『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

次亜塩素酸水の使い方に注意喚起。そして市販薬に新たな不可解な需要【2020/5/25~5/29のニュース】

新型コロナ拡大が始まってから何かと話題になっていた消毒剤に「次亜塩素酸水」というものがあります。エタノールなどの一般的な消毒製品が早々に欠品し、代わりに多くの消費者がこの次亜塩素酸水というものを代替品として購入していったような気がします。

周りの話を聞いていると、この次亜塩素酸水と一般的な次亜塩素酸の区別がついていない人が結構いる印象です。次亜塩素酸水のことを次亜塩素酸と言っているのです。これはかなり怖いですね。ふつう、ドラッグストアで次亜塩素酸というと、次亜塩素酸ナトリウムのことを指します。次亜塩素酸ナトリウムは簡単にいうと「ハイター」です。

一方、次亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムと別物です。次亜塩素酸水には世間に色々な商品があり、商品によって記載もまちまちで、正直、私自身もどう評価して良いのか困っていたというのが本音です。

そんな中、独立行政法人の製品評価技術基盤機構が評価をし、29日に発表しました(こちらです)。

私なりに要点をまとめると、

①新型コロナへの効果は確認出来ていない

②空間に噴霧することで効果を発揮すると説明する業者がいるが、これは危険である

③製品のラベルに、根拠不明だったり、消費者が誤解するような不適切な表記が多数ある

というものです。「よくぞ言ってくれた!」というものばかりです。②はちょっとあり得ないですし、③は本当に厳しく取り締まるべきことだと思います。

リンク先には③のダメな例が書いていますので、ぜひ読んでいただきたいと思います。これを見ると、何が問題なのかがある程度わかると思います。

 

さて、引き続きコロナ関連の情報です。先日このブログで、イブプロフェンが新型コロナを悪化させるかもしれないというフランス発の情報を紹介しました。その際に、検討中としていた欧州医薬品庁(EMA)が、5月11日にアナウンスを出しました。感染症にかかっている場合の使用を警告するものです。ただ、その内容には「あれ?」と思いました。先述のランセット誌の論文ではイブプロフェンは新型コロナを悪化させるかもしれないという仮説でしたが、EMAのアナウンスでは、イブプロフェンが感染症の症状を隠してしまうから、というものだったからです。フランスの方針は、どうだったのでしょう・・・。

EMAの発表は日本語でも記事になっていましたので紹介しておきます。というか、この記事で知りました。面目ないです・・・。

news.yahoo.co.jp

 

それからこれはあまり大きな声ではいえないのですが、胃薬のガスター10が売れています。新型コロナウイルスにファモチジンが有効かもしれないという報告が海外であったようです。キツく断っておきますと、現時点でガスターをコロナ対策に買うことは全くお勧めできません。薬の使用ルールの上でそうした使い方は認められてません。健康をむしろ損なう可能性があります。

断片的な健康情報をもとにした自己流のコロナ対策は極めて危険である事は、いま世界各国でかなり問題になっています。海外で一時期コロナに有効かもと期待されたクロロキンは、自己流の使い方で死者もでています。

みなさま、まちがっても知り合いに、胃薬が効くかもよ、なんて伝えないでください。危ないです。

ただ、ガスターを購入するお客さんが増えました。わたしが把握している限りでは、ガスターを購入する人は①今回の情報を得て初めてガスター10を購入する人②ガスター10が今後品薄になると聞いて買いだめしようとする人のパターンがあります。

販売時に症状などを聞くのですが、「胃の痛みなどがございますか?」と聞いても「ええまあ・・・」と、歯切れの悪い答えをするお客さんが多い気がします。そして、初めて使う人も、いつもより多い。「新型コロナに良いなんて話もありますけど〜」とさりげなく話を振ると、「ああ、そういう話ありますよね」と認識はされているようです。それ以上こちらで突っ込むことはできませんけれど、コロナ対策で買っている人が一定数いるような印象です。

 

同業者向けにはこちらご参考までに・・・・ 

※pre-proofです

Famotidine Use Is Associated With Improved Clinical Outcomes in Hospitalized COVID-19 Patients: A Propensity Score Matched Retrospective Cohort Study

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7242191/pdf/main.pdf

 

https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(20)34706-5/fulltext#.Xs3dhOQT5DM.twitter

www.sciencemag.org