『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

「第一三共胃腸薬」が驚きのリニューアル。キーワードは「安全性」?【2021/8/16~8/20のニュース】

今週のニュースです。

胃腸薬のトップブランド「第一三共胃腸薬」が8/30にリニューアル発売します。胃酸を抑えるロートエキスという成分がなくなります。ロートエキスは眼圧をあげる可能性があるので、一部の緑内障患者には注意が必要な成分なのですが、これがなくなったことで第一三共胃腸薬を安心して使えるようになりました。また、瓶の口が広くなるなど、成分以外の工夫で使いやすく改良されるそうです。

驚くべきことに、今回のリニューアルで新たに追加される成分は一つもなく、いまある成分の増量もなく、ようするに、リニューアルによって単純に成分が減ることになります。リニューアルで成分が変わる薬というのは、ふつう、一部の成分が他の成分に変更されたり、既存の成分が増量されることがほとんどなので、成分が減るだけというのは非常に珍しいことです。

 実は、今月に入って、こうした安全性に配慮する商品の発売・発表が増えています。

ライオンが今月発表した、9月発売予定のバファリンプレミアムDXは、バファリンプレミアムに配合されているアリルイソプロピルアセチル尿素がなくなりました。この成分は鎮静作用があり、眠気を引き起こすことが知られています。この鎮静成分がなくなる代わりに、もともと配合されている鎮痛成分を増量されることになりました。

今月上旬に第一三共ヘルスケアが発売した「新ルルAゴールドDXα」は、従来の製品に含まれていた咳止め成分をジヒドロコデインから、比較的安全性の高いデキストロメトルファンに変更したことで、使用可能年齢が12歳以上から7歳以上に引き下げられました。

ほぼ同じ時期に発売したシオノギヘルスケアの「メジコンせき止め錠 Pro」も、ジヒドロコデインではなくデキストロメトルファンを使用していることで、”主に若者間で市販薬の濫用が増加している背景もあることから、適正使用に向け非麻薬性成分への置 き換えを推進すべく、”と説明するニュースリリースを今週出しました。

https://www.shionogi-hc.co.jp/content/dam/shc/jp/news/2021/08/20210820.pdf

これらの一連の動きはたまたまなのか、業界全体の大きな流れの始まりなのかは、まだわかりません。ほとんどの生活者のかたは、こうした市販薬の”見方”があることを、ご存知ないと思います。

 

そもそも、テレビCMの量と、薬剤師が選ぶ薬が、一致しないことはご存知でしょうか?ここからは余談になりますが、今週発売の『週刊女性』で、市販薬の選び方について解説させていただきました。アンケート調査から見た薬剤師が選ぶ市販薬の傾向と、その選び方の基準のお話です。アンケートの結果では、処方薬として実績がある薬や、安全性に配慮した薬が選ばれていました。薬剤師が選ぶ=優れてる、なんて、言い切れませんけど、でもこういう選び方もあるんです、というところから、私は市販薬の話をしていきたいと思ってます。よろしければお手にとってみてください。