『家庭の薬学』

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健康情報サイトのパクリ記事が20000%許されない理由

www.fizz-di.jp

健康情報の信頼性を揺るがせた騒動の当事者が・・・

トンデモな健康情報をたくさん載せていたWELQというサイトが閉鎖してから半年以上経つが、先日、こんなツイートが目に留まった。おやまあ。

ツイート主は「お薬Q&A~Fizz Drug Information~」という健康情報サイトを運営している薬剤師の児島悠史さんだ。「welqの件でDeNAさんと直接お話」って、ひょっとして被害者ですか。

ツイッター上で児島さんに投げかけると、自サイトから勝手にコピペされていて、騒動前から抗議していたとのこと。

ほうほう、その話、詳しく聞きたい。どうやって被害に気づき、何を思い、どんな教訓を得たのか。

というわけで、今回は児島さんにご登場いただく。 

 

児島さんに聞いた「パクリ問題の本質」と「自己防衛方法」

――今日はありがとうございます。さっそく本題に移りたいですが、その前になんてお呼びしたらよろしいですか?Fizzさん?児島さん?

 

どちらでも結構ですけど、名前が自然ですかね?

 

――堅苦しい記事ではないので、フレンドリーにお話させていただきます。ご了承ください。さて、児島さんはWELQに記事をパクられたわけですが、それはいつですか?

 

昨年の5月中頃ですね。

 

――WELQ騒動が起きる前ですよね。よく気づかれましたね!

 

医療の情報は正確さや客観性・中立性が重要だと考えているので、内容への指摘には常にアンテナを張っています。特に外部からリンクを貼られた際には、内容の間違いについて指摘されている場合もあるため、念のためにそのサイトを確認しています。その確認作業の中で、コピペ+改変で作られたサイトがあることに気付きました。

 

――ほうほう。

 

昨年夏頃は医療系のキュレーションサイトが大量に発生していたので、自分が書いた文章をダブルクォーテーション「"」で囲って完全一致検索をし、「似たことを述べている」のではなく「完全にコピペしている」サイトを時々はチェックするようにしていたんです。

 

――へー!耳が長い。いや、耳が痛いです。ぼくはそこまで外部チェックに時間を費やしてません。感心してしまいます。

 

外部チェックに関しては、今はそんなにしてないです。去年の今ごろ、健康系のキュレーションサイトが非常に多くて閉口していたので、わりと頻繁に確認していましたが。

 

――パクリ記事を発見した時は、どんな気分でしたか?戸惑いでしょうか、怒りでしょうか。

 

自分は誤解や偏見を招かないよう、一言一句に細心の注意を払いながら文章を作っています。ところが、コピペを誤魔化すために語順・文末表現などを改変した結果、文章のニュアンスが変わってしまっていることが多々ありました。私の意図しないことを、まるで私が言っているかのような書き方をされていることに戸惑いました。それから、誤解や偏見を減らそうと文章を書いているのに、その文章をコピペされ、更に誤解や偏見を生む片棒を担がされているような状況でしたから、「なぜ敢えて間違った情報・誤解のある表現に加工するのか」と、物凄く腹が立ったことを覚えています。

 

――それは怒りますね。児島さんのサイトのトップには「薬や病気に対する「誤解」や「偏見」から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」って趣旨が書かれているのに、むしろ誤解と偏見を増長させちゃうわけですから。そういった盗作・無断引用は、何が問題と思われますか?

 

本来、引用に許可は必要なく無断でするものですが、「引用元はきちんと明記する」「引用する内容はあくまで”従”で、自分の文章が”主”である」「引用元の文章を改変しない」という基本的な引用のルールは守るべきと考えます。コピペしておいて、まるで自分が書いたもののように盗用するのはもってのほかです。たとえ同じ資料を調べて同じ結論に至ったとしても、きちんと自分の言葉で表現すべきで、それができない・面倒だと言う人はそもそもなぜ文章を書こうとしているのかわかりません。

 

――なるほど。同じ題材でも、書く人が違えば視点も表現も変わるわけで、本当はそこが面白いはずなのに。ネットユーザー(一般消費者)にとっては、パクリ記事が増えることで、どんな被害があると思われますか?

 

専門知識のない人間が、専門的な情報について「前後関係を無視して一部分だけを抜粋すること」「語順の入れ替えや単語の言い換えをすること」によって、出来上がった文章が間違った情報、誤解や偏見を招くようなものになってしまうことだと思います。

 

――あっ、それは困りますね。でも、あえて質問させていただくと、SEOに強い大手メディアが知名度が低いためにウェブ上に埋もれている価値ある記事や作品を拾うことで、そのコンテンツが世に広がることになるというメリットもあるとはいえませんか?

