ドラッグストアとジャーナリズム

自分に合った市販薬を選びませんか?

もし花粉症苦悶者が新しい鼻スプレーの治療法を薬剤師に聞いたら

今日は花粉症薬のやや専門的な話を書きます。花粉症薬の新しい使い方です。未知な部分が比較的多いので積極的にはお勧めしません。しかし、薬局・ドラッグストアの薬剤師に相談するのはアリです。薬剤師に相談すると市販薬の活用の幅が広がるかもしれないことがわかっていただけると思います。

一昨日、薬剤師のるるーしゅさんという方から「ザジテン点鼻とステロイドの点鼻の併用がいいのかなと思います」というツイートをいただきました。あ、点鼻というのは、鼻スプレーのことだと思ってください。

ザジテンというのは、アレグラやアレジオンと同じ「抗ヒスタミン薬」と呼ばれる薬の一つです。飲み薬と点鼻薬と目薬があります。このザジテンの点鼻薬と、ステロイドの点鼻薬を一緒に使うとさらに効果的だという話があるのです。

【第2類医薬品】ザジテンAL鼻炎スプレーα 12mL ※セルフメディケーション税制対象商品

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  • 出版社/メーカー: グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン
  • 発売日: 2016/06/13
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その根拠となる「アメリカのガイドライン」というのは、AAAIという学会から発表された「Treatment of seasonal allergic rhinitis An evidence-based focused 2017 guideline update」という2017年のガイドラインです(るるーしゅさんが教えてくれました)。

https://www.aaaai.org/Aaaai/media/MediaLibrary/PDF%20Documents/Practice%20and%20Parameters/2017-Rhinitis-Guideline-Updates.pdf

著者によればガイドラインには次の3つのポイントがあります(※1)。

①初期の治療では、ステロイド点鼻薬と抗ヒスタミン薬(飲み薬)との併用よりも、ステロイドの点鼻薬を単独で使用をしたほうがいい

②初期の治療では、ロイコトリエン受容体拮抗薬よりも、ステロイド点鼻薬のほうがオススメ

③中等度から重度での初期の治療では、ステロイド点鼻薬と抗ヒスタミン点鼻薬の併用がよさげ

acaai.org

今回注目したいのはポイント③です。ステロイド点鼻薬と抗ヒスタミン点鼻薬を一緒に使うとステロイド点鼻薬を単独で使うよりも高い効果が期待できそうというのです。

アメリカでは、この2成分を1つの点鼻薬にまとめた「DYMISTA(フルチカゾンとアゼラスチンの合剤)」が、2012年に病院の薬として承認されています。

www.dymista.com

DYMISTAを含めた国内外の薬の成分・使用法をもう少し調べてみました。

★DYMISTA

成分:「azelastine hydrochloride」+「fluticasone propionate」

使用量:1噴霧中に含まれる成分量はazelastine hydrochloride137mcg+fluticasone propionate50mcg

使用方法:左右の鼻に1回ずつ噴霧、1日2回

まとめ:fluticasone propionateとして合計200mcg摂取することになる

★FLONASE(現在は市販薬のみ)

成分:fluticasone propionate

使用量:1噴霧中に含まれる成分量はfluticasone propionate50mcg

使用方法:左右の鼻に1回ずつ噴霧、1日2回

まとめ:fluticasone propionateとして合計200mcg摂取することになる

★日本のフルチカゾンの病院薬(日医工や東和のジェネリック※2)

成分:フルチカゾンプロピオン酸エステル

使用量:1噴霧中に含まれる成分はフルチカゾンプロピオン酸エステルとして50mcg

使用方法:左右の鼻に1回ずつ噴霧、1日2回、最大8噴霧

まとめ:フルチカゾンプロピオン酸エステルとして合計200mcg摂取。最大400mcg摂取

 

細かい話になりますが、先述のガイドラインに示されている根拠となる5つの研究のうち4つが「fluticasone propionate aqueous nasal spray, 200 mg/d, vs fluticasone propionate aqueous nasal spray, 200 mg/d, plus azelastine, 548 mg」です。ようするに、FLONASEとDYMISTAを比較したということです。そしたら、DYMISTAのほうが優れていたわけです。日本にもフルチカゾンの薬はたくさんあります。でも、DYMISTAのように抗ヒスタミン薬と組み合わせた薬はまだ存在しません。

そんな日本にはなじみの薄い使用法ですが、実は日本の市販薬を使ってDYMISTAと似た組み合わせができます。ステロイド点鼻薬の「ナザールαAR0.1%(ベクロメタゾン)」と、抗ヒスタミン点鼻薬の「ザジテンAL鼻炎スプレー(ケトチフェン)」を一緒に使うのです。両製品は成分がそれぞれ異なるので、(添付文書で)同時使用は禁止されていません。

ただし、実際に市販薬で2本併用をやっている人はほとんどいないでしょう。そもそも、病院でさえステロイド点鼻薬と抗ヒスタミン点鼻薬を一緒に処方する医師がどれだけいるのか。アメリカで使われているから大丈夫じゃないかと思われるかもしれませんが、日本人と欧米人では体のつくりが異なるのでそのまま当てはめることは危険です。「海外ではよく使われているから」といって日本でなじみのない薬を自己流で使う人が時々います。そういう方は自己責任であることは重々承知されているとは思うのですが、それでもやはり一度薬剤師に相談することをお勧めします。薬剤師は効果や安全性を調べる方法を知っているからです。

2種類の点鼻薬を使う二刀流は市販薬における究極奥義です。自己判断で試す事は全くお勧めしません。安全性、効果に興味がある方は薬剤師にご相談ください。色々教えてくれると思います。

なお、冒頭のツイートに対する私の回答はコチラです。

将来は「二点鼻 一流」が一般的になるかもしれません。

 

参考情報

※1initial treatmentを初期療法と訳しているメディアもありましたが、季節前服用も指すことに個人的に違和感がありましたのでここでは「初期治療」と訳しました

※2フルチカゾンの代表薬であるアラミストはカルボン酸のためDYMISTAと比較しにくい。そのためここではプロピオン酸のフルチカゾンを取り上げました