「リポビタン」「アリナミン」とのちがい
明日から出勤という人は多いだろうから、元気をつけるため栄養ドリンクについて書きたい。
栄養ドリンクといえば、次の2つが有名だろう。
「ゼナシリ-ズ」
「ユンケルシリーズ」
ゼナとユンケルは、どちらも健康増進のために飲むドリンク剤だ。主に生薬の力によって体の調子を整える。西洋由来の風邪薬のように特定の症状を抑えるのではなく、体全体の機能を高めたり癒したりする東洋医学的な薬だ。栄養ドリンクは他にも「リポビタン」や「アリナミン」が有名だけど、こちらは生薬は入っていない。「リポビタン」と「アリナミン」は、ビタミンなどで体に元気を与えるタイプで、西洋由来の薬に近い。
生薬と聞いて、なんとなく効果に疑問を感じる人もいるかもしれない。
ところが、おもしろいことに、生薬を使う「ゼナ」「ユンケル」は、「リポビタン」や「アリナミン」よりも医薬業界でいうところの「薬」に近い。というのも、ゼナとユンケルシリーズの多くは、法律で「医薬品」として扱われているけれど、「リポビタン」「アリナミン」は「指定医薬部外品」といって医薬品ではないのだ(※1)。一般論として、「医薬品」は「指定医薬部外品」よりも効果が高いとされている。あくまで一般論だけど。
今回は、医薬品である「ゼナ」と「ユンケル」に注目する。
ユンケルの「Today's Choice」はすごく便利
結論からいうと、ゼナとユンケル、選びやすいのは断然、ユンケルシリーズだ。
ゼナとユンケルのシリーズは、実はかなり種類がある。ゼナシリーズは7種類(うち医薬品は6種類)。ユンケルシリーズはなんと36種類(うち医薬品は21種類)!
どう考えても作り過ぎちゃったのではないでしょうか?ユンケルさん。
そんな目が回るほど種類が多い中から、自分にあったものを選ぶのは苦痛ですらある。そこで、ユンケルの製造元の佐藤製薬が用意したのが「Today's Choice」というサイトだ。
このサイトでは、画面の指示に従って年齢、性別などの質問に答えていくと、自分にあったユンケルシリーズを紹介してくれる。もしくは、いまの体の状態にあったものを、一発で提示してくれる。サイトによれば、たとえば、風邪で体力を消耗している時は、「ユンケル黄帝-L」もしくは「ユンケル黄帝ロイヤル2」がお勧めらしい。
てっとり早く選びたいなら、このサイトを使わない手はない。ドリンク作り過ぎちゃっただけあって(?)、かなり親切に作ってくれたコンテンツだ。
さらに製品一覧のページでは、各製品の効き目の良さも数値化していて、これもわかりやすい。
どこかやっつけ感漂うゼナのキャッチコピー
さて、一方の「ゼナシリーズ」だが、ユンケルと比べると明らかに情報発信のテンションが低い。「Today's Choice」のようなツールはないのはもちろん、商品ごとの違いが、とてもわかりにくい。各シリーズの特徴を示すキャッチコピーは次の通り。
「つらい疲れに」←ゼナファースト
「疲れたら」←ゼナF-Ⅱ
「とれにくい疲れに」←ゼナF-Ⅰ
「まだまだ頑張る時に」←ニューゼナF-Ⅱ
「疲れを吹き飛ばしたい」←ニューゼナF-Ⅲ
「かぜ・ねつなどの時の栄養補給に」←ゼナジンジャー
「体力をつけたい時に」←ゼナキング
このキャッチコピーってどうなんでしょう。わかりやすいですかね?風邪で体がだるいけど仕事をもう一頑張りたい時は、どれを使えばいいんですかね?
この、失礼ながらどこかやっつけ感漂うキャッチコピーから、自分にあったゼナを選ぶのは難しい。時間がない人、店員に質問したくない人は、ゼナを断念してユンケルの「Today's Choice」を使ってサクッと選べばいい。メーカー側の思惑で高い商品を買わされるリスクは多少あるが、少しでも多くの情報に基づいて購入した方が、納得感はあるのではないだろうか。
ちなみにゼナは、各製品の成分の一覧表は用意してあるので、生薬の知識がある人は参考にされたい。
栄養ドリンクは薬剤師を泣かせる
ユンケルのウェブサイトを見れば、生薬の知識がなくても薬を選ぶことができる。でも、もしメーカーのサイトに頼らず、商品間の違いをちゃんと知りたいなら、店頭の薬剤師か登録販売者に聞いてほしい。きっと、アタマからできる限りの知恵を動員して説明してくれるはずだ。
ただ、満足できる回答が得られなくても、「この店員、栄養ドリンクの違いすらわからないのか。しょぼいな」と思わないでほしい。意外に思われるかもしれないけど、ユンケルやゼナのような栄養ドリンクの特徴は、薬剤師にとってはかなり難易度の高い質問だ。
その理由は、製品に含まれる一つ一つの生薬の効果が多岐にわたること、一つの製品に多くの生薬が含まれていて処方が複雑であること、そして生薬のがある。栄養ドリンクに詳しくなくても、薬や病気についてはべらぼうに詳しい薬剤師は数多い。
そもそも、ほとんどの薬剤師は、大学時代に生薬をそれほど多く時間を割いて学んでいない。そういうカリキュラムなのだ。僕が覚えているのは、透明のビンに入った生薬の原料となる木片を見て、その植物名と学術名を当てるという試験があったことだ。友人は苦し紛れに、なぜか木片をビンから取り出してかじっていた(もちろん名前は思い出せなかった)。
このとき僕は数十種類の生薬を覚えた(はず)けど、いまのところ何の役にも立っていない。
栄養ドリンクは薬剤師泣かせの商品だ。もっとも、お客にはそんなことは関係ないので、ドラッグストアの薬剤師はちゃんと商品ごとの特徴は説明できなければいけない。頑張ります。
※1 ただし、アリナミンの錠剤タイプは医薬品。