『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

咳止め成分「ジヒドロコデイン」子供向け薬の不都合な事実

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禁止予定の薬が未だ売られている・・・

欧米で使用禁止、日本国内でも安全性に配慮して1年半以内になくなる。そんな市販薬が平然とドラッグストアで売られていることをご存じだろうか。

ほとんどの人々がこの事実を知らないようだけども、いいんですかね?

 

12歳未満のジヒドロコデインの服用は避ける

2017年6月22日、厚生労働省の検討会は、風邪薬や咳止め薬に含まれる「ジヒドロコデイン(を含むコデイン系)」という成分を、安全性の理由から12歳未満の子供に使用しないことを決めた。7月4日には同省から薬の説明文書(添付文書)を改訂することが発表された。今すぐ使用禁止にはせず、ジヒドロコデインを含む市販薬には、

「12歳未満の小児には、医師の診療を受けさせることを優先すること」

 の一文がつくことになった。

ジヒドロコデインは風邪薬と咳止め薬として使われている成分だ。小児用薬は複数のメーカーから発売されている。

以前から知られていた危険性

ジヒドロコデインが12歳未満に使用できなくなるのは、この成分が呼吸を抑制する副作用をもたらす可能性があるためだ。今年4月、米国で医療用医薬品の12歳未満の使用が発表されたことを受けて、日本国内で動きがでた(※)。

対応が遅すぎる、という声を医療関係者界隈から聞く。この成分が呼吸抑制を起こすことや、そのため小児には使用すべきでないことは10年以上前から指摘されてきた。ヨーロッパ(EU)では2015年にすでに使用が禁止されている(※)。日本では行政からの指示はなかったが、「せき止めのジヒドロコデインを小児に使うのはよくない」という認識は医療関係者の間ではほぼ一致していたように思う。ぼくもドラッグストアの店頭で、積極的にお客に勧めしたことはない。

もちろん、副作用のリスクは極めて少ない。ほとんどの小児が服用しても問題はない。日本国内で死亡事故が起きているわけではない。ここが国内でジヒドロコデインを規制する動きが鈍かった理由の一つと考えられる。

 

消費者にツケを回す1年半の猶予

しかし、ジヒドロコデインが危険か危険でないか、という以上の問題がここにある。

先述の通り、日本では12歳未満に市販薬のジヒドロコデインを使用しないことが6月に決まった。ただし、である。2019年までは今まで通り使うことができる。

1年半はオッケー。いますぐ禁止すればいいじゃないと思うだろう。

医療業界の関係者が出席する厚労省の検討会内で出た意見はこうだ(※)。

医師の職能団体からの意見→「現在処方している医師に対し、呼吸抑制に関する注意を周知徹底するための一定の経過措置期間を設定すべきである」

市販薬業界団体の意見→「12 歳未満の小児用量を有する製剤において、コデイン類を含有しない製剤に切り換える方針であるが、準備に相当の時間を要する」

この主張はどうだろう。

まず、医師の職能団体は「医師に周知徹底させる時間が必要」というけれど、この重要な情報を知らないまま過ごしてしまうような医師や病院がたくさんあるってことでしょうか?業界団体さん。むしろそっちのほうが怖い。

市販薬業界団体の意見は、さらに納得しがたい。コデイン類が不適切であることは以前からいわれてきた。たとえば、ドラッグストアの中には自社のせき止めプライベートブランドにコデインを使っていない会社がある。欧米の動きを見ていれば、いずれは日本でも禁止されることは予測可能だった。事前に策を打たず、ほいほい作ってきたメーカー、売ってきた店の読みの甘さである。

そのツケを自分で回収せず、消費者に回そうとしている。咳止め成分の切り替えが大変?時間がかかる?そんなこと、お客に関係ないでしょ。

 

誰も市販薬なんて気にしてない

2019年に安全性の理由から消去される成分が入った薬が、しれーっとドラッグストアで販売されている。これが日本の市販薬の現状だ。世間で騒がれないのは、ようするに誰も市販薬に関心がないからだ。消費者は舐められているとぼくは思う。

ジヒドロコデインを12歳未満に使用することを厚労省が禁止すると発表から約3週間経った。市中のドラッグストアはどう動いたか。次回に続く。 

 

参考情報

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000168848.pdf