『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

今年注目の花粉症薬「フルナーゼ」VS「AGアレルカットEX」「ナザールαAR」のマニアック10番勝負

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今年注目の「フルナーゼ」を知っていますか?

世間はコロナウイルスの話題一色ですが・・・・ちょっと待った!

花粉症だって辛いですよね?この時期、花粉症薬は手放せません。コロナウイルスで日本の医療が崩壊する前に、自分の目・鼻が崩壊します。それくらい切実。

さて、今年は要注目の新しい市販薬があります。昨年発売した「フルナーゼ」。2020年花粉症シーズンで、いっとう注目の新商品です。

なぜ注目かって、フルナーゼは今も病院で処方される花粉症薬なんです。それがドラッグストアや薬局で入手できるのですから、花粉症の方々にとっては大きなニュースです。

さて、フルナーゼの薬の特徴は後日詳しく書くとして、今日はすでに売られている類似薬との比較をします。

ライバルはエージーアレルカット、ナザールのステロイド

フルナーゼはステロイドと呼ばれる種類の鼻スプレーです。 市販薬にはステロイドを使った鼻スプレー製品がいくつかあります。 有名どころは、「エージーアレルカットEXc」(以下エージーEX)と「ナザールαAR0.1%」(以下ナザールAR)です。

エージーEXとナザールARはどちらもべクロメタゾンプロピオン酸というステロイド成分です。今回はこの2製品とフルザーゼを比較します。マニアックな部分まで比較します。ヒマな方だけ読んでください。忙しい方は、さらっと目を通して、あとは店頭の薬剤師に詳しく聞いてください。薬剤師への質問のポイントは、「効き目」と「使いやすさ」です。

それでは、フルナーゼVS既存品の10番勝負のスタートです。

ちなみに、フルナーゼは要指導医薬品といって、薬剤師と相談の上購入できる薬です。エージーEXとナザールARは、指定第二類医薬品といって、お店に薬剤師がいなくても購入できる薬です。ご注意ください。

フルナーゼ10番勝負

①値段

フルナーゼは1本で56回噴霧できます。原則1日2回で、1本で14日分。値段は1580円(税抜き)です。

 エージーEXは1本で200回噴霧できます。原則1日2回なので、1本で50日分。値段は1800円(税抜き)です。ただ、発売が2018年2月で新しくはないので、アマゾンでは値崩れして1645円で販売されています(3月25日現在)。

ナザールARは、原則1日2回で、1本で約6週間分です。値段は1980円(税抜き)ですが、こちらも発売が2016年12月と結構以前ですので、値崩れしてアマゾンでは1132円で販売されています(3月25日現在)。もっとも、ここまで値崩れしているのはネットの特徴であり、リアル店舗ではそこまで安くはありません。

以上をまとめると、価格優位性は、ナザールAR>エージーEX>>>フルナーゼ、の順になります。ナザールARとエージーEXは1シーズン3ヶ月で2本で済みますが(2400〜3200円ほど)、フルナーゼは7本(1万円ほど)になります。フルナーゼを1シーズン使い続けるのは経済的負担が大きいでしょう。

価格優位性 ナザールAR>エージーEX>>>フルナーゼ

②効果

フルナーゼはフルチカゾンというステロイドです。エージーEXとナザールARは、べクロメタゾンプロピオン酸というステロイドです。この2つの成分の効果を比較した海外のデータがあります。

アレルギー性鼻炎60人を対象にフルチカゾン(100mcg)とべクロメタゾン(50mcg×2)を使い比較したところ、フルチカゾンの方が症状を抑えたという結果でした(※1)。別の条件下の研究でも、フルチカゾンの方が効果がある傾向がありました(※2)。ただ、コクランレビューという専門家の評価では、慢性鼻炎に対してはどちらも効果はわからないようだとしています(※3)。

というわけで、しっかりとした科学的根拠があるわけではないのですが、花粉症に使う場合は、どちらかといえばフルチカゾンの方が優れているように思います。

効果 フルナーゼ>エージーEX=ナザールAR 

③副作用

ステロイドというと、副作用が気になる方も少なくないと思います。細かい説明は今回は省きますが、ステロイドの鼻スプレーは比較的安全に使える薬です。フルチカゾンとべクロメタゾンの副作用については、コクランレビューによれば、質の高い研究はないものの慢性鼻炎に対してはどちらも副作用に差はないとしています(※3)。

副作用 フルナーゼ=エージーEX=ナザールAR 

④容器の大きさ重さ

冒頭の写真を見ると一目瞭然です。フルナーゼはとにかく大きい。横幅がエージーEXやナザールARの2倍ほど大きいのでかさばります。ガラス容器を使っているせいか重さもあります。

