ドラッグストアとジャーナリズム

自分に合った市販薬を選びませんか?

「規制のサンドボックス制度」から生まれた「市販薬自動販売機」の是非【2021/4/19~4/23のニュース】

市販薬が自動販売機で売られる!? 思いがけないニュースが医薬業界の東スポことRISFAX(玉田論説委員自身がそう言っているのだからいいですよね?)から飛び込んできました。自動販売機って買えちゃうって、どんだけ自由なんですか。戸惑いを隠せないままとりあえず政府の資料をよくよく読むと・・・んん??どうやら私たちがイメージする缶ジュースなどの自動販売機とはちょっと異なるようです。

このニュースは、大正製薬が国の「規制のサンドボックス制度」を活用して申請した『OTC販売機を用いた一般用医薬品販売』が、23日に認定されたというものです。「規制のサンドボックス制度」は、先進技術やビジネスモデルの社会実装に向けて規制官庁の認定の下で実証する、国の新しい制度です。要するに、前例がなくて行政側の担当者レベルでは判断がつかないケースなどに対して「まずはやってみましょう」とお墨付きを与えて、その結果を見てから規制改革につなげるというスキームです。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/underlyinglaw/sandboximage.pdf

 

今回の市販薬販売機は、現行法の範囲でやっているので、特段の規制緩和はありません。市販薬のインターネット販売の変法のような形を取っています。その概要をまとめると次の通りです。

●市販薬を販売している店が目に入る範囲に自販機を置く

●購入者は自販機の質問(販売側が設定する。アレルギー歴などを聞く)に答える

●販売機を通じて、資格者が販売に問題がないことを確認できたら販売可の通知をする

自販機の質問を設定して、購入者からの回答内容を資格者が判断するという方法は、むしろ今の店頭販売よりも厳格・厳密な安全チェックが働いているといえます。なにせドラッグストアなどの店頭では、お客さんはセルフで手に取り、レジでは学生さんなど無資格者が販売しているわけですから。

 

その上でフシギな点が3つあります。

1つめのフシギは、この実証実験の目的です。海外ではすでに市販薬の自動販売機があるそうです。それを日本でもできるようにして「一般用医薬品へのアクセス性を改善し、セルフメディケーション意識を向上させ、医療費削減の一助となることを目指す」。制度資料には、そのような実証目的が書かれています。

しかし、この実験はそんなに牧歌的な話なのでしょうか。まず、「市販薬へのアクセス性を改善する」ことが、「セルフメディケーション意識を向上させる」と書かれているのですが、これはわかるようで、よくよく考えるとイマイチわからない話です。たとえば、山林に住んでいる人が山小屋に市販薬自販機があったら、山を下ってわざわざ病院に行かずに市販薬で治そうとしますよね、という話なのでしょうか。セルフメディケーションを「受診せずに自分で治す」という狭義の意味で捉えるならそうでしょう。でもそれはただの受診抑制です。あるいは、山林や郊外ではなく、都市部で自販機が役に立つと想定しているのでしょうか。あいにく、都市部ではこのような自販機はほとんど活躍しないでしょう。仮に設置した場合は、今街中にあるドリンクの自販機よりはずっと数が少ないはずです。そしてすでにドラッグストアはたくさんあるので、自販機設置によるアクセス向上の効果はかなり低いと考えられます。こうしたことを考えると、どうして自販機が必要なのかがイマイチわからないのです。いや、むしろ、本当の目的は自販機ではないかもしれない・・・と、うがった見方を思わずしてしまいたくなります。

そこで2つめの フシギが、実証した後の展開です。この実証実験はなんら問題がなく済むでしょう。そして、販売機OK!となるはずです。問題はここからです。

今回の実験では自販機のそばの店舗の責任者が管理するわけですが、それってほとんど意味のないことです。なぜなら、そもそも自販機は外部の者が容易にはいたずらできない状態にありますから、薬の品質管理はある程度保たれているという主張ができそうです。実際は自販機を破壊して盗難する可能性もあるのですが、この一定の説得力を持つ理屈が通ると、購入者の回答事項を確認する資格者は、自販機から遠く離れたどこかのセンターで行っても良いことになります。となると、販売側としては全国各地でサクサク販売することができるようになります。さらにいえば、現状ではほとんどの市販薬が、資格者の関与なしで販売されているのですから、「自販機だって注文ごとに資格者が確認する必要はないのでは?質問したい人だけがその場で資格者に連絡すればいいじゃない?」と言う話になると思います。ここに至って、この市販薬販売機は、資格者が関与しないようになり、本当の意味で「”自動”販売機」となるのでしょう。

もちろん、これらすべてが短兵急に進むとは思いませんが、じわじわと時間をかけて、そういうムードが醸成されていくような気がします。私の考えすぎだったらいいな。

3つめのフシギは、今回のサンドボックス規制の申請者が大正製薬であることです。この制度は他の業界でも申請されており、例えば野菜の広告表示については、販売主体である一般財団法人日本ヘルスケア協会(理事長はマツキヨ会長)が音頭をとって申請をしています。ですから、市販薬の自販機についても小売側であるドラッグストアやその業界団体が申請するのが自然だと思われるのですが、なぜか申請者はメーカーでした。ひょっとすると、大正製薬が将来的に自販機を設置して自社で直接消費者に販売することを考えておられるのでしょうか。だとしたら、それはとても面白いことだと思います。D2Cへの取り組みとしては応援したいと思っています。

 

取り急ぎ、一報を読んで感じたことを書いてみました。私としては、市販薬は自販機になってもいいのですが、そのロジックは今後のセルフメディケーションのあり方を大きく左右すると思うで、しっかり詰めていってほしいなと感じるところであります。現場を知らない方にとっては、市販薬自販機の何か問題なのかがイメージしにくい部分もあるでしょう。店頭ではなんだかんだで、市販薬の購入者には資格者が介入する機会を持っています。極端なことを言えば、完全な自動販売機になったら、大正製薬のナロン錠を夜な夜な自販機でコッソリ何度も購入する人が出てくるはずです。そのような消費者に対して、誰が、どう介入するのでしょうか?自己責任論に回収しますか?

みなさんはどう思われましたか?

今週のニュースは以上です。