『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

緊急避妊薬が市販化に向けていよいよ動き出す?【2021/5/24~5/28のニュース】

望まない妊娠を防ぐための緊急避妊薬のニュースが、週の後半にかけていくつか入って来ました。

「意図しない妊娠を防ぐための「緊急避妊薬」について、厚生労働省は6月に検討会を開いて、薬局での販売を解禁するか議論を本格化させる方針を決めました。」

とNHKが28日に報道。そして同日、筑波大学の産婦人科医、遠見医師が、厚労省に市販化の要望書を提出し、省内で記者会見を行いました。

https://kinkyuhinin.jp/wp-content/uploads/2021/05/【緊急避妊薬を薬局でP】プレスリリース_20210521_OTC要望書提出.pdf

何年も前からくすぶっていた緊急避妊薬の市販化の議論が、ここにきて大きく前進した印象です。遠見医師はツイッターで、

4年前は「女性のリテラシー不足」など科学的根拠の確認できない理由で時期尚早と否決されましたが今年度こそ権利と健康を尊重した議論がされるよう皆さん注目を!

としています。

今後の議論の大きなポイントとしては、2つの販売選択肢があると思います。

1つは、薬局でのみ買える薬にすること。もう1つは、市販薬にすること。この2つはどちらも医師の処方箋がなくても街の薬局で買えるという点は同じですが、長い目で見ると大きな違いがでてきます。

前者の方法では、必ず薬剤師が対面で販売することになります。薬剤師によるカウンセリングとセットで販売される薬は、海外ではBTCと呼ばれています。

後者は、ドラッグストアや薬局で販売されている薬です。こちらはOTCと呼ばれています。OTC医薬品は、まず、医療用から市販薬になった直後は「要指導医薬品」という扱いになり、必ず薬剤師が販売、かつ1人1点まで、代理購入不可、ネット販売不可、などの制約がつきます。しかし、一定年数たつと、「第一類医薬品」という扱いに移行し、上記の制約の一部がなくなり、さらに時間が経過すると、薬剤師ではなくても販売できるようになります。

つまり、OTCにした場合は、いずれはかなり緩い規制の中で緊急避妊薬が売られるようになるかもしれない、ということです。

もちろんなかには例外もあり、例えばロキソニンは、市販薬として発売してからずいぶん長い年月を経ていますので、本来であればもう薬剤師不在でも購入できる段階ではあるのですが、特別な判断によって、「第一類医薬品」に据え置かれたままになっています。

市販薬という枠の中で販売規制を強めるために、その薬の扱いについて特別な研修を受けた者だけが販売できるようにする、という方法もあります。

現行では、エパデールTが、メーカー研修必須となっています。しかし、このメーカー研修は、私も昔、参加したことはありますが、通り一遍であるというのが正直な感想であり、研修を必須にすることで何か質的な向上が生まれるとは考えにくいように思います。

一般的に、「規制の強化」と「アクセスの良さ」はトレードオフと考えられていますが、これをトレードオフにしない知恵が求められているように思います。私もこの分野はまだまだ勉強も理解も足りません。

 

長くなりましたが、もう1つのニュース。

ロート製薬が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原迅速検査キット「チェックMR-COV19」の製造販売承認を2021年5月27日に取得しました。6月16日に発売するそうです。鼻咽頭ぬぐい液と、鼻腔ぬぐい液中の新型コロナウイルスの核タンパク質を検出する迅速検査キットです。特別な測定機器が不要で15分(陽性の場合は3-15分)で新型コロナウイルスの抗原の有無を判定することができるそうです。

ただ、容量からすると、ドラッグストアなどで流通するものではないかもしれません。

消費者庁は3月、ドラッグストアなどで販売している”研究用”の検査キットは、国が認めた体外診断用医薬品ではないと注意喚起を行ないました。今回ロート製薬が発売するものは、体外診断用医薬品の認可を受けたものとなります。抗原検査は、仮に感染しててもウイルス量が少ないと陰性になりますので、陰性だから安心、とはなりません。もし、消費者がセルフで使用する場合には、扱いに注意が必要です。