『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

高橋大輔選手の栄養アドバイザーも否定的。栄養ドリンクはサラリーマンの敵か味方か

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栄養ドリンクは疲労を回復しない?

戦うサラリーマンの強い味方、栄養ドリンク。会社に寝泊まりしたり、家で深夜仕事をしたりするとき、お世話になる人も多いだろう。

ところが、そんなビジネスマンのマストアイテムが、

「じつは疲労を回復しないらしいよ、アレ」

と否定されてしまっては、胸中穏やかではいられないだろう。

ところがあるのだ、そんな声が。

 

兵士の疲労回復に使われた「タウリン

みなさんは栄養ドリンクを買うとき、何を基準に選んでいるだろうか。てっとりばやくわかる商品間の違いは、ドリンクに含まれる栄養「タウリン」の量だろう。タウリンアミノ酸の一種で(アミノ酸じゃないという人もいるみたい)、健康にいい成分とされている。戦時中は疲労回復のために兵士に使われていたそうで、とても古典的な栄養成分だ(※1)。

タウリン1000mg配合!」のフレーズでおなじみのリポビタンDだが、ドラッグストアではそのほかにも、タウリンを含む似たような栄養ドリンクが販売されている。タウリン2000mg!とか3000mg!とか、リポビタンDよりもはるかに高配合の商品はたくさんある。

こんだけタウリンが強調されるってことは、たぶんタウリンが多いのほうが効くんだね、と思いきや、しかしそうでもない。

 

飲んですぐの疲労回復感はカフェインと糖のおかげかも

栄養ドリンクですぐ元気が出るのは、タウリンのお蔭なのだろうか?

そうじゃないという声が、薬剤師や栄養士から聞こえてくる。

彼らによれば、飲んだ後にテンションが上がるのは、じつは栄養ドリンクに含まれる糖類とカフェインのせいだ。糖類が血糖値を急激に上げ、さらにカフェインが頭をシャキッとさせている(興味がある人はググってください。すぐ見つかります)。血糖値が上下し、カフェインも短期間で効果が失われるので、そのあとはむしろ疲労感が増すのではないかという見方もある。

これが本当なら、栄養ドリンクを飲んだ直後に”効いた”と感じるのは全くの幻想で、疲労回復していないことになる。

 

メダリストの栄養アドバイザーも「選手には勧めない」

つまり、ドリンクに含まれるビタミンやタウリンも、何らかの形で体にプラスには働くのだろうが、飲んですぐの”元気でたぜ!”という感覚とは、関係がないのかもしれない。

フィギアスケートの銅メダリスト高橋大輔選手の栄養アドバイザーを務めた石川三和さんも、最近、雑誌の中で栄養ドリンクに次のような否定的なコメントを載せていた。

「私はいろんなアスリートの食生活をサポートしていますが、彼らに勧めたことはありません」(※2)

なにをー。 

  

でも、タウリン3000mgのほうが効いた感じがするんですけど・・・

ただ、ちょっと待ってほしい。

理屈はわかった。

でも、じっさいに飲んだ者の感覚としては、タウリン1000mg配合のドリンクより、3000mg配合のほうが、飲んだ後に効いた感じがする。

そんな経験を持つ人はいないだろうか。なにをかくそう、ぼくはそう感じている。3000mgのほうが、飲んだ後にスカッとしたような気がするのだ。

栄養ドリンクは、基本的にどれもカフェインの量は変わらない。ビタミンの量は微妙にちがうけど、これはあまり関係ないだろう。となると、やはり、飲んだ後に疲労感が和らぐ感じがするのは、タウリンのおかげ?

これについて考えられる可能性は次の3つだ。

①やっぱり疲労回復感はタウリンのおかげ

②じつは3000mg配合のドリンクは1000mgよりも糖類が多く入っている。そのため、より元気になった気になっているだけ。タウリンの量は無関係(糖類の量は表示されていないので、どれだけ含まれているのか買う方はわからない)

③効いたと感じたのは気のせい。3000mgも1000mgも、飲んだ直後の疲労回復感は一緒。大きな数字を見て、心理的に”効く”ような気がしているだけ

 

みなさんはどれだと思うだろうか。よろしければお聞かせください(薬局にタウリン散がある薬剤師さんは、飲んでみてください笑)。

タウリンが疲労回復に効くということを明確に示した科学データはぼくは知らない。

 

栄養士さんはビタミンC推し

さて、仮に栄養ドリンクが疲労回復にほとんど役に立たないとして、じゃあ、代わりになるものはないのか。これについては、科学的な検証はさておき、ビタミンCを勧める意見をよく聞く。

先述の高橋選手のアドバイザーだった石川さんは、

「栄養ドリンクを飲むなら、レモンを絞った炭酸水を飲むほうがいいと思います」

と言っている(※2)。

また、栄養士としていくつかの著書を持つ笠井奈津子さんも、本の中で、疲れやストレスがたまったときは、甘いものではなくビタミンCを摂ることを勧めている(『甘いものは脳に悪い』)。

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なお、栄養ドリンクには、リポビタンやチオビタなどの「タウリン系」以外にも、生薬が含まれたものもある。

気になる人はドラッグストアの店頭で薬剤師・登録販売者に聞いてみることをお勧めする。さいきんは栄養士がいるドラッグストアもあるから、そこで聞いてみてもいい。

 

 

※1タウリン(1)|新聞|食と健康Express

※2ターザン2015/7/9