『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

病院で処方される湿布が制限されると、市販薬はどうなるのか【2022/2/7~2/11のニュース】

今週は大きなニュースがありました。病院で処方される湿布薬の枚数の制限が変更されるというものです。現在の1処方せんあたりの上限70枚から63枚になります。35枚程度にすべきだという事前の意見も上がっていたので、正直、こんな中途半端な数量になるとは、多くの医療関係者は想像していなかったのではないでしょうか。

いずれにしろ、湿布薬が処方されにくくなるという近年の傾向は今後も続き、さらに制限枚数は絞られていくとみられます。

すると、どうなるのでしょうか。市販薬の現場にも影響がでてきそうです。

現在、マツキヨのPB品は以下の価格です。

■インドメタシン 32枚で1280円(=64枚で2560円)

■サリチル酸グリコール 48枚で798円

そもそも、鎮痛薬には飲み薬と貼り薬がありますが、高齢者には貼り薬が処方されます。これは、飲み薬のは、貼り薬よりも胃腸障害が出やすいというエビデンスがあるからです。

その意味では、比較的安全と言える貼り薬ではありますが、いっぱい貼れば、それだけ身体への負担は大きくなり、副作用も出やすくなります。それでも、体のあちこちの痛みが辛くて何枚も貼ってしまう高齢者もいるでしょう。普段湿布を使わない人からすると、1箱30枚、40枚は十分量に感じられるでしょうが、高齢者にとっては1日で複数箇所、それを1日2回張り替えれば、1〜2週間でなくなります。

高齢者の慢性的な痛みをOTCで対処する場合、製品が安価であることが社会的な必要条件になると思います。低コストのために外箱の省略化、大容量化、製造ラインの見直しなどによって、どこまで下げられるのか、個人的に気になるところです。「病院でも昔ほど湿布をくれなくなってね」と言って高齢者の家族が市販の大容量の湿布薬を購入しようとする姿を見ていると(患者背景が不明で、使いすぎの可能性があり、注意喚起はするものの)、今後の処方制限によってドラッグストアでの対応も変わってくるんだろうと感じます。

添付文書に1日の貼付枚数制限のない貼り薬は、何枚まで貼っていいのか、という問題も出てくるでしょう。米国の通販サイトでは、日本のサロンパスを足中に貼って「よく効いた!」などというコメントを見ることがあります。日本ではどうでしょうか。市販薬といえども、つかいすぎているケースもあると思います。ただ、痛みを訴える高齢者に対して、「貼り薬の使いすぎは注意ですよ」と言ってもなんの解決にもなりません。薬に頼らない痛みの軽減方法の提案など、より広範囲の助言が必要になってくるかもしれませんね。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsjd/35/1/35_1/_pdf