『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

「グローバル・ジャーナリズム」からグローバル・ドラッグストア・ジャーナリズムを

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「I'm a pharmacist, working for ...」

国際報道をテーマにした本を読んで、とっても感動したので、思わずこんなツイートをした。

I'm a pharmacist, working for a drugstore in Japan.

I am especially interested in non-prescription medicines, and have delivered information regarding non-prescription medicines to readers (consumers) on my blog, since 2015.

I'm also concerned with the situation of drugstores in foreign countries.

If you would like to receive information about Japanese drugstores, or non-prescription medicines, would you be interested in exchanging information about those topics ?

Please, feel free to contact me.

 

初めて知ったグローバル・ジャーナリズム

「〇〇ジャーナリズム」という言葉はたくさんある。

テクノロジーを駆使した「データジャーナリズム」「VRジャーナリズム」、マネタイズを含めたメディア運営を指す「アントレプレニューリアル・ジャーナリズム」という言葉が最近は使われているし、古くは1960年代の米国で新しい叙述法として注目を浴びた「ニュージャーナリズム」という概念もあった。「〇〇ジャーナリズム」は、一種のトレンドを表す便利なツールだ。

さて、3月22日に岩波書店から発売された「グローバル・ジャーナリズム」という新書を読んだ。

グローバル・ジャーナリズム――国際スクープの舞台裏 (岩波新書)

グローバル・ジャーナリズム――国際スクープの舞台裏 (岩波新書)

 

最初にタイトルを見た時は、グローバル?岩波の編集者が考えた造語ですか?と思ったが、そうではなかった。グーグル先生にglobal journalismを問えば、たくさんのサイトが表示される。ジャーナリズム学科の科目にしている海外の大学さえあった(※)。

仮にもジャーナリズムの名を冠するブログを書きながら、この言葉を知らなかったことは不明を恥じるほかない。

 

グローバル・ジャーナリズムとは

グローバル・ジャーナリズムは、国境を超えたジャーナリズムの営みだ。著者の澤康臣さん(共同通信社)は、前書きにこう書いている。

属する国や組織の違いをものともせず越境する記者たちは、プロ同士の連帯を築く。情報を交換し、合同取材をし、記事を発表し、地球規模の調査報道、「グローバル・ジャーナリズム」を実現している。

本書がまず紹介するのは、世界の富裕層・権力者たちが抱える秘密を記した「パナマ文書」をめぐる報道だ。

匿名法人が乱立するタックス・ヘイブン(租税避難地)の内部情報が暴かれたのは2016年の4月のことだった。日本でも大きく報じされたから、記憶に新しいだろう。

www.newsweekjapan.jp


同僚たちにも明かさない極秘取材

パナマの秘密文書を報じるために、約80カ国の100を超えるメディア、そして400人近い記者たちが集まり、国と地域を超えて互いに情報交換をし合い、そしてすべての事実のウラを取った上で一斉に報じた。約1年にわたる国際的な調査報道プロジェクトだった。調査情報が計画の途中で漏れて権力者たちに取材の妨害や不正の証拠隠滅を図られることを恐れた記者たちは、同僚にすら自分たちが追っている内容を明かさず、最後まで徹底した秘密主義を貫いた。

この本では、当時の内幕を、プロジェクトに参加した記者たちへのインタビューを交えて紹介している。めちゃくちゃおもしろいし、感動すら覚える。

 

医療の場合は・・・?

しかし、ひょっとしたらぼくのような素直な感動は覚える人は多くないかもしれない。「グローバルな活動?そんなことは、うちらの業界ではとっくの昔にやっている」と。”うちらの業界”とは、ぼくがいま身を置く医療業界のことだ。

Aという薬はBという病に、どれほどの効果があるのか?

Cという薬とDという薬は、どちらが優れているのか?

世界中の医療者・研究者たちが、ときには共同研究という形で国境を越えながら、一つの科学的真実を追究している。そして、彼らの成果は専門誌に”論文”として掲載され、これまた世界中の医療者・研究者たちが読むのだ。かたちは違えど、国境を超え、互いに力を合わせるという意味では、グローバル・ジャーナリズムに近い。

ニュースという代物は、必ずその国の言葉で報じられるドメスティックな産業である。しかし、報道産業から一歩外に出れば、英語が半ば公用語として扱われる産業はいくらでもある。システムエンジニアは英語が読める人が多いし、医療従事者もそうだ(少なくとも、それなりに勉強している医師・薬剤師は英語の論文を読む)。一方、英文報道をわざわざ見る記者・編集者は、あまり多くないだろう。母国語のみで成立した報道産業は、いわば鎖国状態で、国際化という面では他の産業よりも後進なのだ。

 

ツイッターで呼び掛けてみたよ

だから、国際的な視点と活動、これが日本のジャーナリズムに足りないもの、これから伸び城があるものじゃないかと思うわけだ。澤さんの「グローバル・ジャーナリズム」を読んでぼくはとても大事なインスピレーションを与えられたような気がした。

そうだ、ぼくも、もっと海外の人たちと、市販薬やドラッグストアについて情報交換したい。アメリカでたまたま知り合った内科医との小話を以前書いたことがあったが、今の時代、日本にいてもSNSなどでコミュニケーションはとれる。これを「グローバル・ドラッグストア・ジャーナリズム」と勝手に名付けたい。

思い立ったが吉日である。パソコンを開いて英語を打ち始めた。それが冒頭で紹介したツイートだ。

海外の注目サイトを紹介

それにしても、国際報道というのは、どうしてこんなに神秘的でワクワクするのだろう。

20代半ばのころ、国際報道が専門のある記者にぼくは、東京・有楽町駅前にある「外国人記者クラブ(日本外国特派員協会)」の、会員制のバーに時々連れて行ってもらっていた。バーでたまたま居合わせて紹介されるのは、海外の通信社の記者や、内閣府の高級官僚など、様々な面々だった。かっこいいスーツを着た一癖も二癖もありそうな人たちが、賑やかにグラスを傾ける風景を見ながら、このバーにいる人は(ぼくの目の前に座るこの記者も含めて)みんなどこかの国のスパイなんじゃないかと思えた。

あのころ、知らずに澤さんとすれ違っていたかもしれない。

最後に。「グローバル・ジャーナリズム」では、世界中の調査報道機関を紹介している。初めて知る組織・メディアがたくさんあった。これはもう、本当に勉強になった。購入して損のない一冊です。

 

【「グローバル・ジャーナリズム」で紹介されていた調査報道団体のサイト】

 国際調査報道ジャーナリスト連合 ICIJ

www.icij.org

 

パナマ文書報道のなかで人気を集めたサイト「タックスヘブンへの階段」

Stairway to Tax Heaven · ICIJ

 

非営利組織「組織犯罪・汚職報道プロジェクト」 OCCRP

www.occrp.org

 

アフリカ調査報道センター・ネットワーク ANCIR

investigativecenters.org

 

リヴィール Reveal(調査報道センターCIR)

www.revealnews.org

 

社会健全性センター CPI 

Center for Public Integrity | Investigative journalism from a nonprofit newsroom

 

ザ・コレスポンデント

thecorrespondent.com

 

アメリカ調査報道記者編集者協会 IRE

www.ire.org

 

アイ・アジア

npo-iasia.org

 

報道実務家フォーラム

jitsumuka.seesaa.net

 

 

※アリゾナ大学 Global Journalism | School of Journalism