『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

目薬に「クールMAX」登場。複雑怪奇な市販薬ネーミングの行方【2021/7/12~7/16のニュース】

「スマイル40EX ゴールド」シリーズから、超クールタイプの目薬『スマイル40EX ゴールドクールMAX』が7月14日に新発売しました。その名前のとおり、クールな刺激感が特徴です。

せっかくなので、他のスマイル40EXとの比較を、簡単に説明します。

スマイル40と名のつく目薬はたくさんありまして、そのなかには、「スマイル40EX」シリーズと「スマイル40EXゴールド」シリーズがあります。ゴールドシリーズのほうが、少しだけ有効成分が充実しています。

スマイル40EXは、スーッとする刺激感が次の順に高い商品があります。

「マイルド<EX(特に名前なし)<クール(パッケージにはスーパークール)」

ゴールドシリーズは、今回、MAXが発売されたことで次の順になります。

「マイルド<クール<クールMAX」

クール度はそれぞれ対応しているので、「クールMAX」と「クール(スーパークール)」は、実は同じ刺激感になっています。話、ついていけているでしょうか・・・。ややこしいですね。

要するに、スマイル40EXゴールドシリーズを使っている場合に、いまよりもクール感を求めたいのであれば、クールMAXを使ってみるのもいいかもしれないということです。

 

ところで、今回のように、製品名にMAXと名のつく薬は珍しいと思います。

市販薬には、その薬がいかに優れいてるかを示すために様々な修飾語がつけられます。こうしたネーミングは、おそらく適正広告基準の規制があるためだとは思いますが、なんでも使って良いというわけではないため、メーカー各社をまたいで似たような言葉が並ぶことになります。お店に並んでいる市販薬で見かけるのは、「プレミアム」「エース」「Pro」「ゴールド」「プラス」「クイック」「DX(デラックス)」と言った言葉です。

市販薬のネーミングは、実はとても根深く重い問題です。というのも、一部の薬は、利用者にとって不利益なミスリードを起こす可能性があるからです。

その典型例はロキソニン”プレミアム”でしょう。病院で処方されるロキソニンに、鎮静成分のアリルイソプロピルアセチル尿素などが配合されたロキソニンプレミアムは、市販のロキソニンシリーズの中で、その名の通り、「最上位版」と位置付けられています。実際、これが一番効くロキソニンであると考えた購入する人は少なくありません。

その期待は、頭痛への鎮痛効果という意味では、好意的に見るならば、間違っているわけではないでしょう。エビデンスは見たことはありませんが、アリルイソプロピルアセチル尿素は鎮静作用がありますので、多少の頭痛の軽減につながるかもしれません。しかし、この成分には欠点もあります。まず、習慣性を始め安全性に疑問符がついていることから海外ではほとんど使われないとされている成分であること、そして、鎮静成分ゆえに眠気や集中力の低下も懸念されることです。そのため、ロキソニンシリーズの中で、このプレミアムだけが、服用後は車の運転などをしてはいけないという注意事項が説明書に書かれているのです。

つまり、症状によっては効果が多少高くなるかもしれないけど、安全性も落ちるのがロキソニンプレミアムの特徴です。このようなトレードオフのものを、「プレミアム」と言ってよいものでしょうか?

プレミアムと名前がつく全ての薬に問題があるわけではありません。例えば、2020年に発売した「新セルベール®整胃プレミアム」は、従来のセルベールの有効成分「テプレノン」が医療用の75%だったのに対して、プレミアムは医療用と同量になりました。これはプレミアムと表現しても、それほど違和感はないかもしれません。

商品の魅力を伝えるのが製品の名前です。しかし、薬という特性を無視して名付けてしまうと、消費者に誤解を与えることになります。これも、今の市販薬の、利用者にとっては知られざる問題点の1つといえるのではないでしょうか。