奇怪なことですが、民間の市場調査によると2017年10月~12月の期間に一番売れた風邪薬は「小児用リココデS液」だったそうです(※1)。なにその薬、知らないってかんじですよね?テレビCMでも見たことがないと思います。無名の小児薬が一番売れた薬なんて、とても不思議ですよね。でも、薬剤師ならその理由にすぐ気付くことでしょう。
無名の子供用の風邪薬が1位になったのは、「子供用のドリンクの風邪薬を一気飲みすると効く」とかつて言われていたことの名残だと思います。薬剤師も、そのようにお客に勧めていた時代があったようです。でも、いまはちがいます。全くお勧めできません。
小児用のリココデS液(※2)を一気飲みしたところで、摂取できる薬効成分(解熱鎮痛成分や咳止め成分など)はルルやパブロンと比べてわずかに多くなる程度です。むしろ、通常の風邪薬の中でも「コルゲンコーワIBTXα」や「パブロンエースPro」など近年発売した風邪薬は古い薬よりも成分がも充実しており(※3)、症状緩和にはより高い効果が得られる可能性があります(これはこれで不確かなのですけどね)。
そしてこれが重要なところですが、もし大人が子供用の風邪ドリンクを一気飲みして副作用が起きた場合、「適切な薬の服用をしなかった」という理由で国の副作用救済制度というものが利用できないと思われます。これは大きなリスクです。
というわけで、小児用風邪薬を大人が飲むことは全くお勧めできません。
子供の風邪薬が一番売れているというのは、消費者の市販薬の購買行動に薬の専門家である薬剤師が介入していない証拠であり、日本の市販薬市場のおかしさを物語っているように思います。

【指定第2類医薬品】パブロンエースPro錠 36錠 ※セルフメディケーション税制対象商品
- 出版社/メーカー: 大正製薬
- 発売日: 2017/09/11
- メディア: ヘルスケア&ケア用品
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参考情報
※1 True Dataが保有する全国のドラッグストア、スーパーマーケットで購入する、約5,000万人の消費者購買情報を分析・統計化して2017年10月~12月までの市販のかぜ薬の購入個数ランキングを発表。
※2 小児用リココデS1本分の成分は右記の通り。アセトアミノフェン/314mg ジヒドロコデインリン酸塩/10mg dl-メチルエフェドリン塩酸塩/21mg クロルフェニラミンマレイン酸塩/4mg カフェイン水和物/40mg リボフラビンリン酸エステルナトリウム(ビタミンB2)/1.5mg。
※3 イブプロフェン200mgだったり、トラネキサム酸が入っていたりするため。