『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

眼病封じの寺「壺阪寺」と祈祷目薬「壺阪沢一晴明水」

めがねに感謝しましょう

旅行したい。旅行先でお薬の勉強をしたい。そんでもって、ツイッターでうんちくを垂れたい。ついでにインスタ映えする写真も撮りたい。

そんなわがままな人に「お薬旅行シリーズ」と名付けてお勧めスポットをお届けする。 今回取り上げるのは、奈良県で”眼病封じの寺”として信仰を集める「壺阪寺」だ。

敷地内には「めがねに感謝しましょう 合掌してめがねの中をくぐって下さい」というオブジェがある愉快なお寺である。

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日本初の盲人向け老人ホームがある

壺阪寺は奈良県高市郡高取町にある”眼病封じの寺”である。けっこうな山の上にあるので、車かバスでなければ辿りつけない。寺のウェブサイトにはこう紹介されている。

真言宗の寺。西国三十三所観音霊場の第六番札所。 本尊十一面千手観世音菩薩は眼病に霊験あらたかな観音様、目の観音様として全国各地から毎日多くの参拝者が訪れる。

入山料は大人600円。入り口左手には、昭和36年に日本で初めて目が不自由な老人のために作られた「養護盲老人ホーム慈母園」がある。盲人向けの老人ホームをぼくは初めて見たが、そうか、たしかにそのような老人ホームがあってしかるべきだ。

見どころ①古より伝わる座頭伝説

壺阪寺の見どころの一つは古くから伝わる「壺阪霊験記」だ。その昔、沢一(さわいち)という名の目の不自由な座頭が、3歳ちがいの妻・お里と貧しくも仲良く暮らしていた。その沢一の胸中には不安があった。お里は毎晩明け方になるととこを抜け出すのだ。ある時「もしや好きな男が・・・」と問いただすと、お里は沢一の目が治るように壺阪寺に朝詣でをしていると答えた。妻を疑ったことを恥じた沢一は、自分が盲人ゆえに妻に苦労をかけていると自分を責め、お里を自由の身にさせるために、本堂横手の谷に身を投げる。それを知ったお里も後を追って谷に投身してしまう。しかし、二人の夫婦愛によって、観音様の霊験による奇跡が起きて、沢一とお里は助かり、しかも沢一の目が開眼した。

・・・という、ロミオとジュリエットもびっくりな沢一のひとり暴走物語なのであるが、これが明治時代に夫婦の愛を描いた浄瑠璃として演じられると民衆の大きな共感を呼び、寺への信仰も広がったそうな。

 

見どころ②風光明媚な山景色

寺は山中にあり、長閑な鳥のさえずりが響く中で折々の季節を伝える山の風景が広がる。風光明媚な景色も見どころだ。

春から初夏にかけて、やまぶき、つつじ、ラベンダーが咲き誇り、秋には境内一円のもみじや周辺の山々が色づき山寺独特の鮮やかな紅葉の風景が広がります。

と寺のサイトに書かれてる。紅葉シーズンに行ったら、すんごいきれいでした。

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見どころ③疲れ目対策の目薬「壺阪沢一晴明水」

そして、壺阪寺を訪れたら絶対見逃せない名物がある。本堂の入り口で販売されている「壺阪沢一晴明水」という目薬だ。きれいな薄水色の容器で、箱には沢一とお里の絵が描かれている。驚くなかれ、お値段1個1500円。高っーー!!!!思わず購入時に販売している男性に「いい値段ですね」と率直に聞いたところ「ご祈祷しているんですよ」との回答。どうやら、ご祈祷済みのありがたい目薬らしい。でも、薬剤師としてはご祈祷云々よりも、その薬効成分が気になるところ。その中身は・・・。

【本品100mL中の成分】製造販売元:佐賀製薬

ネオスチグミンメチル硫酸塩 5㎎(0.05%)

グリチルリチン酸二カリウム 250㎎(0.25%)

ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6) 50㎎(0.05%)

トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE) 25mg(0.025%)

L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物) 1000㎎(1%)

タウリン 500㎎(0.5%)

コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 250㎎(0.25%)

※添加物としてベンザルコニウム塩化物液を含む

成分から判断すると、ものもらいなどの炎症症状ではなく、疲れ目対策の目薬といえる。

優しい使用感。ここだけでしか購入できない・・かも

もし、この目薬がご祈祷されてないとしたら、いかほどの価格だろうか?

類似の成分の目薬を探したが、特定の商品を見つけることはできなかった。目薬の中でコスパ最高と名高い「ロートビタ40α」(300円程度)と比較すると、含有成分に若干の差がある中で、壺阪目薬にはタウリンが入っていることが大きなちがいといえる。あるいは「養潤水」(600円程度)と比較すると、成分はどっこいどっこい。総合すると、壺阪目薬の目薬としての価格は600円くらいではないだろうか。そこにご祈祷代が1000円ほどオンされているという印象だ。これ以上はやめておきましょう。信仰は値段ではかるものではありませんから。

ネットを含め一般流通していないので、壺阪寺だけの限定品なのだろう。お土産としてはアリかもしれない。使用感は、刺激の少ない、優しい差し心地だった。

以上、見どころを紹介した。奈良を旅行する時は「壺阪寺」をご検討ください。近くにはキトラ古墳とか色々あります。のどかないいとこよ。飲食店が閉まるのが早いので、夕方以降はご飯の確保だけはしといてください。行き当たりばったりで訪れると、ぼくのように夕飯難民になります。

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参考までに、この目薬を購入した方のブログを紹介しておく。

blog.goo.ne.jp