『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

NHKクロ現代「市販薬特集」余話【2022/1/30~2/4のニュース】

1月27日に、NHKのクローズアップ現代で「あなたは大丈夫? コロナ禍で広がる市販薬の過剰摂取」という特集が放送されました。わたしもかかわりましたので、余話をここに書きます。

あなたは大丈夫? コロナ禍で広がる市販薬の過剰摂取 - NHK クローズアップ現代+

「NHKのクローズアップ現代のディレクターがヒアリングをしたいとおっしゃってますが、どうしますか?」という旨の連絡を、新潮社の担当者さんからいただいたのは、12月2日のことでした。ちょうど、その前日、のちに番組出演することになった薬剤師仲間の鈴木さんから、「NHKからヒアリングの話が来たのですが、kuriさんが紹介してくださったのですか?」というメッセージをいただいていて、「いやいや、私は何もしてません」と返信していたのですが、あとで聞いたところでは、ディレクターのかたが私の本を読んで、そこで紹介されいている鈴木さんにコンタクトを取ったということでした。

ヒアリングの依頼から1週間後、ディレクターのかたとNHKで会うことになりました。新潮社の担当者さんと渋谷駅で待ち合わせし、冬晴れの井の頭通りを二人で歩きながら、「鈴木さんは取材対象として適任だと思います。テレビには絵(映像)が必要ですから、私とちがって、顔を出せますし」なんて話しつつ、放送局に行ったのでした。ディレクターのかたに案内された部屋には、すでに付箋がたくさん貼り付けられた私の本が置いてありました。そこで、先方からの質問に答える形で市販薬にまつわるあれこれを私は話しました。本に書けなかったことも、たくさん話しました。2時間ほど経ったところで次の打ち合わせで部屋を空けなくてはいけないということになり、「また色々聞かせてください」という先方の言葉でこの日は終わりました。

それから、番組が放送されるまで、ディレクターさんとは30回以上のメールのやり取りをしました。

市販薬には様々な社会的論点が存在します。ディレクターさんは、どのような切り口がいいのか、番組の構成に非常にご苦労されているようでした。ほんとうは、私たち薬剤師がまず、社会の窓口であるメディアに対してクリアカットな説明をできればいいのでしょうけれど、それができていない。メールのやり取りをしながら、そんなふうに感じました。

1月27日、番組放送終了後、薬剤師の登場が番組後半の10分程度だったことに失望する声をネットで見かけました。たしかにわたしも、薬剤師がもっと前面に出てきてもいいんじゃないか、市販薬を売っているのはドラッグストアなんだから、もっとドラッグストアが出て来るべきじゃないか。そう思いました。でも、ドラッグストアは、番組で力強く主張できるほど、時代にあった市販薬販売に取り組んでいるのでしょうか。自戒を込めで言うならば、市販薬販売を生業としている小売業は、大量販売大量消費の旧態依然としたスタイルから抜け出せていないように思います。

今回、ディレクターさんは、数多くの、そして実に様々な立場の薬剤師にヒアリングをしています。それはわたしが驚くほどの数でした。

たぶん、市販薬について薬剤師に質問してよいのだということが、まだまだ世間には広まっていないのでしょう。健康にまつわる商品は、信頼できる専門家に聞いて購入する。そんなスタイルが当たり前になる時代を手繰り寄せたい。そのほうが、不幸になる人が少なくなると思うから。

番組関係者の皆様、おつかれさまでした。わたしが勝手にヒアリング先に推薦し、ご協力くださった薬剤師の皆様、ありがとうございました。

 

・・・さて、気を取り直して、今週の市販薬ニュース。

小林製薬が今年4月から中国でOTC医薬品『安美露アンメイルー』(日本ブランド名:アンメルツ)の本格販売を開始すると発表しました。日本ブランドに似た類似品のある中国で、日本のメーカーがどう打って出るのか。今後に注目です。

中国でOTC医薬品『安美露』(日本ブランド名:アンメルツ)の本格販売を開始 | ニュースリリース | 小林製薬株式会社