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医療系タイムラインはなぜ「ズレ」るのか

ツイッターの主な利用者は20代以下

『アフターソーシャルメディア』という本に衝撃的な事実が載っていた。国内のメディア調査によると、ツイッターの利用者は20代が中心らしい。10代もたくさんいるという。男女は半々だという。おやおや、一体どこの世界線ですか?

簡単に信じるわけにはいかない。薬剤師であるわたしのアカウント(@kuriedits)はフォロー数592、フォロワー数3141で、目にするツイートの多くは30代40代のアカウントだ。男性が多い。20代以下の女性なんて一体どこにいるというのか。

20代女性の7割がツイッターを使用

しかし、ツイッターユーザーの中心が20代というのは本当らしい。否定し難いデータが『アフターソーシャルメディア』で紹介されてる。ツイッター、インスタ、フェイスブックのうち、10代(16〜19才)にもっとも利用されているのはダントツでツイッターである。20代でもツイッターである。20代女性の7割が、男性では約5割がツイッターを使っている。ツイッターユーザー全体を見ると、20代のユーザーが最も多く、20代以下で5割を占める。

そうか、そうだったのか。本音をいえば薄々感じていた。わたしが見ている医療系タイムラインは、20代以下がボリュームゾーンのツイッターワールドから見ればマイノリティである。タイムラインを川の流れに例えるなら、わたしが見ているのは老若男女が集まる隅田川ではなく、その横を流れる小さな生活用水路のほうなのだ。

フィルターバブルで均質化

わたしのタイムラインはツイッターワールドでは傍流だし、リアルワールドを含めたらさらに傍流かもしれない。ツイッターがフィルターバブル効果によって同質化することは数々の研究で証明されている。特にイデオロギーは分断されることはよく知られている。ハーバード大学ロースクール教授で、オバマ大統領政権下で予算局の情報政策担当官を務めたキャス・サンスティーンの『#リパブリック』から引くと、保守派の有権者が目にする選挙候補者は90%が共和党候補の議員だし、リベラルな有権者が見るのは90%が民主党候補者だ。賛否両論ある政治テーマについてはツイッター利用者がフォローする利用者群は大抵政治的に均質であり、イデオロギーをまたいだコンテンツにさらされる可能性は低いそうだ。

環境からくる「ズレ」を認める

『アフターソーシャルメディア』は数々の興味深いデータを引用しながら、SNSユーザーの多様性を示している。世代間の感覚や常識の「ズレ」は、接しているメディアの環境が異なるからだ。わたしもツイッターのユーザーのほとんどが20代以下だなんて想像もしなかった。その意味で本書はとても刺激的だった、わたしが考えさせられたのは、本書が「ズレ」の原因となる情報の偏りを否定しないことだった。「『ズレ』がそれぞれの個人の環境における、それぞれの自由な選択によるものだとすれば、リベラルな社会でそれをストップすることは難しい」(本書「おわりに」)という。

ツイッターはワーキンググループ

ツイッターでは情報が偏る構造は避けられない。だったら、むしろそれを肯定的に受け止めたらどうだろうと考えた。例えば、ツイッターのタイムラインは「ワーキンググループ」だと捉えてみる。均質化された集団の中であーでもないこーでもないと言う。それを、より大きく多様性に富んだ集団であるマスメディアが評価し、取り上げる。さらにそれを現実社会の人々や国が評価するという流れだ。

医療分野ではすでにこれが機能している。ここ数年、ツイッター上で活躍されている医師の方々がマスメディアで活躍し始めた。「ほむほむ先生(@ped_allergy )」「大塚篤司先生(@otsukaman )」「けいゆう先生(@keiyou30)」。医療専門家の方々が、感服するほどのバランス感覚で一般向けに医療情報を発信されている。最初はブログやツイッターで発信していたのが、やがて大手メディアの目にとまり、雑誌や書籍でも見るようになった。ツイッターという小さなワーキンググループの活動が採用されて、マスメディアという一段階大きなグループ会議の俎上に載ったと捉えることもできる。

ワーキンググループで大事なのは、自分たちの価値観や意見を「当たり前」「理解されて当然」と思わないことだ。わたしのツイッターのタイムラインは、想像を絶するほどツイッターワールドの一部だし、リアルワールドとは世界線が違う。

 

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