『家庭の薬学』

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「トリクロカルバン」抜き!新しくなったピロエース石鹸はここが違う

体や汗の匂いお防ぐ「ピロエース石鹸」が2018年3月にリニューアルされました。ピロユーザー以外は気付いてないでしょうが、実はピロエース石鹸は昨年8月から出荷停止されていました。半年以上も供給が停止されるというのは、ちょっと異常事態ですよね?

第一三共ヘルスケア ピロエース石鹸 70g 【医薬部外品】

第一三共ヘルスケア ピロエース石鹸 70g 【医薬部外品】

 

ピロエース石鹸がリニューアルされたのは、いままで使っていた殺菌成分に問題が起きたためです。従来品には「トリクロカルバン」という殺菌成分が使われていました。しかし、2016年9月にアメリカのFDA(日本の厚生労働省みたいな役所です)が、トリクロカルバンを含む19の殺菌成分を販売を1年以内に停止することを発表。これを受けて日本の厚労省も、9月30日付で次のプレスリリースを発表し、メーカー各社に日本国内の流通品の見直しを求めました。

米国での措置を踏まえ、日本化粧品工業連合会及び日本石鹸洗剤工業会は、これらの成分を含有する薬用石けんに関し、これらの成分を含有しない製品への切替えに取り組むよう会員会社に要請しました。これを受けて、厚生労働省としても、この切替えの取組みを促すため、別添のとおり、製造販売業者に対して、流通する製品の把握と、製品を1年以内に代替製品に切替えるための承認申請を求めるとともに、その際の承認審査を迅速に行うことを通知しました。

トリクロサン等を含む薬用石けんの切替えを促します |報道発表資料|厚生労働省

FDAが言うには、規制の対象となったトリクロカルバンを含めた殺菌成分は、長期的に使った場合に安全であるとも、通常の石鹸と比べて病気を防ぐともいえないそうです。ようするにあえて使う理由が見当たらないってことです。ははは。

Companies will no longer be able to market antibacterial washes with these ingredients because manufacturers did not demonstrate that the ingredients are both safe for long-term daily use and more effective than plain soap and water in preventing illness and the spread of certain infections. Some manufacturers have already started removing these ingredients from their products.

FDA issues final rule on safety and effectiveness of antibacterial soaps

リニューアルしたピロエース石鹸の有効成分は以下の通りです。

従来品:トリクロカルバン、クレゾール、ジフェンヒドラミンHCl

リニューアル品:イソプロピルメチルフェノール、ジフェンヒドラミンHCl

主な変更点としてはまず、トリクロカルバンに代わってイソプロピルメチルフェノールが加わったことです。

イソプロピルメチルフェノールはニキビの市販薬などに使われているメジャーな殺菌成分です。トリクロカルバンと比較すると、どうなのでしょうか。文献をリサーチしましたがうまくひっかかりませんでした。

ただ、歯周病ケアの分野ではイソプロピルメチルフェノールは効果的な殺菌作用として認識されているようで、特にトリクロサン(トリクロカルバンの仲間みたいなものです)よりも、バイオフィルム(菌の防御膜)を作った菌を殺すことに優れているそうです(※1)。

手足にバイオフィルムを形成した菌ができるのかどうかは不明ですが、殺菌効果としては遜色ないのだろうというのが私の印象です。安心して使ってよいと思います。

もう一つの変更点は、従来品に有効成分として含まれていたクレゾールが、成分量を減らして「有効成分」から「その他の成分」に変わったことです。これによってクレゾール臭が少し減っています。また、清涼感のあるティーツリーオイルも新たに配合されています(※2)。

新しくなったピロエース石鹸は、大きさも値段(メーカー希望価格)も従来品と同じです。 

 

参考情報

※1歯周病の真実 | 研究トピックス | ライオン株式会社

※2https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/details/pyroace_soap/