エージーEXとナザールARの重さはほとんど同じですが、ナザールARの方が容器がコンパクトです。

容器の大きさ、重さ フルナーゼ>>エージーEX>>ナザールAR 

⑤薬液の残量

フルナーゼはガラス越しに薬の残量を見ることができます。いきなりなくなって困ることはありません。エージーEXは容器の側面に青い線があり、これが上まで上がり切ると残量なしとなります。ナザールARは中を見ることはできませんので、ある日突然「あっ!ないじゃん!」と慌てる事になります。

フルナーゼ、エージーEX:見える

ナザールAR:見えない 

⑥キャップの開けやすさ

フルナーゼのキャップは、はっきり言って相当開けにくいです。硬いんです。力を入れてキャップを引っ張ったら、ノズルまで一緒に抜けてしまったことが何度がありました。なんなんこれ?謎の仕様です。

キャップの開けやすさ エージーEX=ナザールAR>>フルナーゼ

⑦スプレーの形状

よーく見ると、スプレーの先端の形状が微妙に違います。本記事のトップの写真をご覧ください。横から見ると先が丸くなっているのはナザールARとフルナーゼで、平らになっているのがエージーEXです。一番細いのはナザールARで、わたしは一番鼻に入れやすいと感じました。

⑧匂い

フルナーゼは「バラのような匂いがする」と言われていますが、実際は「まあ、バラといえばバラだね」という感じで、むしろまったく良い匂いではありません。自然のバラや芳香剤の匂いではありません。一種独特でクセがあります(個人の感想ですけど)。他の点鼻スプレーを使い慣れている人は、きっと戸惑うと思います。まあ、慣れですけどね。わたしは1週間使えば気にならなくなりました。独特な匂いの正体は添加物として含まれているフェニルエチルアルコール。これがバラのような匂いがするのです。

エージーEXはメントールが配合されているので、使用後に鼻の中がスーッとします。好きな人は好きでしょうね。ナザールARは匂いもなくメントールの冷感もない、プレーンな使用感です。

⑨使用制限

フルナーゼは15歳から使えます。ナザールとエージーは18歳以上です。いずれの薬も妊婦さんには使えませんし、授乳中は「医師または薬剤師に相談すること」となっています。これについては薬学的には異論があるところですが今は触れません。  

⑩液ダレ感

鼻スプレーで大切なのが液ダレ感です。シュッと吹きかけたあと、薬液がたら〜と垂れてくる感じ、イヤですよね。

フルナーゼは何度か液ダレ感がありました。エージーはあまりありませんし、ナザールはほぼありませんでした。ただ、フルナーゼの場合は、使うときに振る必要があります。私はあまり振らずにシュッとしてしまうこともあったので、そのためうまく霧状にならなかったのかもしれません。でも、それを含めての液ダレのしやすさとさせてもらいます。

液ダレ感(個人の感想) フルナーゼ>エージーEX>ナザールAR

まとめると・・・

少しでも高い効果を期待したいなら、フルナーゼでしょう。ただし、お値段は高いです。今シーズンのお客さんの中には「病院でフルナーゼ処方されているから」と言って購入された方がいます。そういう方は、試しにべクロメタゾンの点鼻薬を試して見てはどうでしょうか。案外、症状を十分抑えられて、コスパよく症状を抑えられるかもしれません。

使用感は、液ダレ感、携帯性、匂いなどを総合すると、ナザールARが優れていると思います。メンソールが好きな人はエージーEXも良いでしょう。価格は、お店にもよりますが、ナザールARが一番安い傾向があると思われます。

ステロイドの鼻スプレーは効果がしっかり現れるまでに数日かかります。なので、最初とは特に使い続けることが大切です。自分にとって、ストレスなく継続しやすい特徴を考えながら、店頭の薬剤師には「効果の差」や「使いやすさ」などを相談してみてください。

市販薬は、新商品が一番優れているとは限らないのです。

 

 

参考情報 

※1 http://ijaai.tums.ac.ir/index.php/ijaai/article/view/56

※2 https://jamanetwork.com/journals/jamaotolaryngology/fullarticle/219478

※3 Different types of intranasal steroids for chronic rhinosinusitis | Cochrane

文中にある2種類の研究とは次の2つ

Fluticasone Propionate Aqueous Nasal Spray in the Treatment of Nasal Polyposis - ScienceDirect

https://jamanetwork.com/journals/jamaotolaryngology/fullarticle/219478