このブログは一般の方々に向けた情報を提供するメディアですが、私自身の勉強も兼ねているので今日はやや専門的な話を備忘録として書きたいと思います。ご興味のあるかたはお付き合いください。そうでないかたはご容赦ください。
目薬に含まれる血管収縮剤で、充血がひどくなるかどうかという問題があります。グーグル検索すると、血管収縮剤により”リバウンド”が起きるという説は、眼科医がウェブ上で主張をされています。ただ、根拠が書かれていないので、鵜呑みにするわけにもいかず、正直どのように扱ってよいものか困っています。
ちょっと調べてみたところ、「血管収縮薬:神話と現実」と言うタイトルで割と詳しく分析している記事がありました。こちらです。
Vasoconstrictors: Myths and Realities
内容をまとめると、以下の通りになります。
・血管収縮剤は長年、充血除去薬として使われてきた。
・1940年代に鼻の充血除去薬として導入されたことに続き、眼科領域でも使われた
・より高い効果を求めるために、アレルギー性結膜炎のかゆみや充血に抗ヒスタミン成分と共に使われた
・作用時間について研究されない一方で、FDAは安全性等に配慮し、市販薬は1日4回と記載を定め、それは今日(2012年)まで続いている
・早くとも1946年には、点鼻の血管収縮によるリバウンドが複数報告されている
・しかし、目に関しては不明確であり、1984年に筆者らが行った研究でもタキフィラキシーは確認できたがリバウンドは見られなかった(ただしこれは症例が少ないので参考にはならなさそう)
・点鼻の血管収縮によるリバウンドは存在する。ゆえに点眼についてもありえると推測はされる。点眼によるリバウンドがみられる論文もある。
Corboz MR, Mutter JC, Rivelli MA, et al. a2-adrenoreceptor agonists as nasal decongestants. Pulm Pharmacol Ther 2007;20:149-156.
Soparkar CN, Wilhelmus KR, Koch DD, Wallace GW, Jones DB. Acute and chronic conjunctivitis due to over-the-counter ophthalmic decongestants. Arch ophthalmol 1997;115:1:34-38.
(前者はフルテキストがよめないが、本文では『リバウンドと言うよりむしろタキフィラキシー』と言及している)
・リバウンドとタキフィラキシーは区別が難しい。市販薬のラベルにはリバウンドへの注意喚起がなされているが、リバウンドと毒性の区別は確率されていない。複合的に発生していると考えられる
ということのようです。日本でも血管収縮剤の添付文書・インタビューフォームには、効果の減弱と二次充血の恐れが記載されているものの、その論拠については不明です。点鼻スプレーの血管収縮薬のによるリバウンドの報告は多数あるのに対して、目薬に関しては著しく少ない印象です。市販薬の現場でどのようにお客に情報提供していくかについては悩ましいといえそうです。眼科医師の意見も聞きたいところです。