『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

「見て見ぬふりをしない」市販薬乱用ケースとの向き合い方、その介入方法

先日、市販薬の長期乱用の方と話して、自分ではわりかしうまくいったなと感じました。うまくいった事例として手元のノートに記録しました。

さて、今日は本の紹介です。「クスリ早見帖」でおなじみの内科医、平さんに教えていただいた『いまどきの依存とアディクション』です。副題に「プライマリ・ケア/救急における関わりかた入門」とあるように、この”関わりかた”というのが本書のキモです。依存の一例として、ドラッグストアで市販薬の乱用者に出会ったらどのように介入するかということが書かれています。 

 繰り返しますが、本書の特徴は「介入」です。「売らない」方法ではありません。もちろん、販売をお断りするのは大前提なのですが、本書ではそれでは他店に行くだけであると指摘しているように、その場限りの回避法です。本書が優れているのは、どうやって治療に結びつけるかという方法が書かれている点です。

市販薬だけではなく、アルコール依存、薬物依存など、様々な事例が取り上げられており、ケーススタディ形式で学ぶことができます。教科書的ではなく、どこまでも実践的です。こういう本、意外と少ないんですよ。貴重です。さすが、松本俊彦医師が編集しているだけあります。

精神科医や薬剤師が複眼的に執筆している本書の内容は、今まで私が我流で身につけてきたコツと合致する部分が多く、自分のやり方は間違ってはいなかったのだなと勇気付けられました。

ぜひ多くの方に読んでいただきたい本です。

ただ、これは私が個人的に感じていることなのですが、こうした本というのは、読んで答えを見つけた気になってはいけないと思います。それをそのまま実践しても、多分、あまりうまくいきません。まず、自分で患者(お客さん)にぶつかっていって、そこで知恵を絞り、その結果自分なりの方法をまず身につけることが大事だと思います。その上で、答え合わせと、補足的な情報を得ることを目的として読むことをオススメしたい。

実地の努力をせず、成功パターンもわからないうちに本書を読んでも、頭でっかちの、「わかったつもり」になるだけだと思います。まあ、そこから失敗してまた学ぶのも手ですけど。

本書はあまりによくできているので、読んで「勉強した気になる」可能性が高いと思いますが、それはむしろスキルアップの邪魔になる可能性を指摘しておきたいと思います。