『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

ドラッグストアで売っている漢方薬に含まれるアレの写真

そもそも漢方薬ってなんなのか

今回はイラストなし。漢方薬の写真、いっぱい載せるからね。

漢方薬は、自然界にある動植物を材料に作られた薬だ。その製法は、木や動物の体の一部を煮出して飲むというもの。簡単に言ってしまえば、お茶みたいなものですね。

ただ、緑茶とちがって、木など成分を抽出するには時間がかかる。家で動植物を毎日に出すのはかなり大変だ。煮出し方にも上手い下手があり、抽出される薬効成分にバラつきがでる。

そこで便利なのが、エキス製剤。煮出したものを、濃縮・乾燥させて、粒状態にしたものを指す。要するに、インスタントコーヒーみたいなもの。これなら、毎日時間をかけて煮出さなくても、誰でもラクに漢方薬を飲むことができる。

 

ビン詰めされた漢方の材料を見たことありますか?

というわけで、ドラッグストアで販売されている漢方薬は、ほとんどがこのエキス製剤だ。このエキス製剤が、あまりにも広く普及しているため、ほとんどの人は、漢方薬のもともとの材料となる”食材”そのものを見る機会がない。

漢方薬の材料は、「生薬(しょうやく)」と呼ばれる。漢方を重点的に販売している薬局(薬局)であれば、店頭にビン詰された生薬が展示されている。

こんなかんじで↓

www.nihondo.co.jp

漢方薬で使われる生薬を紹介する。先日、いくつか購入した生薬の写真もおまけとして載せておく。写真はあくまでイメージとしてとらえてほしい(※1)。

科の分類については、桑木崇秀さんの著書「漢方診療ハンドブック」から引用した。

それじゃ、いってみましょ。 

 

①ケイヒ

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ケイヒはクスノキ科ケイの樹皮または周皮の一部を除いたもの。俗にいうシナモン。胃腸の動きをよくする働きがある。漢方薬だけでなく、太田胃散など胃腸薬にも使われている。

 

 ②カッコン

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カッコンはマメ科クズの周皮を除いた根。鎮痛作用などがある。色は白色もしくは少し黄色がかっているが、白く仕上がっているものほど良品であるともいわれる(※2)。鎮痛効果がある。代表的な漢方薬は、風邪に用いる「葛根湯」。

③カンゾウ

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カンゾウはマメ科ウラルカンゾウまたは同属植物の根およびストロン(根の一部)。カンゾウは漢字で「甘草」と書き、その名の通り甘い。鎮痛効果がある。「葛根湯」をはじめ、様々な漢方薬に広く用いられている。

④シャクヤク

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シャクヤクはボタン科シャクヤクの根。鎮痛・鎮痙(けいれんを鎮める)作用がある。代表的な漢方薬は、こむらがえり薬「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」。

⑤サンソウニン

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サンソウニンはクロウメモドキ科サネブトナツメの種子。大棗(なつめ)の仲間。鎮静・催眠作用がある。代表的な漢方薬は、不眠症などに用いる「酸棗仁湯」。

⑥キキョウ

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キキョウはキキョウ科キキョウの根。花で有名な桔梗(ききょう)のこと。去痰作用などがある。代表的な漢方薬は、喉の痛みに使う「桔梗湯」。

⑦トウキ

f:id:kuriedits:20160707212650p:plainトウキはセリ科トウキまたはホッカイトウキの根。漢方でいうところの「血(けつ)」を整え、冷え性や貧血、月経不順などに幅広く用いられる生薬。更年期障害薬として有名な「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」や、「命の母」などに使われている。

⑧センキュウ

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 センキュウはセリ科センキュウの根茎を湯通ししたもの。トウキと同様、漢方でいうところの「血(けつ)」を整え、婦人病によく用いられる。前出の「当帰芍薬散」「命の母」にも含まれる。

 

⑨バクモンドウ

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バクモンドウはユリ科シャノヒゲの根の膨大部分。咳止め作用がある。代表的なのは咳止め薬「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」。

⑩ハンゲ

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ハンゲはサトイモ科カラスビシャクのコルク層を除いた根茎。吐き気を抑える作用がある。胸のつかえ感に使う「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」などに用いる。「生姜(ショウキョウ)」とセットで使われるが、これはハンゲの持つアクの強さを消すためらしい(※3)。

⑪サイコ

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サイコはセリ科ミシマサイコの根。静岡県の三島にちなみ名づけられているが、市場では中国産・韓国産が多い。消炎作用がある。多くの漢方薬に用いられ、サイコを主として構成された漢方薬は、「柴胡剤(さいこざい)」と総称される(※4)。代表的な漢方薬に、胃炎に用いる「小柴胡湯(しょうさいことう)」「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」などがある。

そこらにある植物を使わないでね!

最後になるが、上記で挙げた植物が、園芸店で購入できる馴染みの花々だからと言って、自己流で根や茎を採取して食べることはまったくお勧めしない。

また、市販の漢方薬は、病院で処方される漢方薬よりも成分量が少ないことが多い。これは以前、このブログでも書いた通りなので、購入する際は留意されたし。

 

※1記事コメントで指摘があるように、これらは中国系の店で購入したものであり、日本の漢方薬で使うものと同一であることは保証しない。コメントを受けて、一部文章を変更した。

※2日本漢方生薬製剤協会

※3漢方薬の

※4「漢方診療ハンドブック」