ドラッグストアとジャーナリズム

自分に合った市販薬を選びませんか?

おむつかぶれと市販の抗真菌薬

以下、資格職向けのコンテンツとなります。

抗真菌薬について調べていて、「おむつかぶれ」のケアで気になったことがありましたので記しておきます。

おむつかぶれの治療薬は、まずスキンケアとしての白色ワセリンや亜鉛華軟膏、アズノール軟膏がベースにあり、炎症が強ければ短期的にステロイド、そして真菌(カンジダ)が原因と考えられるものには抗真菌薬というのが基本だと思います。このうち市販薬で扱える、つまり市販薬上での「適応外」にならないのはどの商品なのでしょうか。

酸化亜鉛系の薬

まずスキンケアとしては、市販の局方品である白色ワセリン、亜鉛華軟膏は当然使えるとして、おむつかぶれの古典的な代表薬には佐藤製薬の「ポリベビー」があります。なにせパッケージに大きく「おむつかぶれ」と書いています。成分は酸化亜鉛やビタミンAで構成されています。基剤はサラシミツロウやナタネ油を使っており、亜鉛華単軟膏のサトウザルべ10%のようなものです。

他にも「コーフルS」(酸化亜鉛+アクリノール)には添付文書(薬の説明書)に「肛門周辺炎」と書かれていますし、パッケージにおむつかぶれの赤ちゃんが描かれているので、これは文句なく使うことができるでしょう。

酸化亜鉛は便利ですね。余談ではありますが、海外では亜鉛ではなくマグネシウムで治療を試みた報告がありました。抗炎症作用があるマグネシウムを2%を配合したクリームで、回復が早まったという結果でした(PMID: 26894161)。マグネシムという発想はありませんでした・・・。

ステロイドについて

続いて炎症が強い場合のステロイド薬です、こちらはちょっと慎重になります。添付文書(薬の説明書)通りに使うなら、おむつ”かぶれ”ですから、説明書に「かぶれ」に使えると書かれているものであれば、短期的であれば理屈上は使ってよいことになります。そうなると、例えばステロイドの入った「オイラックスA」があります。

小林製薬から発売している「カブナース」という製品は、その名の通りかぶれを治す薬で、ステロイドが配合されています。主に成人の尿もれをターゲットにした商品ですが、商品特徴の説明には「おむつ等による」と書かれていますのでこれもメーカー的には一応使えることをアナウンスしています。「一応」と書いたのは、この商品はエタノールを添加しているので、刺激がある可能性があります。これは製品サイトのQ&Aにも注意事項として記載されています(※)。

ただ、オムツかぶれを市販のステロイドで治療を試みることは、個人的には勇気がいります。日本の乳児寄生菌性紅斑(真菌性のおむつかぶれ)の研究を調べたところ、1970〜80年代の論文がほとんどで、その中ではステロイド外用薬の使用がカンジダを誘引しているとの意見が複数あります。医師の元でステロイドを使うことはスタンダードですが、一見さんのようなお客さんに市販のステロイドを販売することはリスキーだと感じます。

カンジダ性への抗真菌薬は?

最後におむつかぶれに対する抗真菌薬についてです。実はこれがこの記事の本題です。真菌性のおむつかぶれ、つまり「乳児寄生菌性紅斑(カンジダ性皮膚炎)」に使える市販の抗真菌薬はあるのでしょうか。

市販の抗真菌薬はテルビナフィン、ミコナゾール、ケトコナゾールなど、わりと豊富です。しかし、私が知る範囲では、これらの商品はいずれも「水虫」や「膣カンジダ」などに用途が限定されています。乳児寄生菌性紅斑は想定していません。

昔は使える薬があったようです。抗真菌成分のトリコマイシンとグリセオフルビンを配合した市販薬「強力トリコマイシンG」の効能記載は「真菌性(カンジダ性)およびトリコモナス性皮膚炎」です。文言からは乳児寄生菌性紅斑にも使えたようです。この商品はすでに製造が中止されて店頭には並んでいません。他の薬剤師の方からは、かつてはこれを「留守番軟膏」といって、薬局で師匠が不在時間に弟子がとりあえずの処置として使っていたと言う話を聞きました。

今、ドラッグストアで売られている抗真菌薬の軟膏には「クロマイ-N軟膏」があります。こちらはナイスタチンを配合しています。ナイスタチンには内服と外用があります。2000年のアメリカの研究では、おむつ皮膚炎に対してもっとも使われた薬がナイスタチン(2位はクロトリマゾール)だったという報告があります(PMID: 10980800)。それなりにメジャーな薬だったのでしょう。日本でも昔は医療機関で処方されていましたが、今は保険収載から外れて使用されていません。

市販薬であるクロマイ-N軟膏の説明書には「化膿性皮膚疾患(とびひ、めんちょう、毛のう炎)」とあります。そのため、乳児寄生菌性紅斑に対する直接の適応には該当しないと思われます。

というわけで、結論を言うと、カンジダのオムツかぶれに使える抗真菌薬は”公式”にはないと言えそうです。 

一般的には紙おむつの改良などにより乳児寄生菌性紅斑は昔よりも減少しているとされます。おむつかぶれのうち乳児寄生菌性紅斑の割合を示す統計は見つかりませんでした。

さて、乳児寄生菌性紅斑に使える抗真菌薬がもし市販薬であったらどうでしょうか?「留守番軟膏」としての市販の抗真菌薬が第一類医薬品などで売られていたら?おむつ皮膚炎に対して、白色ワセリンベースでミコナゾールと酸化亜鉛を配合した軟膏を使ったところ、忍容性は高く、薬剤耐性は認められなかったというか海外の報告があります(PMID: 23675632)。ミコナゾールと酸化亜鉛の合剤の市販薬があったら面白いなと思いました。

もっとも、おむつかぶれの背景はいろいろです。アトピー性皮膚炎などの基礎疾患など様々なことを考慮すると、ワセリン・亜鉛華軟膏以上のケアは受診が適当なのかもしれません。

 

参考情報

※ 子供が使用してもよいですか?(何歳から使えますか) | よくあるご質問(製品Q&A) | 小林製薬株式会社