『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

国「病院で出されている薬をドラッグストアで売るけど、なんか希望ある?」 国民「は?」

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あの薬がドラッグストアで買えたら・・・

「病院で処方されている薬が、ドラッグストアでも買えたらなあ・・・」

と思っている人が見るべきページがある。厚労省が出した下記のページ。お堅い役所言葉が並んでいるけど、言いたいことはいたって簡単だ。

「処方薬を市販薬にしたいんだけど、なんか希望ある?」

www.mhlw.go.jp

 

あの薬もこの薬も、実はスイッチOTC

タイトルにある「スイッチOTC」とは、病院で出される薬を、ドラッグストアや薬局などで購入できるように転用(スイッチ)した薬のこと。1983年以来、日本国内では約90成分がスイッチOTCとして、ドラッグストア・薬局で販売されるようになった(※)。ドラッグストアのスタッフから「効き目が高い」と紹介される薬は、ほとんどがスイッチOTCと考えていい。

スイッチOTCがどんだけ馴染み深いか、商品名を挙げればすぐわかる。

鎮痛薬「イブ」に含まれるイブプロフェン 

鎮痛薬「ロキソニン」のロキソプロフェン

胃薬「ガスター10」のファモチジン

水虫薬「ブテナロック」に含まれるブテナフィン 

口唇ヘルペス薬「アクチビア」のアシクロビル

アレルギー薬「アレグラ」のフェキソフェナジン

痛み止め貼り薬「ボルタレン」のジクロフェナク 

ほとんどの人が知らない、関心ない

ほらね、すごいでしょ。

で、いま、国はスイッチOTCを増やそうとしている。ふつうなら、製薬会社が「これ、市販薬にしたら儲かるんじゃない?」と考えて国に申請をするのだけど、いまは国がスイッチOTCを増やしたいから、製薬会社任せにせず、あっちこっちに呼び掛けている。「スイッチOTCにしたい薬、なんかない?」って。

製薬会社はもちろん、医療系の団体や一般消費者(個人)から要望を募って、それを専門家たちでスイッチOTCにすべきかを検討する。要望どおりにスイッチOTCになるわけじゃない。抗がん剤がドラッグストアで売っていたら嫌でしょ。そこは専門家たちが判断する。

その前段として、まずは消費者ニーズを把握しましょう。ということで、国が一般消費者向けに要望を募っているわけだ。

ま、ほとんどの人が知らないだろうけど。

広く知らされてないし、興味もあんまないし。

売ってほしいものは特になし!

厚労省の研究班が数年前に、ネットモニターに対して、今後どんな薬を薬局・ドラッグストアで売ってほしい?と自由回答で聞いた(※)。総回答件数672件。さて、一番多かった回答は何でしょう。

答えは、「(特に)なし」で602件!

ちなみに、2番目に多かったのは「わからない」で22件!

そりゃそうだ。たぶんほとんどの人が考えたことない質問だし、そもそも薬って専門性が高いから素人にはよくわかんない。

「そんなこと専門家が判断してくれ。俺は素人だから、聞かれてもわかんねえ」

と内心思ったモニターも少なくないんじゃないだろうか。

ドラッグストアで買えたら便利ですよ?

ただ、一方で、ドラッグストアで働いていると、病院の処方薬を持ってきて、

「これ、売ってませんか?」

と聞いてくるお客はそこそこいる。例えば「ゲンタシン軟膏」。それから、病院で出される薬と同じ成分量のものを欲しいと思ったことはないだろうか?

スイッチOTCについては、医療関係者の間でも推進派と慎重派がいて、ぼくは別にどっちというわけではないのだけど、これからの新しい日本の医療をかたちづくる上でスイッチOTCはとても重要な話題だと思っている。

せっかくの機会だから、興味がある人は、市販薬にして欲しい薬の要望を出してみてはどうだろう。

これもほとんど知られていないけど、薬の世界で最も有名な法律の一つ「薬機法」(旧薬事法)には、こんな一文がある。

国民は、医薬品等を適正に使用するとともに、これらの有効性及び安全性に関する知識と理解を深めるよう努めなければならない (国民の役割 第一条の六)

ここまでブログを読んでくれた人は、上記の努力義務を果たしてること間違いなし!

 

※本ページの各資料より。

医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議審議会資料 |厚生労働省