中国企業のパクリもの
前回、偽造医薬品について書いた。
今回は「偽造」ではないものの、本家本元をパクっていると思われる中国の商品を紹介したい。
近年、中国企業が世界各国の有名ブランドのパクリ品を作っていることが報道されているが、ドラッグストアにある一般消費財も例外ではない。
花火に気をつけるムヒ?
まずは、日本でお馴染みの虫刺されの薬「ムヒ」。中国でも人気があり、観光客が購入していく。ムヒは中国語では「無比滴」と書く。メーカーの公式サイトもある。で、このムヒにそっくなり商品をネット上で見つけた。その名も「無比の露」。
製造元は「日本名古屋株式會社」とある。 上記のウェブサイトにある、薬の「使用上の注意」の欄に、日本語で、
「花火を閉じないでください」
なんてあるんだから、まず日本人が作っている薬ではないだろう。
この商品は明らかに「ムヒ」の知名度を利用しているので、ぼくが過去に会社で著作権法の講習を受けた知識でいえば、これは日本では著作権侵害になる。中国ではどうだか知らないけれど。
存在しない「ロート化粧」
続いて、ロート製薬。ロート製薬も中国でよく知られている人気のブランドだ。同社でも中国語の専用サイトを開設している。同社は今年9月、中国で自社製品の偽物が出回っていることを、このサイトを通じて中国の人々に対して伝えた。ここ数年、中国のネット上では、ロート製薬とはまったく無関係の、「樂敦藥妝(ロート化粧)」という商品が流通している(ロートは中国語で樂敦)。ロート製薬は、これを「ロート」の商標を侵害する行為だと訴え、中国の消費者に注意を呼び掛けた。偽物の写真はコチラで確認できる↓
關於“樂敦藥妝”商標侵權的嚴正聲明 | ロート製薬: 商品情報サイト
中国の友人から頼まれた日本製品
最後は、ブログ友達の中国人、穂穂さんに教えてもらったおもしろいサイト。
穂穂さんは今年、中国に帰国した際、知り合いに「ヤナギヤ」というメーカーの商品を購入してほしいと頼まれた。ヤナギヤは江戸時代に創業した歴史ある日本の整髪料のメーカー。友人に頼まれた穂穂さんは、早速、中国のサイトでヤナギヤの製品を調べてみた。すると、こんなサイトを見つけた。
一方、日本語のヤナギヤのサイトはこちら↓
柳屋 ヘアトニック <無香料クールタイプ> | 柳屋オンラインショップ<化粧品メーカー>
さて、両サイトの微妙な違いにお気づきだろうか。
ヤナギヤに問い合わせてみた
両者の会社名に注目してほしい。
日本の会社は「柳屋」。中国語のサイトは「柳谷」。なぜか、一文字だけちがう。
中国の「柳谷」のサイトで販売している商品写真は、どうやら日本の柳屋の製品である。柳屋の現地法人かもしれない。
日本の柳屋に問い合わせてみた。
「こんなサイトを見つけて、中国人の知人が購入しようとしているんですけど、いいですか?『柳谷』は御社の中国法人でしょうか?」
返ってきた回答は次の通りだった。
・柳屋に海外法人はない
・中国のサイトとは一切関係ない
・購入したとしても、一切の責任を負いかねる
極力買わないように、とのことだった。そりゃそうだ、何かあったら自社ブランドにキズがつく。噴飯ものである。
中国のサイトは、柳屋のブランドに便乗して商売をしているので、これも日本であれば著作権の侵害になると思う。中国ではしらないけれど。
ちなみに、穂穂さんによると、柳谷がネット販売している価格は、日本の何倍も高いらしい。穂穂さん、情報提供ありがとうございました。
日本語のネット販売も危険アリ
さて、ここまで紹介した3例に共通するのは、いずれもネット販売されている商品だということだ。
ひるがえって日本ではどうか。
4年前に大手製薬会社が共同で日本語の輸入代行サイトの商品を調査したところ、バイアグラなどの勃起不全治療薬は4割が偽造品だったことが明らかになった(※1)。
厚労省が昨年春から夏にかけて、ネット上で偽造医薬品を販売していた74つのサイトを事実上、強制閉鎖させるという出来事もあった(※2)。
対岸の火事ではない。
厚労省は2013年に「あやしいヤクブツ連絡ネット」を開設し、偽造薬に関する情報提供を呼び掛けているが、このサイト自体が浸透していない。
いずれは、日本でもニセモノ産業が大きな問題になる日がくるかもしれない。