丸いコブの正体は・・・
コブのような、おできのような、謎のデキモノがある。痛みはない。時間をかけて、だんだん大きくなっていくようなら注意が必要だ。それは「粉瘤(ふんりゅう)」と呼ばれるものかもしれない。市販薬では絶対、治せない。治そうとするだけ時間とお金のムダだから止めましょう。
粉瘤とは何か。百聞は一見にしかず。自前の粉瘤をお見せしましょう。汚い写真で申し訳ない。
ついでに、できものの中身の写真もお見せしましょう。ちょっとグロいよ。
写真右にある薄黄色の部分が背中の皮。
で、左の袋が、皮膚の下に埋まっているもの↓
粉瘤は放置すると、やっかいなことになる
粉瘤はこぶのようなもので、一見、おできのようにも見える。痛くはないので、ついつい放置してしまう。だが、これが後々面倒を起こす。
放置すると、化膿する。化膿すると、病院で膿を出す。炎症が鎮まって手術をするので、通院が長引く。時間も医療費もかかる。だから、粉瘤に気づいたら、そして、大きくなるなどの変化が出たら、できるだけ早く皮膚科に行くことをお勧めしたい。じゃないと、面倒なことになる。ぼくがまさに、そうだった。
ちなみに、あの皇太子様も、かつて粉瘤で腰にできたらしい。
老廃物がつまった袋、それが粉瘤
粉瘤、これ何なのか。ひとことでいうと、皮脂や角質の集まりらしい。皮膚の下に、なんらかの原因で袋状のものができてしまい、その中に角質などの老廃物が溜まってしまう。「脂肪の塊ができた」と表現する患者が多いとされる(※)。外から見ると、こぶになっている。押しても痛くない。ところが、袋は皮膚でできているので、内部で新陳代謝が続き、袋は次第に大きくなっていく。そして、なにかのきっかけで袋の中でばい菌が繁殖し、化膿すると赤くはれて痛い。コブの中心にぽっちがある。最初に見せた写真には中心に赤い部分がある。ここが詰まりの部分だろう。
袋の中は老廃物のため、患部を押すと、悪臭を伴う膿が外に出ることがある。
粉瘤ができた時の一般的な注意点を、個人的な経験を交えて挙げる。
・ゴシゴシ洗わない。刺激を与えない。
・市販薬では治せない。手術が必要。
・化膿してから受診すると、治療に時間とお金が余計にかかる
・放置して粉瘤が大きくなると手術費用が高くなる
・内科医は放置することがあるので、皮膚科(形成外科)を受診する
・手術なので、なるべく経験豊富、評判のいい医師を選ぶ
ぼくが世話になった皮膚科医は、
「粉瘤は、とにかく早めに手術して取ることが大切。化膿してからだと治療に時間がかかる。そういう患者さん、多いんですよ。あとね、内科で受診して、まあ悪性ではないからという判断で放置されて、化膿してからウチにくる患者さんもいるね。そこらへんは、内科医の意識が足りないともいえるかもしれない」
と言っていた。これは皮膚科医の一般的な考え方だと思われる(※)。
ただ、最近は、炎症を起こしても速やかに手術で袋を取り除く方法もあるらしい。興味がある方はどうぞ(腕を保証するものではありません)。
市販薬で治すことは諦めてください
ドラッグストアでの大切な仕事の一つに、「受診勧奨(じゅしんかんしょう)」というものがある。簡単にいうと、病院に行きたくなくて、市販薬で治すためにドラッグストアに来たお客に対して、症状を聞いた上で、
「市販薬では治せません。諦めてさっさと病院へ行ってください」
と、不都合な真実を、伝える行為だ(もちろん、実際はこんな失礼な言い方はしません。念のため)。
市販薬では治せない病気はたくさんある。粉瘤もその一つだ。おとなしく病院へ行ってください。後悔しますよ。
ぼくがそうだったから。
どう後悔したかは、稿を改める。
※「ジェネラリストのためのこれだけは押さえておきたい皮膚疾患」(医学書院)の記載より