 

「キュレーション」という言葉を使っていることから、本来はそうした目的で立ち上がった事業だと考えています。でも、その目的を達成するためには、記事や作品を集めて整理する「キュレーター」がその分野についての専門知識や優れたセンスなどを持っていなければなりません。その点、DeNAは二束三文で集めた素人にこれをさせていたため、引用・転載されても何のメリットも生まれなかった。「Yahoo!ニュースに掲載された」ようなケースと大きく違ったのは、引用・転載された元々のコンテンツホルダーに、何のメリットもなかったことだと思います。

 

――書き手もキュレーターも専門知識がないのなら、不適切な改ざん・引用を見抜けないですね。結果として、粗悪だったり語弊のある記事がグーグルの上位に来てしまうことになる。「ググったらカス」みたいな状況ですね。どうやったら盗用被害を防げるんでしょう。工夫があれば教えてください。

 

3つあります。1つ目は被リンクや参照リファラ(リンク元のサイト情報)をときどき確認する。

2つ目は自分の書いた文章を””で囲って完全一致検索し、コピペされていないかをときどき確認する。私の場合、「強い→強力な」「優しい→弱い」「軟膏→塗り薬」「です→と言われています」と言い換えただけで、引用の明記もなく使われていた文章もありました。そのため完全一致検索する際も、一文まるごとではなく、ある程度の範囲を抜粋するなどの工夫も必要かと思います。

3つ目は医療情報を取り扱うにあたり、自分の活動理念や実名・写真・経歴、またどういったことに注意して記事を作っているかといったことを公開することで、「薬の専門家として、これだけ注意深く作っているのだ」ということをアピールして、安易な改変やコピペは自制するようけん制しています。

 

――なるほど。ところで、実はぼくは自分のブログ記事がパクられているかどうかをチェックしたことないんです。せっかくの機会なので、この場でその「"」を使った一致検索をやろうと思うのですけど、記事中のどんなセンテンスを使って検索すればいいですか?

 

その記事について、核になるような部分、特に「自分なりの意見を述べた部分」とか「自分が情報を整理・まとめた部分」といったところをやってみてはいかがですか。薬のデータなんかは、誰が見ても同じになりますから、あまり有効ではありません。・・・ここらへんは、私も物凄く感覚でやっているので説明難しいですね。

例えばですけど、kurieditsさんの「尿素クリームを愛する人のための、くだらなすぎて誰も書かない意外な事実」という記事は、他の人が書いていないような内容だと思うのですけど"同じ成分なのに年齢制限があるものとないものがある"とか、こういう部分は、オリジナルな考察部分かと思います。実際にこれで完全一致検索しても、3件すべて同じドメイン内でしかヒットしないので、ここは大丈夫だな、という感じです。

 

――よかったー、パクられてなかった!(それはそれでちょっと悲しい気がするけど、まあいいか)

 

記事のアクセスが減った場合には注意したほうが良いかもしれません。もしかするとパクった記事が検索上位に来ている可能性があります。

 

――そ、そうなんですか(記事別アクセスは全然チェックしてないや・・・)。ところで、これはぼくの肌感覚なんですけど、いまネット上の健康情報がいいかげんだって騒がれているわりに、純粋に誤った情報って実はそんなに多くないと思うんです。専門家から「あの記事は間違いだ」って指摘があったとしても、よくよく聞くと解釈・捉え方の問題だったり。むしろ問題はニュアンスと文脈だと思うんです。「ロハス・メディカル」という病院で配布されている無料冊子が、医療不信について特集を組んだことがあったんですけど、その時の巻頭に「メディアの情報を医療従事者が見ると、間違いじゃないんだけど、どこかおかしいと感じる」みたいな文言があって、うまいこと言うなあって思いました。完全な間違いではないけど、専門家が見るとどこか違和感があり腑に落ちない。大小・有名無名を問わずメディア情報の信頼性に疑問が投げかけられている問題の根は、ここにあるんじゃないかと思っています。児島さんはどうお考えですか?

 

解釈・捉え方の問題については、私も同意見です。純粋な間違い・デタラメは、それこそ昨今話題になっているようなサイトくらいしかないと思います。情報を発信する際は、受け手側に情報を吟味する責任を丸投げするのではなく、どういった受け取り方をするのか、どういう行動につながるのか、ということまで考えて発信して欲しいと思います。

それから、「事実」と「意見」を区別して論じることも重要です。 専門知識のない方が書いた文章というのは、往々にして「事実」と「意見」がごちゃ混ぜになっているように感じています。私が腑に落ちないのは、「事実」に基づいていなかったり、「意見」をまるで「事実」のように述べていたり、 専門知識がないために「事実」に対する解釈が間違っていたりするような記事が多いことですね。

 

――「事実」と「意見」をごっちゃにしたり、あるいは「間違ってないけど腑に落ちない」といった記事をウェブ上からなくすために、ブロガーやユーザー(一般消費者)にできることって、なんでしょう?

 

ユーザーについてですが 特に医療情報に関しては ①誰が発信している情報なのか(資格や専門知識の有無など) ②何を根拠に述べているのか(出典や参考文献など) ③何を目的としたサイトなのか(特定の商品を売りたいなど) この3つはきちんと確認した方が良いと思います。 ただ、「医師監修」と書かれているだけのサイト等も問題になっているので、難しいかもしれません。

医療情報については、医師や薬剤師、登録販売者、看護師、栄養士など専門知識のある人が、 もっと自分の名前や経歴も公開した上で、専門的でわかりやすい情報提供を増やしていく、というのが必要かなと思います。

 

――医療というのは個別性の高いサービスですから、最後は主治医や薬剤師・登録販売者に相談するべきです。ネット情報は、そのための架け橋かもしれませんね。今日はありがとうございました。勉強になりました(*'-'*)エヘヘ

 

 

どうでしたか?さあ、みなさんも完全一致検索をしてみてください!パクリ記事を撲滅しましょう!パクリ、ダメ絶対!

<以上のやり取りは、2017年6月8日にツイッターのDMで行ったやりとりを編集したものである>