが販売されていなかった(マーケットプレイスではあり)。いままでのぼくの印象では、常にピアソンの方が安い。

使いやすいさ→HPクリームはなかなか出てこないし、匂いがある

使いやすさはどうか。HPクリームは、ピアソンHPクリームと比べるとチューブの口が小さい。だからチューブの腹を押してとクリームがなかなか出てこない。むむむ・・・。無駄遣いせずに使えて良いという意見もあろうが、ぼくは朝の忙しい時に使うときにじれったさを何度か味わった。

匂い。HPクリームはウェブサイトに「しみない、におわない、べたつかない――」と書かれている。たしかに、顔や鼻周りに塗っても臭いはない。ただ、鼻を近づけて嗅ぐと実はクサい。かなりクサい。一方のピアソンはほぼ無臭でクサくない。

ピアソンは病院処方の「ビーソフテン」と同一品。そして、製造元情報は参考程度にしかならない

製造元には注意した方が良い。シャレオツパッケージのHPクリームの発売元は「グラクソスミスクライン」という世界有数の製薬会社だ。チューブに刻まれた同社のロゴ「gsk」のセンスもいい。さすがは世界的な企業・・・といいたいところだが、パッケージをよくよくみると「製造販売元 ジャパンメディック」とある。この会社、富山県にある日本の会社である。

ピアソンHPクリームはどうか。販売元は富山県の新新薬品工業。製造販売元は、これまた富山県に本社を置く日医工という会社。医療用のジェネリック医薬品をたくさん作っている製薬企業として知名度が高い。

さて、ここで医薬品業界不思議発見。病院で処方される「ビーソフテン」という塗り薬をご存じか。ヘパリン類似物質の代表格「ヒルドイド」のジェネリック(同じ成分で値段が安い薬)である。さて、ネット上では、このビーソフテンとピアソンHPクリームは同じ製品なんじゃないか?という推測が多々ある。

結論から言うと同じである。薬効成分から添加物までまったく同じ。両製品が同一である理由に「どちらも日医工が製造元だから」を挙げる人がいるのだけれど、これはやや正確に欠ける。実際に作っているのはピアソンHPもビーソフテンも、新新薬品工業の製造ラインである(※1)。

医薬品には「製造販売元」「販売元」といった表記がある。多くの人がこれを見て、有名メーカーが作っているのだなと認識したりするのだけれど、そうでもない。製造販売と書かれていても、実際には別会社のラインで作っていることがある。それどころか、販売元とも製造元ともちがう別の会社が作っていることがある。実際の製造会社は、企業にとっては秘密事項なので公にはならない。製造販売元を見て有名企業が作っているから安心♪と思うのは早計。有名企業が冠をつけているから変なことはしていないだろうという程度が認識としては正しいのだろう。まあ、大企業の不祥事も多いのだけれど。

効果に差はあるの?よくわかんない

効果はどうか。薬効成分は共にヘパリン類似物資。濃度も同じ。添加物が異なるくらい。理屈上は、ほとんど効果に差はない。実際に顔の左半分にHPクリーム、右半分にピアソンを塗って一晩おいてみたけれど、これといった効果の差は感じられなかった。長く続ければ違いがあるのかもしれないけど、どうだろうか、あまり差はないように思う。

水っぽいHPクリーム

クリームの手触りは明らかに異なる。HPクリームはサラッとしている。使っていて快適。一方のピアソンはベタつく。両製品をティッシュペーパーの上に出して1日放置してたら、HPクリームは周囲に染みたが、ピアソンはほとんど形状を保ったままだった。水分量が多いのはHPクリームの方だろう。

せっかくなので少々専門的な話をしておくと、クリームには「油中水型」と「水中油型」の2つのタイプがある。油中水型とは油分の中に水分がある状態、水中油型とは水分の中に油分がある状態だ。市販薬のクリームはほとんどが水中油型で、油中水型はあまりない。昨年発売された「メソッドWOクリーム」という新商品は、その名の通りWO(water in oil)つまり油中水型。わざわざ商品名に冠している。この油中水型は「コールドクリーム」とも呼ばれ、たとえば、女性に人気の化粧品アヴェンヌには「コールドクリームN」という商品がある。冬の時期、これがなかなかの人気商品である。

HPクリームもピアソンHPクリームも水中油型である(※2)。ただ、油分が多いのはピアソンだろう。一般論として、油分の多い方が皮膚を保護する作用が強い。薬効成分の皮膚への移行に関しては、油中水型のほうが移行しにくいとされるが、成分の移行性は複数の要因があり個別に検討されるべきものである。残念ながらぼくは十分な情報を持ち合わせていないので、ここでは移行性には触れないことにする。

ピアソンのほうがねっとりする。だから、皮膚保護作用が相対的に高いように思う。そのねっとり感がいやだとする評価もある。人それぞれである。

塗るときはチューブの口の大きさに注意

ついでなので、塗り方も紹介する。塗る量を計るのに便利なのが「1FTU(one finger tip unit)」という方法だ。成人の人差し指の先から最初の関節までを「1FTU」と呼び、これがクリームの場合約0.5gに相当する。ローションなら、手のひらに出した1円玉の大きさが1FTU(0.5g)。瓶なら、人差し指の先から最初の関節までの半分が1FTU(0.5g)。1FTUで成人の手のひら2つ分の面積を塗るのが適量と考えられている。わかりやすいでしょ?

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1FTUは1991年の海外の論文で提唱された、今日ではもっともポピュラーな測り方だ。論文は軟膏について論じているが、クリームにも適用できるとされる(※3)。ただし、注意点がある。実は1FTUはチューブの穴が5ミリの容器を前提にしているのだ。穴の大きさが異なれば、チューブから出る量も異なってくる。ピアソンHPクリームのチューブの穴はほぼ5ミリである。一方のHPクリームは2ミリ。HPクリームでは2倍の長さをチューブから押し出して使うのが目安といえる(※4)。個人的には、1FTUを守らなくても、さほど効果に差はでないように思っているのだけれど(根拠なし)、まあ一つの目安として覚えていて損はないだろう。

ちなみに優等生的な塗り方としては、一か所から塗り始めると塗布量に偏りがでるので、何か所かポンポンとクリームを置いてから、皮膚のしわに沿って塗り込むとよいとされる(※5)。

結論。薬は見た目が1割。だから薬剤師に聞いてほしい

価格、効果、使いやすさ、これらを総合すると、ぼくはピアソンHPクリームの方が優れてた商品だと思った。また購入するなら断然、ピアソンですね。少なくとも、パッケージデザインは無視してよろしい。見た目じゃわからない。だからこそ、気になった薬は店頭で薬剤師や登録販売者に「これらは何がちがうんですか?」と聞いてほしい。某演出家によれば「人は見た目が9割」らしいが、薬は見た目が1割なのである。

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 参考情報

※1某メーカーから聞いた話として。なお、添付文書にも複数の表記パターンがある。2014年に製造販売権に関するニュースリリースを出している。関係者の話では製造ラインは変わっていない。http://www.mochida.co.jp/dis/housou/img/bsf2610.pdf

※2ピアソンはビーソフテンと同一であり、ビーソフテンの添付文書に水中油型とある。HPクリームは明記はないが、常識的に考えれば使用感からして水中油型である。

※3「皮膚外用剤Q&A」の記載より。論文のフルテキストは有料で未確認である。

※4「皮膚外用剤Q&A」によれば、ネリゾナユニバーサルクリームは内径1.8ミリで1FTUが0.24gであることを参考に、ほぼ2倍と考えられる。

※5マルホのヒルドイドの塗り方のサイトより。