コーセー化粧品が9月に発売した人気の新商品「カルテヒルドイド」の名前(愛称)が「カルテHD」に変わることになりました。同社の11月6日のニュースリリースによると、次の理由とのことです。
この度、東京都より、変更前の本シリーズの愛称は、一般消費者がマルホ株式会社が製造販売する医療用医薬品の効能・効果を有する製品と誤認する可能性があるとの指摘を受けました。 当社としては、この指摘を厳粛に受け止め、一般消費者が当該の医療用医薬品との違いをしっかりと認識できるよう、万全を期し、容器および箱等の外装に記載のシリーズ愛称を『カルテHD』に変更いたします。
化粧品は色々な消費者がセルフで購入するものですから理屈としてはわかります。おそらくどこからか外部の指摘が行政に入ったのだろうと、私は勝手に想像しますが、合理性を突き詰めていくと、案外厄介な問題だなあと感じなくもありません。
例えば、ヒルドイドに似た名前の市販薬に「ヒルマイルド」というものがありますが、まあこれは同じ成分ですし、あくまで似た名前、というだけで、今のところ許されています。それに対してカルテヒルドイドは、本家のヒルドイドの名をそのまま使ってますし、成分濃度も異なるわけで、片や医薬品、片や医薬部外品ですから区別はしたほうがいいとは思います。
ただ、その理屈でいうと、例えば「パンシロン健胃錠」という商品があるのですけど、これは一見胃薬(医薬品)のように見えて、実は医薬部外品(医薬品ではない)なんですね。でも一般の方は医薬品のパンシロンとは区別付かないのではという気がします。
もう一例別の角度から紹介します。資生堂には「イハダ」というスキンケアブランドがありまして、こちらは化粧水や乳液、日焼け止めなどのコスメ系商品の他に、ニキビケアなどの医薬品のラインナップもあります。そのため、医薬品、医薬部外品、日用品が1つのブランドとして並ぶわけですが、こうなると消費者としてはどれが医薬品でどれが医薬品でないかは非常にわかりづらいということになります。
今の市販薬では、商品の名前から医薬品とそうでないものの区別がつきにくいことが許容とされているわけなので(店頭の規則としては、医薬品であることがはっきりわかるようにするように指導はされますけど)、こうした現状と今回のカルテヒルドイドの名称変更問題を照らし合わせて見ると、結局、医療用であるかどうかという区分の混乱が問題なのではなく、それによって起き得る消費者の何かしらの不利益が問題であるということが言えると思います。
ではそれがどんな不利益かというと、残念ながらそれは開示されていません。「名前変更しなくていいじゃん」という声が一定数聞こえるのも、そうしたモヤモヤ感からきているのではないでしょうか。どのような懸念があるのかという具体的な内容を知りたいところです。
【補足:医薬品でなければ”愛称”を使うことができることが医薬品広告基準(医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等)に記載されている。カルテヒルドイドの製品名はHDクリーム】
さて、6日にはもう一つ気になる話題がありました。ドラッグストアのココカラファインとサンドラッグが、ネットショッピングで「にしたんクリニック」PCR 検査サービスキットを当日付で扱いを始めたというものです。にしたんクリニックのPCR検査サービスは、JRの中吊りやテレビCMでも見る商品です。一方で、生活者が自己判断でPCRを受けることには、賛否両論あり、医療従事者サイドからはどちらかというと悲観的な意見が(少なくともネット上では)優勢なので、そうした状況でドラッグストアがこの商品を扱うというのは、業界的にはインパクトがあると言えます。自社サイトの独自性を出すという意味ではアリだとは思いますが、やや挑戦的な分野に足を踏み込んだなという印象です。
https://www.cocokarafine.co.jp/images/pdf/20201106/20201106_PR01.pdf
https://www.sundrug.co.jp/news/PCR検査キット販売2.pdf